青空・8




クラウドとリーブが肩を並べて歩く



「ルーファウスがアンタになついてたなんてね」

「…できれば、私はルーファウスさんを引き取りたいとさえ思った時期もあった」

「…あんたらが互いに互いを気にしてるなんて想像もつかない」

「心を閉ざして拒否したのはルーファウスさんだ」

「なんで?」

「さあ、ルーファウスさんは何も言わない」

「今も特別な感情があるのか?」

「もう、神羅としか見れない。
ルーファウスさんが社長になったあたりにはもう、私達の仲は終わったからな」

「ちょっと、なあどういう関係だったんだよ」

「色々な。ああほら、迎えが来たぞ」






クラウドの元へ走るティファが見えて、ルーファウスはカーテンを引いた












眠るルーファウスの目の端から流れる涙が頭から離れない

クラウドはティファに背中を向けた


「忘れ物した。リーブ、ティファ連れて帰ってくれ」

「いいよクラウド、待ってるから」


「頼む、帰っててくれ」









ドアをノックされる


そして開かれる



クラウドの登場に、ルーファウスはベッドから起き上がった




「大丈夫か」

「クラウド…帰ったのでは?」

「アンタが、気になって」

「ありがたいが、迷惑だ」

「なんで泣いた?」



思いもよらぬ言葉にルーファウスは顔を上げる


「何の話だ?」

「あんた寝てるとき、泣いてた」

「なに?」

「なあ、昼、俺を見た?」

「何の話をしに来たんだ?雑談ならやめてくれ。休みたい」

「心配した。リーブに電話を頼んだのは俺なんだ。電話から銃声が聞こえた」

「キミ達の声も聞こえたよ」

「あんた、平気な顔で傷つくからきっと傷ついたと思った」

「私はそこまで敏感じゃない」

「…俺、アンタと離れてからずっとティファといるんだ」



ルーファウスは肩をすくめてから膝を立てた


「想像はついてる」

「でも駄目なんだ。愛情とか、持とうと努力しても持てない」

「…無理に持とうとするからじゃないか?自然に一緒に居ればいいんじゃないのか?」

「ちがう、アンタがいいってことだ」

「巻き込まないでくれ」




クラウドがルーファウスに手を伸ばすと

ルーファウスは後ずさるように身を引く


「なんだ」

「逃げるなよ」

「寄るな」

「ルーファウス」

「寄るなと言っている」



力強く、低い声でクラウドを見上げる

クラウドは思わず足をとめて手を引いた



「…どうしてそこまで拒否するんだよ…」


片手で頭を抱えるようにして、クラウドがその場に立ち尽くす


「これ以上何を話す?」

「一回で良い、抱きしめさせて。そうしたらもう諦めるから」


ルーファウスは苦笑いをしてカーテンを開けた


「待ってるぞ。ほら、早く戻れ」

「頼む。あんたに触りたい」

「…キミはそんなことしたらまた、気持ちが揺らぐ。やめておけ」

「アンタがいやがってるの?」

「そうだ。だから戻れ。早く」

「ルーファウス、俺、あんたが好きだ」


クラウドの目に溜まっていた涙がこぼれ落ちる

ルーファウスは困ったように笑って携帯を手に取った



「リーブ。クラウドが来てる。ティファと迎えに来てくれ」

「ルーファウス!」

「ああ。頼むよ」


通話を切ったルーファウスがクラウドにハンカチを渡す



「ほら、迎えが来る。泣いてたら恥ずかしいぞ」

「ルーファウス、俺…」

「ん?」

「本当に、好き…だった」

「ああ」

「今まで、ありがとう」



ルーファウスはクラウドを見上げて微笑む


廊下に足音が聞こえて、クラウドはハンカチで涙を拭いた


「それ、置いて行けよ。おまえはそういうので感傷にひたりそうだ」

「…わかった…もう、戻れないんだよな?」

「そうだ」


ハンカチを返して、クラウドがルーファウスをじっと見つめる


「クラウド、迎えに来たよ」


ティファの声

クラウドはルーファウスに背中を向けて出ていった





閉められた扉を眺めてから手元のハンカチに目を落とし、ルーファウスが微笑む






「終わったんだ。これでよかったんだ」








ルーファウスはカーテンを閉めてベッドに横になった




















「しっかりと、別れてきた」


ヴィンセントがクラウドを眺める


「別れた。もう戻らないって話もした」

「納得できたのか?」


ヴィンセントの言葉にクラウドが閉口する

ヴンセントは呆れたように溜息をついた


「納得していなければ意味が無い」

「俺はまだあいつが好きだ。でももう戻れないから」

「時間が解決するっての。おめえにはティファがいるだろうがよ」

「……」


シドの言葉にクラウドが黙りこむ


「別にすぐに誰かとくっついてなければ駄目なわけではないだろう。
そして誰と取引してもそれはお前の自由だクラウド」


ヴィンセントの言葉にクラウドが顔を上げた


「まだ好きなんだ。でもシドの言う通り、時間に任せるしかない」

「そうだおめえ・・・」

「シド」


言いかけたシドに ヴィンセントが「あっちへ行け」と目くばせをした
シドは溜息をついて隣の部屋に移動した


「クラウド、まだ好きなのに何故別れた?」

「…ルーファウスを、仲間はよく思ってないのは知ってる。
そしてティファに言われたんだ、ルーファウスを選ぶなら来ないでって」

「ティファを優先したのか」

「…そうじゃない」

「ティファが好きなのか」

「違う」

「ならなぜ別れる必要がある」

「…ルーファウスといることで仲間との間に亀裂が入るのは…」

「…まあその程度の感情ならば別れて正解だ」

「決めつけるなよ」

「どう違うんだ?」

「俺は…あいつと居たかった…守りたかった」

「過去形か」

「違う!今でもそう思ってる!」

「それよりも周りの目を気にしているくせに」




クラウドはヴィンセントと目を合わせてからうなだれる




「あいつが今なにしてるかばかり 気になるんだ」





























病室のベッドで ルーファウスが書類を眺める


ルーファウス神羅


その文字をじっと眺める



窓からゆるやかな風が入り ルーファウスの髪を揺らした


ルーファウスは薄く微笑み 書類をファイルにしまった













続→




2010・12