この話はお読み頂いてもMOEていただけない自信があります
耳鳴り |
「そもそも貴方のその行動がが問題なのではないですか?」 モニター越しにツォンが冷ややかに言い放つ モニター越しの相手はフッと鼻で笑い飛ばした 「君はたいした手のかかる男だな」 タークスの主任になったばかりのツォンにはどうも苦手な上司がいた それがルーファウス副社長 ちょっとした言い合いは日常茶飯事 「そんなに感情を剥き出しにするとは、タークスに不向きなんじゃないのか? 部署を変えてやろうか?」 ずっと年下の上司にそう言われると、何も言えずにただ黙る ツォンは唯一、ルーファウスが苦手な人間だった ルーファウスが社長に就任した時にはもう ツォンもだいぶルーファウスに慣れてきたのか ルーファウスに調子を乱されることはなくなった ずいぶん私に慣れたな、と笑うその上司に苦笑い そもそも普段から冷静沈着でマイペースなツォンは ルーファウス相手の時しかペースを崩したりはしなかった ルーファウスはまだ幼さも抜けきらない外見とは裏腹に ツォン以上に冷静沈着でマイペースという印象を与える男だった そして人間味がツォンより欠けている、と感じさせる 冷酷 そう呼ばれる存在 ツォンはエアリスという特殊な血を引く少女と昔から接している ルーファウスとはあまりかわらないくらいの歳で、無邪気で安らぎすら感じさせる少女と ルーファウスを知らぬうちに比較してしまっていた。 「歳相応の扱いをされなかったせいだろうか」 ルーファウスを眺めながら呟くツォンに ルーファウスは「何か言ったか?」と振り向かずに声をかける 「…いいえ」 そのうちに、まだ輝きを放つ少女の命は神羅の野望の結晶の前に散ってしまった 自分が追っていたせいで? 死なせた原因は自分にも深く、ある それなのに、この人は 「古代種の娘のことは聞いたか?」 「…ええ…」 エアリスの死を 人の死を、何とも思わない? まだ若い命すら、失っても何とも思わない? 悔しさが、こみあげる エアリスは何の為に… 「貴方は…人を不幸に追い込んでいる自覚がありますか」 ルーファウスは心乱すことなく、ツォンを見る それは、平静の目をしていた 「エアリスを、彼女を殺したのは私達神羅です!」 ルーファウスは、無表情のまま口を開いた 「自分を責めれば満足か?我々を責めれば満足か? しかし殺したのは、神羅ではない。セフィロスだ」 「それは責任転換だ!」 ルーファウスはだるそうにため息をつく 「あの古代種がそんなに大切だったのか」 身体が、かっと熱くなったのを感じる ツォンは立ち上がり、思い切り手を上げた ルーファウスはツォンの目を睨み、微動だにしない 病室に、鈍い音が鳴り響いた ルーファウスの頬に、鋭い痛みが走る それでも表情を変えずにルーファウスはツォンを見ていた ツォンは、自分の行動に対して動揺をして、その色を隠せず 揺れる瞳でルーファウスを睨む 「私達は、単なる人殺し集団ですか?! 目的の為なら、誰が死んでも構わないと言うのですか?! 貴方は何も感じないと言うのですか?!」 唇を噛み、ツォンはルーファウスを直視する ルーファウスがゆっくりと口を開く 「君は優秀なタークスではなかったか?よく考えろ、タークスの立場と存在を。 当分、謹慎処分とする。連絡がいくまで勝手に動かないように」 そう言うと、ふわりと背中を向けて 病室を出た タークスの仕事が汚いことくらい、わかっている わかっているが、それでも… 走って、病室を飛び出すと 白いスーツの背中を見つけた 「ルーファウス様!」 ルーファウスが振り向いた瞬間、ツォンは倒れこんだ 傷が痛む ルーファウスは早足でツォンの元へ来ると その身体を起こすのを手伝った 「すみません…」 ツォンが呟くと、ルーファウスは眉間にしわを寄せて口角を上げた 「まだ何か言い足りないか?」 「お話が、」 病室に戻るとルーファウスはベッドで乱れている布団を軽く剥ぎ その行動を止めるツォンを無視してバサバサと揺らして整えた ツォンを横にならせてから、横の椅子に座った 「何を話したいと?」 「…ルーファウス様、私はエアリスを、確かに大事に思っていました」 ルーファウスは頷き、ツォンの目を見ている 「悲しかったのです、彼女が、もうこの世に存在しないと言うことが。 悔しかったのです。貴方が、無関心なことが」 これは私の勝手な気持ちです そう呟いてツォンはルーファウスを見た 「彼女を可愛がっていたのは知っている。 それは恋愛という類の情だったのか?」 「いいえ。妹のような、そういう存在です。 私には家族が無いですが」 ルーファウスは、腕組みをした 「取り乱してしまい、申し訳ございませんでした」 ルーファウスはふっと笑って立ち上がった 「よほど疲れているのか、弱気だな。 好きなだけ私を恨むがいい」 夢を見た その夜の夢は、リアルだった 拘束衣に身を包んだ少年が 虚空を見つめている 横で白衣の男が、点滴と注射を 「あの子供は…」 「…ああ、彼か…」 「…病気、ですか?」 「いや…」 白衣の男に腕を持たれ 目の前を通る そしてすぐそこの重い扉が開かれると 少年はその鉄格子の牢獄のような部屋に押し込まれ 抵抗する様子もなく、ぺたりと座り込んだ 大きな音を立てて扉が閉められる 鉄格子の扉が、シャッターのように降りてきた白い壁に隠された 「ツォン、彼を見たことは、言わずに」 あれは、昔の私の記憶だ そして、あの少年は ルーファウス様? |
いらなくても続く |