| 青空・6 |
「…感謝する」 2発目の銃弾がルーファウスを貫く直前に剣で遮ったクラウドに ルードが礼を言ったのは男たちをすべて片付けた後 倒れたルーファウスの手からペンが落ちていたのを見つけて クラウドが微笑む ルーファウスを抱き上げて前髪を撫でた 「社長から離れろ」 ルードの言葉におとなしく渡すはずもなく クラウドがルードを睨む 「俺が運ぶ。どこに運べばいい?」 目が覚めると、辺りは暗く ルーファウスは窓の外を見まわす そっと家を出て、先ほど自分が倒れた庭に出る そこにクラウドが見えて、ルーファウスは笑った まだ目が覚めていないらしい 胸から指の先にまで、独特の痛みが走る そうか、きっとそこがペンを落とした場所なんだ そう思いながらそこに向かって歩き出すと、幻のはずのクラウドが振り向いた 「起きた?大丈夫か?」 心臓を鷲掴みにされたような感覚 ルーファウスはその場で立ち止まる 「ペンは?」 クラウドは立ちあがり、微笑みながら歩み寄る 「これ、あんた持って歩いてたんだな」 差し出されたペンを受け取ろうにも、手が震える ルーファウスは必死に動揺を隠しながらペンを取った 見上げると、クラウドが笑っている 苦しくなってくる 「キミは…どうして、ここに?」 「話したいって言っただろ」 ルーファウスは必死に平静を装って 薄く笑った 暗闇で見えにくいルーファウスの笑顔はいつもの普通の笑顔だった 「ルーファウス」 クラウドに呼ばれると、身体のいろんな場所が痛んだ 早く逃げなければ クラウドをまっすぐ見れないでいると クラウドの優しい声が響いた 「最後に、少し話そう」 最後 ああ、もう駄目だ 目もとが熱くなるのを感じて、ルーファウスはうつむいてその場に座った 「少しなら」 普段と変わらない様に見えるルーファウスの態度に、クラウドは唇を噛む 「俺アンタを忘れる努力、するよ」 「そうか」 「それで、いいか?」 「キミが決めたことだろう?」 「アンタを忘れていいのか?」 ルーファウスは何も言わずにただうなずいて、笑って見せた それはとても優しい表情で 離れたくない そう願ってもきっとまた、繰り返す 「ルーファウス、最後でいいから聞かせてくれ」 「なんだ」 「俺のこと、本当に好きだった?」 ルーファウスはその表情のまま、首を横に振った 「残念だが、その答えはNOだ。でもキミとの時間は、楽しかったよ」 「好きにも、なってなかったって?」 返事はない クラウドは唇を噛んで、ルーファウスに背中を向ける 「じゃあ」 「気を付けて」 俺はまだ、こんなにも思ってるのに、俺だけ、だった? 俺だけ 好きでも、なかった? フェンリルにまたがり、少し黙ってから発進した 遠のいたクラウドの背中を眺めて ルーファウスが苦しげに笑った ペンを強く握りしめてキスをする 「好きだったなんて、過去形じゃないか」 |
続→ 2010・11 |