白1 |
夢を見ているようだと、思った 真っ白な壁に 真っ白な床 真っ白な家具 真っ白な服の、ルーファウスは その部屋で 真っ白なベッドの上で 死んだように眠っている ここは、どこだ? これはきっと 幻だ 「セフィロス」 いつの間にか俺を見ていた人形のような顔のルーファウス 顔色は悪い 表情は 無い 「クラウドに会いに来たのか?」 声が出ない 俺を見ていたその目が細められた 「クラウドなら、仕事じゃないかな」 「ルー…ファウス」 俺の顔を見て、ルーファウスは やわらかく笑った その表情が、空気のようだと思った 「うん?」 これは幻だ 「お前は、本物か?」 俺の言葉をじっと聞いて ルーファウスは目を閉じる 両手を広げて寝転んだ状態で 歌を歌いだした 風がルーファウスを撫でて この部屋に窓があることに気づいた 俺がベッドに近付くと 歌が止んで ルーファウスは目を合わせないまま 「キミは本物か?」 と呟いた ああ、幻は俺かもしれない どっちでもいい どっちが幻でもいい 目の前のルーファウスが消えなければいい 「ルーファウス」 「なんだ?」 「俺は、誰だ?」 ルーファウスの目が俺に向けられ ふっと笑った 「セフィロスだ」 俺は何ももう、持っていなかった 俺には誰も、いなかった 俺の罪は、重くなるばかり それでも俺は 「俺は許せなかった」 「うん」 「神羅も、生きてる人間も、何もかも」 「うん」 「…お前、も…」 「…うん」 ルーファウス 俺は、こいつを恨んでいたわけではない いつのまにか 「セフィロス」 声をかけられると思っていなかった 少し、驚いた 「私を、恨んでたなら、私のことを覚えていたのか?」 「…俺は、お前の事よりも…他の事で…」 「私は、恨まれてもよかった。せめて覚えていてほしかった」 ルーファウスは起き上がり、俺をしっかりと見上げる 「私は、キミを忘れた事など無かった」 言葉に詰まった 今俺は、気持ちが穏やかだ それも、俺が幻だからだろうか こいつが幻だからだろうか 珍しく、夢を見ているのだろうか だからだろうか 「私は神羅だ。神羅は、私だ」 「ルーファウス、俺が愛したのは、お前だけだ」 うつろな目をしたルーファウスは その目のまま笑って 俯いた 「君を傷つけて追い詰めたのは、神羅だ」 「…宝条…」 「彼を好き勝手させたのも、神羅だ」 「俺は…」 「セフィロス、これはきっと夢か幻だな?」 「…そうだな…」 「こんな夢、見たくなかった」 「…俺は、ずっと見ていたい」 「だから、弱いんだよお前は」 ルーファウスの手に 手を重ねる ルーファウスは俺を見上げて、眉をしかめた 「弱くてもいい。俺はお前といたい」 「私は、キミの、どちらかというと敵だ」 「わかってる」 「夢なら早く、覚めてくれ」 そういうとルーファウスは俺の手を握る 俺はそのまま、その身体を抱き寄せた なすがままのルーファウスが、眉をしかめたまま笑顔を作って 俺の胸に身体を預ける 「このままずっと、一緒にいれるか?」 俺の言葉に ルーファウスは俺の指に自分の指を絡めながら ふふ、と笑った 「私はどこにも行かない。どこかに行くのはキミだろうが」 「行くなと言えばいい」 「好きにしたらいい。私はキミを止めない」 「…ルーファウス、お前、男らしくなったな」 「あれから何年経ってると思ってるんだ馬鹿者が」 「愛してる」 「嫌いだその言葉」 「ルーファウス」 「なに」 「何か話してくれ」 「…難しいこと言うな。何を話せばいいやら」 「俺がいない間、どうしてた?」 「親父が死んで社長になって、会社が無くなった」 ルーファウスはそのまま目を閉じる そして、動かなくなる 「…ルーファウス?」 「眠りたい」 「夢なんだろう?」 「でも、眠りたい」 これは夢か幻か 白く狭い世界で 俺がずっと呼び続けていた人が目の前にいて 死んだように眠っている 後戻りができない俺が見たこれはきっと真実ではないんだろう 思考が麻痺して目を閉じた 目が開いたらまた 俺は独りだ |
セフィロス視点から。 次→ |