棺の花・3













「エアリス、古代種」


「ええ、ご存知なんですね」


「ああ、おやじが話していたのを聞いただけだが」


「あなたと変わらないですよ、年頃は」



ふうん、と興味無さ気にルーファウス様は本を閉じる



「彼女は、花を、スラムで育てているんです」



「スラムで花を?」


「ええ」


「だからキミは花が好きなのか?」


「え?」


「だってツォンはその古代種が好きなんだろう?」







違うと否定したところでルーファウス様は

ふうん、と言うだけで納得はしなかった様で



私は、そう見えていたのか








































長い任務から帰ってきた私はまず

ルーファウス様を探して社内を歩いた



射撃場で見つけたルーファウス様の後姿は

前よりも大きく見えた




「ルーファウス様、もしかしてまた身長伸びました?」





ルーファウス様は振り向いて首を傾げる



「キミは誰だったかな?」


「ひどいですね」



ふふ、と笑ってルーファウス様が銃を私に投げた


「2カ月ぶりか?」

「2カ月と10日ですよ」

「細かい」



「ただいま戻りました」

「ああ、ご苦労。死にかけたってな」

「ええ、今回の任務では、仲間が3人殉職しました」

「キミは?」

「一週間だけ、病院でお休みしました」

「メールの返信がなかった最後の一週間は、入院してたからだったんだ」

「ええ、携帯が壊れて支給されたのはさっきだったんですよ」

「死んだかと思った」

「まさか」

「古代種の娘には会ったのか?」

「ええ、ここに来る前に」

「そうか」



さっと出口に向かって歩き出すルーファウス様を追うと

ルーファウス様は振り向いて私を睨んだ



「仕事にもどれよ」

「…」




焼きもちだろうか



「エアリスに会ったのは、仕事です」

「だから?」

「仕事は今日はもう終わりました。
一番に会いに来ました」



ルーファウス様は振り向いて首をかしげた



「用事はなんだ?」

「顔を見たかったんですよ。それだけです」

「じゃあ、もう帰るのか?」


「ルーファウス様、お時間はありますか?」

「は?」

「ありますよね?ちょっと来てください」




















































「ここは、前に来た花畑じゃないか」



つまらなそうにルーファウス様は車を降りる



「ここは私が一番好きな場所です」


「ふうん」


「ここは、ルーファウス様しか連れてきたことないんですよ」



ルーファウス様が私を見上げる気配を感じてから

私はルーファウス様を見た



「ルーファウス様、私が死んだら
あなたが私の棺を花で埋めてくださいますか?」



一瞬ルーファウス様が顔を歪める

その表情はすぐに普通に戻った



「…なぜ私が」

「貴方が良いんです。白い花で私を埋めてください」

「…キミは早死にするつもりか」

「私は、貴方より先に死ぬでしょう」

「そんなの、わからないじゃないか」

「いいえ、私が生きてる限りは貴方を死なせたりはしません」

「…キミが死んだら私が体を拭いて綺麗にしてやる。
そして綺麗に白い花で飾ってやる」





でも、どうして白い花だ?と聞くルーファウス様に

私は笑顔だけを向けた


























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