癒しの場所・1 |
落ちかけた意識の中で、必死に手を伸ばせば あたたかい腕がそこにあった 派手に手を払われ、ルーファウスは覚醒した ぼやける視界で何かを探す 「私…は…」 「お前今、飛んでたぞ」 「あぁ?」 ああ、と納得した様にルーファウスが唸り セフィロスをその目で確認して、手で顔を覆った 触れようとしたのはセフィロスの腕だった 「もう一回、してやろうか?」 セフィロスの手がルーファウスの首筋をなぞると、 ルーファウスはため息を吐いて手を投げ出した 「いつかわざと、加減を間違えそうだお前」 「意識が落ちる瞬間のお前がたまらないんだ。殺すものか」 「代わりはいくらでもいるんだろうが」 目線を合わせないルーファウスを睨み、セフィロスは軽く奥歯を噛んだ まだ繋がったままのそこを擦ると、ルーファウスはそこにあったシーツを握った 「は、あぁっ…く…」 ルーファウスは薄く目を開き、眉を潜めて苦笑した 激しくされるのが、気持ちいい セフィロスのこのリズムが、いい 「やらしいな、お前」 楽しそうにそう呟き、セフィロスは腰の動きをより激しくした 「んあああっ!ちょ、こんの…絶倫!」 セフィロスは微笑みながらルーファウスの首に手をかけ、締めた 「く…っ…は…」 苦しそうにルーファウスの顔が歪み、やがて、ふと妖艶に変わり、 セフィロスを締め付ける穴がセフィロスのそれをいつも以上にやわらかく圧迫する セフィロスは顔を歪めて、快楽を貪った 「キミは誰にでもこういう事をするのか?」 「まさか、お前以外こんな事で悦ぶか」 ルーファウスは髪を軽く手で整えてから、伸びをした セフィロスが優しい表情でルーファウスを見つめる 鏡越しにその表情を見て、ルーファウスはセフィロスを見た 振り向いたルーファウスを軽く睨むセフィロスの頬に、つい、ルーファウスが手を伸ばす セフィロスはまた派手に手を払った ルーファウスは素早く手を引っ込め、唇を固く結んだ セフィロスはそのルーファウスの姿に胸が傷む 「触るな汚い」 そう吐き捨てられたルーファウスは、呆れた表情を浮かべ 枕でセフィロスを殴ると、立ち上がった 「毎回毎回…じゃあ抱くなよ」 「お前が一番、アレがいいんだ。色魔だしな」 うんざりといった顔でさっさとシャワールームに入ったルーファウス 少し経ってからセフィロスもそのシャワールームに入った 「なに」 頭からシャワーを浴びながら、ルーファウスはセフィロスを睨み上げる 白い肌、色の薄い金髪、水晶玉の様なアイスブルーの瞳 全体的に色素の薄い人間らしからぬ美しさをしたそれが、シャワーで濡れている セフィロスは手に力を入れて、深呼吸した 「お前は何で俺に抱かれてる、沢山相手がいるくせに」 突如ルーファウスの顔に、笑みが浮かんだ 眉は潜めたまま、セフィロスに笑顔を向けた 「馬鹿じゃないか?お前」 跳ねる心臓を沈めるために、とっさにセフィロスはルーファウスを殴った なぜいつも、この衝動が抑えられないのだろう 軽く吹っ飛び、頭を打ったルーファウスは口から流れる血をそのままに セフィロスをシャワーヘッドで殴り付けた 「出てけ!」 半分濡れながら、セフィロスはソファに腰を下ろした 何で自分はこうなのか 頭を抱えた シャワールームから出てきたルーファウスを見ると 先程の傷も気にせずに涼しい顔をして冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した セフィロスはその姿を眺めながら、ぼんやりと考える このままでは、本当に殺してしまうかもしれない ルーファウスは軽い足取りでセフィロスの前に来て、頬にミネラルウォーターをくっつけた 「何するんだ!」 驚いたセフィロスが、ルーファウスを睨む 「飲めよ」 鋭い視線をものともせず、セフィロスを見下ろす ルーファウスからそれを荒っぽくぶんどる そしてまたセフィロスは頭を抱えた そんなセフィロスの様子を眺め、ルーファウスは苦笑しながら着替えた 「遅刻するなよ」 そう言って、ルーファウスはセフィロスの家を出た ルーファウスの姿を無言で見送った後 ソファにあるクッションを抱き締め、セフィロスは寝転がる 「俺は病気か」 副社長室を前に、セフィロスは固まっている 報告書を渡すだけ なのにノックができない 今朝派手に殴り付けた 珍しい事ではなくても、やはり顔を合わせにくい 深呼吸をして、ドアをノックする 「6分」 後ろからルーファウスの声が聞こえ、慌てて振り返ると、矢張りルーファウスが立っていた 「ノックするまで6分。