白6










生活は何もかわらない

ただ、そこにクラウドがいないだけのこと






あれから夢は見ていない



セフィロスも

クラウドも



夢ですら会ってはいない






少し濡れた上着を脱いで

着替える



ため息を吐きながらデスクに向かい、資料や書類を並べて
パソコンの電源を入れる



そのままデスクに突っ伏して目を閉じる






ああ、眠いな


雨音が子守唄のよう




























懐かしい空気が入り込んできたと思って目を開くと


明るい窓からやわらかい光が差し込んでいて




そこに誰かが立っていた


すぐにわかる


それが誰かということくらい







外は雨


だからこれは、夢





「眩しい」




もう一度目を閉じると



風がゆったりとした速度で体を撫でていく




「懐かしいと思わないか?」




ルーファウスの問いかけに

セフィロスは小さく笑った



「ああ、そうだな。
一緒にいた頃は、こんな気持ちのいい風をよく感じていたな」




目を閉じたまま、ルーファウスはその気配を感じる





「なあルーファウス、お前は、この場所を気に入ってるのか?」


「どの場所だ?」


「今の、居る場所」





ルーファウスが軽く笑いながら目を開くと

セフィロスの後姿が見えた




ああ、いるんだな、ここに


セフィロスが



いるんだ








「気に入る気に入らない関係なく、
私はこの場所でしか生きられないんだ」



「オレは、どこにいればいい?」



「それは、キミが決めるんだ」



「お前は?」



「私はどこへも行かない。
キミの見える場所に、私はいつだって居るじゃないか」



「いつか、戻ってきてもいいか?」




「馬鹿め」








夢ででもいい


夢でもいから



キミは来てくれたじゃないか











セフィロスの気配が近付いてくる




「ルーファウス、クラウドと居ると、幸せか?」



「…どうかな、そうかな?」



「オレといるよりか?」



「キミたちはなぜ、そういう事を聞くかな」



「どっちが好きなんだお前」


「どっちなんてないよ。わかるものか」



「今は?」




「…今は、クラウドも…いない」





ふふ、と笑いながらセフィロスは

ルーファウスの頭を撫でた






「オレはもう、いなくても平気か?」




その言葉に


ルーファウスの目の端から自然と涙が出た


それを隠すようにルーファウスは腕で顔を隠す





「お前が居なくて平気なときなんて無かった」



「クラウドがいるのに?」



「クラウドは、キミとは別だ。全然違う。
…私にはどっちも必要」










夢だ



これは自分が言いたい事を吐ける

自分が作り出した夢なんだ










「欲張りめ。オレはお前だけでいいのに」



「離れたのはキミじゃないか」



「クラウドも、お前だけでいいんじゃないか?」



「離れたのはクラウドだ。
キミは、君たちはいいじゃないか、愛されてる」






「ルーファウス、オレはお前だけを愛してる」























起き上がり見上げると





「クラウド」



「…久しぶり」




「…ああ、そうだな」




久しぶりに見た、その顔を見上げ

ルーファウスは笑ってみせる





「今、セフィロスと話していた。夢で」



「そうかよ」








やわらかい風が入ってきて


夢はまだ、続いているのか








「私はずいぶんと、君を苦しめたんだな」




「俺は、それでもあんたといる時間を大事にしてた」





それでもまた…


また一緒に、


クラウドがそう、言う前に


ルーファウスは目を閉じた






「君といた時間は、楽しかったよ」


「ルーファウス、俺達本当に、終わりか?」


「キミが、言ったんじゃないか」




「終わりに、したいか?」


「また、繰り返すなら終わらせておいたほうがいいじゃないか」


「…ルーファウス、ごめん」


「それはどういう意味だろうか」



「アンタを、オレも傷付けただろう?」



ルーファウスが目を開き、クラウドを見ると


クラウドは目をそらし、俯いた



ルーファウスはクラウドに微笑むと

優しく首を振る



「私は鈍いからな、あまり傷付かないんだ」



だから、大丈夫



そう呟くルーファウスに、クラウドは微笑む


そして悲しそうに、視線を落とす




「アンタいつも大丈夫って言うよな」


「そうだったか?それは大丈夫だからだ」


「大丈夫じゃ、ないだろう」


「私は、キミが思うよりずっと強いという事だ」





明るく微笑むルーファウスの表情はどこか虚ろで

クラウドは眉をしかめる




「ルーファウス、オレと離れてて、平気だった?」


「なぜ?」


「…オレが、平気じゃなかったから」



ふふ、と笑うとルーファウスは立ち上がり、コーヒーを淹れる










「…クラウド、仕事は順調か?」


「…ああ」



話題が変えられたことに

クラウドはため息をついて頭を掻く



「ルーファウス、アンタは、もう、本当に終わりにしたい?
オレは、戻れるなら、戻りたい」


「それは、なぜだ?」


「アンタが傍にいないと落ち着かない。
仕事中も、集中できない」


「それは困るな。だが、時間が解決するのではないか?」


「どうだか」


「私はな、セフィロスを忘れることはできない。
私の中のセフィロスの存在を、言葉になんかできない。
夢で彼と会った。
あれが現実なら、私はどうしただろうか、それは自分でもわからない」



ルーファウスが笑ってコーヒーをテーブルに置いた


クラウドはソファに座りながらルーファウスを見ている



「でも、私はキミという安心できる場所をなくして…なんだか憂鬱だ。
私はキミに会いたかった。
夢でセフィロスに欲張りだといわれたよ。でも、選べない」



ルーファウスは窓の脇に立って

目を伏せた














「だから、どっちも選ばない」





































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