いとしいひと










「ルーファウス」



その名前を堂々と呼び捨てで呼ぶと、驚いて周囲は振り向く


外に用事だったのか、コートと手袋とマフラーを装備していた



白すぎて眩しい

肌まで白いし




「ああ、キミか」



呼ばれた本人は気にもせず、セフィロスを見上げた



「いくら神羅の英雄といえど、その態度は問題だ」



ルーファウスの隣にいたツォンが、セフィロスを睨む



「…じゃあ、ルーファウス様?」



ルーファウスは噴き出して笑った



「気持ち悪い。やめれ」

「しかし…」



しかめっ面のツォンに、ルーファウスは苦笑した



「気にするな」



納得いかないと言いたげなツォンを無視して

セフィロスはルーファウスの肩を叩いた



「昼飯いくぞ」

「ん?」

「いいから来い」



強引にルーファウスを連れ去る


ルーファウスを車に押し込むと、セフィロスも運転席に乗り込んだ



「随分強引だな」

「時間が勿体ないからな」

「私はもう食べた」

「実は俺もだ」



ははっ、とルーファウスは笑い、手元の書類に目を通す



「では、どこに私を連れていく気だ?」

「…ホテル?」



無言で車を降りようとするルーファウスを引っ張る



「俺が悪かった」

「わかればいい」



また、書類に目を通す



「やらなくていいから、キスをして抱き合いたい」



セフィロスの呟きに、ルーファウスは目線を上げてセフィロスを見た

ルーファウスのその表情は、笑っている



「キミはたまに可愛いな」



ルーファウスの言葉に目を丸くした瞬間、セフィロスの携帯が鳴る



「…お前はいつも可愛い」



その言葉を受けたルーファウスは不機嫌そうに顔をしかめ
セフィロスの携帯を取出し、持ち主に渡した



「出ろよ」

「嫌だ、せっかく二人で居るんだぞ。せめて口で…」



ルーファウスはセフィロスの額をピシャリと叩き、ため息を吐いて携帯を指差す



「見ていいか?」



セフィロスは頷くと、ルーファウスは携帯のディスプレイを見た

次の瞬間、ルーファウスは通話ボタンを押した



「出たくないって!」



セフィロスの顔を見てまたため息を吐いて
ルーファウスは携帯を耳にあてた



「もしもし?ああ、そうだ、セフィロスの携帯だ。私?ルーファウスだ」



一体誰と話しているのか

セフィロスはそれを見守った



「わかった、向かわせる、ああ、ご苦労」



携帯を切ると、ルーファウスはセフィロスに携帯を返した



「時間より前だが、早く来い、だと。行ってこい」

「お前…俺と過ごしたくないのか」



ふふ、と笑ってルーファウスはマフラーを外し、セフィロスに巻いた



「今日は冷えるぞ、雪が降るらしい」



そしてマフラーの両端を引っ張り、セフィロスの頬にキスをした



「セフィロス」



つい笑顔になったセフィロスから離れ、ルーファウスは車から降りた



「なんだ、ルーファウス」



書類を小脇に、コートのポケットに手を入れながらルーファウスがセフィロスを見ている



「今日は早く上がれそうだ。奇遇だろう?」

「よし、夕飯は食うなよ」


セフィロスは笑顔でそう言うと

軽快に車を発進させた






















「寒いな〜」



防寒着を着ている兵士たちも、身震いをしている



「あ、セフィロスなしたそのマフラー、誰の」



ザックスが身震いしながらセフィロスに寄って来る



「俺の」

「うそつけ。白なんて持ってないだろ」

「…恋人の」

「かー!いいねえ〜そりゃ寒くないわ」




任務は夕方、終わりかけていた

雪が降り出した





「早く終わらないかな」



空を見上げるセフィロスに、ザックスが笑う



「初雪だもんな」




屋内に入り、セフィロスとザックスは暖まりながら

兵士たちが任務をこなすのを待った



「なあセフィロス、恋人って公認じゃないよな?」



ザックスはセフィロスの恋人をルーファウスだと知っている



「嫌がられてるんだ。他に言うのは、絶対許さないと」

「まあ、英雄と副社長なら一緒に行動しててもおかしくないから、まだ救いだよな」

「…確かに」

「今日はもうすぐ仕事終わるぜ。会わないの?」

「…会う。楽しみだ」




セフィロスの顔を見て、ザックスが笑った



「幸せそうだな〜」



任務完了と同時に

セフィロスは足早に、車に戻った




「ルーファウス?」



セフィロスの車の前に立っていた白い人影は、紛れもなくルーファウス

鼻と頬が寒さで赤い



「おかえり」

「ただいま」



ご苦労、でも、お疲れ、でもない

セフィロスはこの言葉が好きだ



ルーファウスの頬に触れると冷たく、待ち時間が長かった事がわかる



「待ったか?」



