青空・9








「クラウド、また戻ったのかな…ルーファウスと」


また家に寄りつかなくなったクラウドの事を考え ティファが呟く
バレットが首を横に振った

「あいつヴィンセントのとこにはわりと顔出すらしいんだけどよ
ルーファウスんトコには行ってねぇみてぇだぜ」

「そうなの?」

「シドの話によるとな」
















最後で良いからひと目見たい

そう思ったのは何度目だろう





ルーファウスの姿を見れば見る程 俺はまたあいつの手をとりたくなるのに


見るだけじゃ我慢できなくなって、話したくなるのに


アンタはもう本当に俺を忘れたのか?



これじゃあ、駄目だ

仲間を選んだのは、俺なんだ


別れる決意をした時の気持ちを

思い出さなくては



神羅という存在

大切な人を奪った敵


それをしたのは、ルーファウスだっただろうか

神羅に恨みをぶつけた時
ルーファウスはそれでも俺を受け止めようと


我慢してたのはオレじゃなく

ティファや、仲間

ルーファウスじゃなかっただろうか


たくさん傷つけた


神羅を恨む仲間が、俺が神羅と居ることを
ずっと責めないでいた


俺や仲間が責めても
ルーファウスはその事で何か言っただろうか


一体あとどのくらい経てば この気持ちが薄れるんだろう














「大切なものは何だろうって考えた」


寝起きのヴィンセントが いつの間にかソファに居たクラウドに驚く


「離れるからには諦める決意もした」

「クラウド、いつ来たんだ」

「朝方。シドはまだ寝てるのか?」

「ああ」


ヴィンセントがカーテンを開け、目を細める


「時間が経っても少しも変わらない。俺はどうしたらいい?」


窓からの日差しを避けるようにクラウドが背を向ける
ヴィンセントはため息をついてソファに座った


「そういう状況の解決策は知らない」
「わかってる、自分の問題だってのは」
「家に帰っていないそうだな」
「俺の中では何も解決してないんだ」
「ここに居ても解決しないぞ」












「で、ここに来たんですか?」

リーブが笑いながらクラウドに飲み物を差し出す

クラウドはそれを受け取りながら頷いた


「一人でいるから余計色々考えちゃうんですよ」
「セブンスヘブンには行く気にならない」
「ルーファウスさんのトコに行きたいんでしょ?」
「・・・ああ。そうだ」
「だってもう終わったんでしょ?」
「そうだ」
「仲間と居るために終わらせたんでしょ?」
「・・・ああ」
「じゃあ仲間と居なさい」


クラウドは自分の頭を派手に掻いてから頭を振った


「帰ったら解決するのか?」
「それはわかりませんけど、今よりはいいのでは?」













「お帰りクラウド!」

嬉しそうに飛びついて来たマリンを撫でながら
クラウドが入ってくる

ティファは笑顔でクラウドを迎えた


「お帰りクラウド。お腹すいてない?」


お帰り。クラウド。

ルーファウスの声を思い出す


クラウドは苦笑しながら頷いた


「何か、作ってくれ」

「うん。すぐ作る」

「よし、食べたら何処か行くか」

「やったあ!」


クラウドの声を聞いて部屋から出てきたデンゼルと
クラウドの横に居たマリンが大喜びをする

ティファは微笑みながら調理を始めた












ここにいる時間は勿論好きだ

でも、ルーファウスを未だに思う心があることからくる
後ろめたさが強い
思い出してしまうのではない
思ってしまうんだ

わざとルーファウスが行きそうな場所に行ったりする自分が
情けなくて笑える




あれから何か月経っただろう

未だにルーファウスにばったり出くわしてはいない


敵に襲われていないだろうか

怪我をしていないだろうか

病気なんかしていないだろうか


まさか他に誰かできていないだろうか




一人でボーっと大きな木の下で景色を眺めていると
後ろに気配がした

殺気はない

少し懐かしい




「なーにしてるんだか、と」

そう言いながらクラウドの隣にレノが座った

クラウドは少し笑う

神羅の仕事は引き受けていても こいつらにも会ってなかった


「元気そうじゃん」
「無いよ。元気なんか」


レノがクラウドの顔を覗き込んだ瞬間
レノの携帯が鳴った


「ハイハーイ」


レノの携帯から微かに聞こえる声に
クラウドは突然目が覚めたように反応した


ルーファウスの声だ


「終わりました。あ、社長そういえばさ」


くだらない話で会話を伸ばすレノがクラウドに笑いかけた

ルーファウスの声が、すぐそこに聞こえる


電話を切った後、レノがクラウドに笑いかけた

「ちょっと元気出たか?と」
「…ルーファウスは、もう俺の事を忘れただろうか…」

レノが目を大きくしてから笑った

「社長そんなに器用に見えるか?」














「ティファ。俺は間違ってたかもしれない」


子供達が寝た後 クラウドはミネラルウォーターを飲みながら口を開いた
ティファは隣で俯く


「…なにが?」
「俺は仲間を失うのは嫌だ。でも…」
「…ルーファウス?」
「…」
「また、ルーファウスと戻ったの?」
「まさか、会ってないし声も聞いてない」
「戻りたい…んだ?」
「…俺は、今の自分が嫌いだ」
「それは、ルーファウスと離れた事を、後悔してるっていうことだよね」
「後悔は、してる」
「クラウドは…どうしたいの?」
「仲間は大切だ。本当に。でも…この気持ちが晴れるとは思えない」
「ルーファウスはもう、クラウドと戻る気ないかもしれなじゃない?
一回離れたのにまた、なんてルーファウスは嫌じゃないかな」
「そうだとしても…このままじゃ俺はきっと、ずっと引きずる」
「…私…なんだか無理にクラウドとルーファウスを引き離して…私のせいで…」
「違うんだティファ。俺が決めた事だったし」
「でも、私があんな事言わなければ…クラウドは苦しむ事無かった…」
「誰かに言われただけ別れるなら、その程度だったんだ。でも俺は、もう限界だ」
「戻るの?」




クラウドは立ち上がってティファを見た


「ごめん…ティファ」








どうしたらいいのか











暗がりの中 ルーファウスの家の近くまで来た


歩いて少し 近付く

家の裏の木の下に座っているルーファウスが見えた


穏やかな顔で本を読んでいる





久しぶりに見た




出て行ってはダメだ。




涙が出た






クラウドは ルーファウスに気付かれる前にそっと その場を離れた


















次でラスト


2010・12