キミは何考えてたんだ?」 「鬱陶しい奴だな、見てたのか」 ルーファウスを睨み上げると、セフィロスは報告書を差し出した 「見ていたが、鬱陶しいとは何事か」 報告書を受け取り、ルーファウスは副社長室の扉を開けた 「なんだ?まだ何かあるのか?」 少し考え、セフィロスは副社長室に入った ルーファウスはそれを気にも留めずにデスクに座って報告書に目を通す パソコンがメールの到着を知らせ、ルーファウスはそれを開いて、薄く笑みをこぼした 眉をしかめていないルーファウスの笑顔は、セフィロスに向けられたことがない セフィロスは軽く、奥歯を噛んだ 「恋人からか?だらしない顔しやがって」 ルーファウスはセフィロスに視線を移さずに、関係あるか、と呟く 「恋人や愛人は何人だ?」 セフィロスの言葉に顔をしかめ、ルーファウスはため息を吐いた 「そっくり返してやる、その言葉」 乱暴に執務室の扉を閉めて出ていくセフィロスを、ルーファウスは呆れた顔で見送った すると扉はまた開かれ、ルーファウスは目を丸くした 「仕事終わったら、うちに来い。たっぷりなかしてやる」 ルーファウスは目を細めてから肩をすくめて見せた 「それは楽しみだ」 去ろうとしたセフィロスを ルーファウスはデスクを指でトントンと叩く事で呼び止めた 「セフィロス、ちょっと来い」 セフィロスは、自分の心臓が大きく跳ねたことに気付いた ルーファウスを睨みながら傍に行くと、ルーファウスはメールを見せた 神羅が持ってる孤児院から また一人、家庭を築き幸せになりますという報告だった 「恋人や愛人に見えるか?」 一瞬、安緒したセフィロスの表情をルーファウスは見た 「人の幸せなんぞ喜んでる場合か」 そう吐き捨てて副社長室を出るセフィロスを、ルーファウスは苦笑して見送った 「来たか好き者め」 玄関にあらわれたルーファウスに、セフィロスはそう吐き捨てた やれやれとルーファウスは呆れながら、ソファに座った 「たまにはセックスなんかしないで普通に過ごさないか? 朝のダメージが抜けてないんだが」 「…間が持たん」 セフィロスの返事にルーファウスは呆れ返った セフィロスがルーファウスの服を掴もうとした時 ルーファウスはセフィロスの手に触れた 矢張り派手に払われて、ルーファウスは襟首を捕まれた ルーファウスはそのセフィロスの手を、両手で握った 「セフィロス、私が触れるのが汚いなら、なぜキミは私に触れる?」 セフィロスは強く奥歯を噛んで、拳を振り上げた 一瞬も退かなかったルーファウスの視線は、セフィロスに殴り付けられ ソファから落ちても、向けられていた 「答えろセフィロス」 もう一度、鈍い音が室内に鳴り響く 「ルーファウス!」 ぐったりと倒れこみ、血を流すルーファウスに走り寄り セフィロスは「おい」と、何度か声をかける ルーファウスの眉間に皺が寄り、咳き込み、血を吐いた 「大丈夫だ、馬鹿力」 起き上がることも出来ず、意識ははっきりしない ルーファウスはふっ、と笑って手を伸ばした 「抱けよ、触らないから」 ぱたりと伸ばされた手が落ちて ルーファウスは意識を手放した 「クソ…」 セフィロスはそっと、ルーファウスの意識が無い事を確認し そっと抱き上げ、髪を撫でる ベッドに寝かせ、顔を撫でると、ルーファウスは苦しそうに顔をしかめた 「セフィロス」 そのうわごとか寝言に、セフィロスは心臓を捕まれた気分だった ルーファウスの手が、セフィロスに伸びる その手を握り、セフィロスはため息を吐いた こんなことをしたかったんじゃない 普通に触れ合って笑い合って やさしくしたかった ルーファウスに優しく触れられると、涙が出る 叶えられるものではないのに わかっていながら 好きになってしまったんだ |
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