白5










声が聞こえる


ルーファウスの声だ



声の方を向くと

ルーファウスは白い光の中で寝転び

歌を口ずさむ



「…久しぶりだな」



先に声を出したのは、俺だった。

会いに来たんだろうか、俺に



「元気、だったか?」



そう言いながら俺を見上げ、ルーファウスは微笑む



「ああ。アンタは?」

「ああ、元気だよ」



起き上がり、ルーファウスは真っ直ぐに俺を見る


情けない顔をしていて、俺は思わず笑うと


ルーファウスは両手をのばし、俺の首に絡める



「会いたかった、クラウド」



気持ち良い程ぴたりとおさまる細身の身体を抱き締め

俺は目を閉じた



ああ、ルーファウスだ



「俺も、会いたかった」
















涙を流してることに気付いたのは

夢から覚めた時

ああ、夢だったんだ



夢…







「ルーファウス」


口に出して名前を呼んで


心臓に何が刺さっているのかと思うほど、傷んだ



俺は、この名前を呼びたかったんだ、と




俺はまだ、あいつが好きなんだ、と








白い部屋のようなところで白い光に包まれて

目を伏せて歌うルーファウスを思い出す


男でも、格好良い奴だと思う




夢の中のルーファウス





会いたい




もう一度会いにいくには時間が経ちすぎてる気がして戸惑う




そう、もう終わったんだ














そんなある日


神羅から仕事の依頼が届いた



神羅は払いのいい客



対応するのは、ルーファウスでもタークスでもない


知らない人間






戻ってもきっとまた同じ理由でオレが我慢できなくなる


だからまたルーファウスの所に戻る気は無い





それでも、会えるのではないかという期待を抱いて


クラウドは依頼を受ける







神羅という文字にルーファウスを見る






暇な時間に自然と足が向いた場所

ルーファウスの家





懐かしいと思うには時間が足りない

けれど、毎日のように行っていたその家を見るのは

やはり懐かしかった



遠目から見るその家には人の気配がなかった



いないのだろうか?





何か、理由は無いだろうか


家を訪ねる理由は




その時後ろから

足音が聞こえた


とっさに剣を抜き


構えると




振り向いた先にはレノがいた






「…なにやってんだお前」



「…レノか…」



「社長なら家にいねぇぞ、と」



「そうか…」




停めてあったフェンリルに寄りかかり

ため息をつくと

レノが呆れたようにため息をつき

俺の隣に立った




「何しに来たんだよ」



無言のオレに、レノが苦笑する



「社長に会いたかったのか」




オレは髪を掻きながらレノを見た



「ああ、そうだ」



「会いたいんなら、連れて行くけど?」



「…会っても、話すことが無い。
終わりだと言ったのはオレなんだ」



「んなもん、会いたかったっていえばいいぞ、と」



「言えるかよ」


「今、来たのがオレじゃなく社長だったら
お前どうする気だったんだよ」



それを想像して、オレは額を押さえる



言える言葉はなんだろう



「わからない」



レノは肩をすくめてため息を吐く



「もうすぐ社長帰って来るぞ、と。
会いたいなら待ってろ、会いたくないなら帰れよ、と」







「ひとつ聞きたい。なぜ神羅はまた、オレに仕事を?」



「社長が言うには、『あいつなら確実だから』だと」





























「レノ、何してるんだ?」




「あ、社長、お帰り」



「家に入っていればいいものを」



「オレも今来たんだぞ、と」



「そうか?」



「そういえば社長、クラウドって今何してるんだ?
最近見ないぞ、と」



「さあな。私も見ていない」



「気にならないのか?」



「どうかな。それより雨が降ってきた。早く入るぞ」



「いや、すぐ仕事に行くぞ、と。で、資料は?」



「少し休んで行ったらどうだ?」



「いーや、早く帰りたいから早く済ませる」



くす、と笑いながらルーファウスがレノに資料を渡す



「そういえば、今日はルード休みだもんな」



「そういうこと」




レノも笑いながら、ルーファウスに手を振って車に乗り込んだ














クラウドは、今何をしているだろう



笑っているだろうか





















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