この話はなんとなく書いた小さいルーとツォンの話なので、ツォンルーではないと思います。
そしてかなり尻切れで幼少期を強制終了しています。話も飛び飛びです。不完全小説です。
スッキリしない、結局何をしたかったかがわからない
そんな疑問も残ります。しかも長いです。それでもよければどうぞ!
































棺の花・1








「ツォン」



そう言ってから振り向くルーファウス様に

私は笑顔を向けた




「よくおわかりで」

「君の足音は、とても静か」




ルーファウス様という子は、とても不思議な子で

歳の割に、大人びている

そして美しい少年だ


正統派の美少年というのだろうか

お伽話や漫画の王子様みたいだ




天使のようだ、とも言われてはいるが、そこまで無垢には見えない

子供らしくない子で、私は得意ではなかった





「どちらにおいでですか?」

「静かな場所を探してる」

「お部屋は?」

「落ち着かない」

「何故です?」


「わからない」



一瞬、寂しそうに見えた



「では、私の部屋は如何でしょうか?」



私を見上げ、ルーファウス様は目を丸くした



「ありがとう」

「お送りしましょう」






私の部屋は神羅邸の隣にあった





神羅邸での仕事を終えて部屋に戻ると


ルーファウス様はテーブルに突っ伏しながら寝ていた


手には本


耳にはヘッドホン



理解に苦しむような本をそっと引き抜き

開いていた場所がわかるように、近くにあったメモ帳を破り、挟めて閉じる



そっとヘッドホンを取り、聞いてみると

流行の歌でもなく、クラシックでもない音楽が流れていた


聞いたことはあるけど、思い出せないような歌




聞きながら、ルーファウス様をベッドに寝かせると


神羅邸に電話をして、使用人に

まだルーファウス様をお預かりしている事を告げた


勿論部屋にお連れする前にも伝えてはいたが




ルーファウス様を眺めていると

青い目が見開かれ、勢いよく起き上がった


間近で見たそれは、今までに見たことが無い綺麗なアイスブルー

冷たく、作り物みたいな、ビー玉のようだ




「寝てしまったんだな」

「お疲れでしたら、お休み下さい」

「目が覚めた」

「何か食べますか?お送りしますか?」

「…起きる」



窓から見える神羅邸を眺め、ルーファウス様は憂鬱そうにうなだれる



「お腹空きませんか?」

「私は空かない。空いたなら気にしないで…」



そこまで言ってルーファウス様は私を見た



「私がいると、食べにくいか」



頷きたくなったのを抑え、いいえ、と返す


携帯が鳴った

それに出ると、ルーファウス様はまた、窓の外を見た



(ツォン、様子を見に、エアリスに会いに行ってくれないか?)



「エアリスですか?わかりました。なにかありましたか?」


(あの子はわりとお前に懐いているから、頼むよ)


「…ええと、もしかして今から、ですか?」


ルーファウス様を見ると、彼も私を見ていた


(そうだ、都合悪いか?)


エアリスには会いたかった
彼女は、癒される


それにルーファウス様は早く帰したい

大事な社長子息だし、それよりあまり二人でいるのは…疲れる


ルーファウス様に何といおうか、考えていると、ルーファウス様がさっと荷物をまとめた



(ツォン、聞いてるのか)


「はい、すみません。大丈夫です」



急いで電話を切ると、玄関に行ったルーファウス様を追った



「帰られますか?」

「ああ、おかげでゆっくりできた」

「お送りします」

「…では、頼む」



幼い声に似合わない言葉遣い

私はこれが、嫌だった


子供らしからぬ無言の気遣いも、嫌いだ



翌日会社に顔を出したルーファウス様を見つけて

そういえばエアリスとルーファウス様は歳が変わらないくらいだと考え

ルーファウス様の可愛げの無さが際立った



人より贅沢に、物も愛も与えられるとこうなるのだろうか


プレジデントは子煩悩だという



だから会社に来ても好きにさせているんだろうか




でも何故か、表情が少ない子

私はそれが気になっていた



ルーファウス様がこっちを向いて

表情が明るくなった

そして走ってきた



その表情には驚いた

生き生きしている



ルーファウス様の視線を見ると、それは私のうしろ


振り向くと





「リーブ!探した!」

「走っちゃダメでしょう」



私はつい、二人に見入っていた



「やあツォン、ご苦労様」

「あ…はい、お疲れ様ですリーブ、ルーファウス様」

「ルーファウス、ツォンに挨拶は?」



リーブさんがルーファウス様の肩を叩くと、ルーファウス様は口を開いた



「ご苦労」

「ありがとうございます」



まるで親子みたいだ、と、何だか微笑ましかった



「ルーファウス、用意しますから私の部屋行きましょうね」

「わかった!」



ルーファウス様が走り去る姿を眺めていると、リーブさんが私の隣に来た



「懐いているんですね、リーブさんに」



リーブさんは笑って、ルーファウス様が見えなくなった廊下を眺めている



「懐いてくれるまで、時間かかったけどな」

「子供が、お好きですか?」

「まあな。…動物も好きだよ」



何故かリーブさんの笑顔が、寂しげに見えた


リーブさんの携帯が鳴ると同時に、ルーファウス様が廊下の向こうから走ってきた



「…今からですか?いえ、ルーファウス様と約束が…」



ルーファウス様がリーブさんの顔を覗き込む



「少し、遅れて行っては……はあ…」



ルーファウス様がリーブさんの腕を叩き、首を縦に振る

それを見てリーブさんは笑った



「わかりました。すぐ向かいます」



リーブさんが電話を切った後、ルーファウス様が笑った



「どうせおやじの我が儘だろう。あいつは強引だからな」

「約束破ってごめんな」

「理解できない歳じゃない。でも、近いうち、いこう」

「勿論」



リーブさんはルーファウス様を撫でて抱き締めた



「行ってらっしゃい」

「行ってきます」



リーブさんが見えなくなった時、ルーファウス様は泣きそうな顔をしていた



ああ、寂しいんだ



しかし父に対してあの言い草はどうにかしてほしい

それにしても、リーブさんが好きなんだな



「ルーファウス様、私がどこかにお連れしましょうか?」

「結構だ」





歩きだした後ろ姿を眺める




ああ、可愛くない



不在のリーブさんの執務室に書類を届けにいくと、ルーファウス様がソファから飛び起きた



明るい顔は、一瞬にして無表情になった



「リーブはいつ帰ってくる?」

「…明日になるとか」

「そうか」



動く気配のないルーファウス様に、少し困った

デスクに書類を置いて、出口に向かう



「…ルーファウス様、リーブさんを待っていたんですか?」



振り向いたルーファウス様は、困った顔で私を見る



「無理に話をしようとしなくていい」



なぜ、わかったんだろう

子供は、話をするのが好きだから、話したほうがいいのかと

正直言うと気を遣った



「ルーファウス様は、話をするのはお嫌いですか?」

「別に」

「リーブさんとは、どんな約束をしていたんですか?」

「動物園に行こうと」

「ルーファウス様は、動物園に行きたかったんですか?
リーブさんと居たかったんですか?」



ルーファウス様が、私を睨んだ



「だとしたらなんだ!」




部屋を走って出ていった


まずいことを言っただろうか




翌日帰ったリーブさんを見つけて、執務室での話をすると

リーブさんは嬉しそうに笑った



「リーブさん、ルーファウス様は特別我が儘には見えませんが、子供らしくないですよね?
ルーファウス様と同じ年ごろの少女…あの古代種のエアリスと接することがあるのですが
比べるとルーファウス様はまるで可愛げが無い」



随分正直だな、とリーブさんは笑って私を見た


「ルーファウスは確かに、他と比べると、言動も行動も子供らしくない。
でもそれは本人のせいじゃない。環境のせいだ」

「しかし、表情が少ないのが気になるのですが」

「昔からなんだ。ああ見えて、感受性は豊かだよ」

「…彼は恵まれた子ですよね?」

「…世間的にはね」









「ルーファウス様」


「あ」



トレーニングルームで、その姿を見た


特にやるでもなく見ていた様だ



「どうしました?」


「ご自宅にいらっしゃらないので心配しました」


「心配ね」


「…1人で外出なさるのはおやめください」


「わかったよ」


「素直ですね」


「話すのが面倒くさいだけだ」



ルーファウス様は私から窓へと視線を移した



「綺麗でしょう、ここからの眺めは」


「どこが。人間が作り出したものしかない」



人間の作ったもの

私は、エアリスが必死に育てている花を思い出した


花を、自然を見て綺麗だと思うだろうか



「ルーファウス様、用事はありませんよね?」


「別に」

「では、お付き合いいただけますか?」










「ツォン、キミは花が好きなのか?」


丘一面に広がる花畑を前に

ルーファウス様の第一声はそれだった



「…ええ、好きですよ。綺麗じゃないですか」


「…花畑を見ると私は思い出すものがあるんだ」


「なんですか?」


「死人だ。棺の中に入ってる死人。あれは花で綺麗に飾られている」


「…なんてことを、言うんでしょうねあなたは」



ルーファウス様は足元の土を蹴り

石ころを転がす




「ルーファウス様は、葬儀によく連れて行かれるのですか」


「おやじの付き合いだ」


「綺麗な亡骸ばかりでしょう?」

「ああ」

「私は、綺麗な亡骸をあまり見たことがありません」




なんともいえない顔で

ルーファウス様は私を見上げる



「ヴェルドも同じ事を言っていた。でもそれが君の仕事。選んだのは自分なんだろう?」




「…そうですね。この仕事を選んだのは自分の意思です。
あなたを守ることを選んだのも、私の意志です」




少し笑って

ルーファウス様はまた花畑を見た



















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ヴェルドがルーファウスを可愛がってるのは
タークスみんな知ってます。
ルーファウスにはリーブもヴェルドも
子ども扱いしてくれる大事な人。