笑いながら軽く2回頷くルーファウスを抱き締める



「こら、セフィロス、見られる」

「いいだろう別に」

「良くな…」


「お疲れ!副社長、セフィロス」



携帯を片手に普通の笑顔で隣の車に乗り込むザックスに

ルーファウスは口を開いたまま固まった

セフィロスはとりあえず、ジェスチャーでお疲れを返した



「セフィロス、離れろ…」

「ここに車を停めてるのは俺とザックスだけだから、大丈夫だ」

「他にも兵士がいるだろう?」



セフィロスの腕から逃れようと藻掻くルーファウスを

また一段と強い力で抱き締める



「見つかりたくなかったら俺の車の前で待つなよ」

「…それもそうだな」



苦笑しながらルーファウスは抵抗をやめた



「ルーファウス、冷えるから、乗ろうか」

「その言葉を待っていた」




食事を終えてセフィロスの家に行き
ルーファウスがシャワーを浴びている時、セフィロスの携帯が鳴った



ザックスからのメール



やってっかー?やりすぎんなよー!
これさっきの。プレゼント



それはさっき、任務完了直後に車の前にいた時の

携帯で撮ったらしいルーファウスの写真だった



ああ、笑顔だ

自然な笑顔だ

つい、セフィロスの顔がほころぶ

可愛いな



「なににやけてる?」



いつの間にかシャワーを浴びたルーファウスがセフィロスを見ていた

ばれたら消される

とっさに携帯を閉じた



「いや、なんでもない」

「携帯眺めて、なににやけてる?」



ルーファウスがゆっくりと、寄ってくる



「…なんでもない…」

「ん?」

「…ザックスからだよ」



無言でルーファウスはセフィロスを見つめる

それは妬いてるとか、責めてるとか
そんな表情ではない



「仲良いんだな」



しゃがみ込み、セフィロスの手の中の携帯を眺める



「いや…」

「だって、楽しそうな顔してたぞ。にやけて」

「見たいか?メール」



ルーファウスは苦笑して立ち上がった



「いや」



これはこれで、すっきりとしない



「ルーファウス、写真を撮らせてくれないか?」

「嫌だよ」

「何故」

「私が君の写真を持ってないから」



笑ってしまった

可愛いことを言う


「俺の写真なんて、お前はいらないだろう」


「いらないよ。本物しか」

























「なあルーファウス、お前は白が好きなのか?」




体を重ねたあとに、セフィロスはまだベッドの中


ルーファウスは白い、大きなワイシャツをパジャマ代わりにしてワインを持ってきた



「何故?」



セフィロスは上半身を起こし、ワインを受け取る



「いつも服が白い。コートもマフラーも白かった」

「そういえばキミも白い」

「銀であって白じゃない…」

「ははは」



ルーファウスは上機嫌で

ワインを飲み終えると、ベッドに入ってくる



「あ、雪、好きだぞ。あれは白なのか銀なのか」



しかし横にはならず、膝を折って座っている



膝を抱えるような姿



「雪はまるでキミみたいだ」



ワイシャツから白い太股がのぞいている

まるで誘うように



セフィロスがそこに手を滑らせると、少し反応しながらもルーファウスは雑談を続ける



「でも、セフィロスは雪の様に冷たくないな。いや、雪があるとあたたかいか…」



セフィロスはワインを口に含み、ルーファウスにキスをして飲ませた



「ん…う…」



身体中をまさぐり、舌を這わせる




「ルーファウス、お前も白いぞ、髪も金だが色素は薄い。
目が、青いだけ。お前は綺麗だ」



「はっ…ん…ふふ」



あはは、と笑いだし、ルーファウスはセフィロスの中心に手を伸ばす



「綺麗なのは君だよ」







セフィロスのものを口に含み、手と舌を動かす

綺麗に流れるルーファウスの髪を弄りながら、セフィロスはその様子を見下ろす



ルーファウスは自分が綺麗だと、気付いていない

整った美形、いや、どちらかというと美少年か?



苦しそうなルーファウスを見ていると、急に自分が犯罪でも犯してるように思えてきた




それでも手放せなくて、セフィロスは流れる髪を撫で付ける




「お前の口の中は、気持ちいいな」


「ふふ」



「ルーファウス、こっち来い」




導こうとしても、ルーファウスはそこから動かずに続ける





「ルーファウスこら、やめろ!」





セフィロスのものから口を離さず、そのまま絶頂へ導く




「ルーファウス、っ、」



口の中に出したのは初めてで、セフィロスは慌ててルーファウスを抱き寄せた



「だ…出していいぞ」



口を押さえながらルーファウスはなんとも渋い顔をしていた



「…っう、…まずい…」



口から顎へ、白い液体が一筋流れる



「…飲んだのか」



ルーファウス口から流れたそれを舐め取り、苦笑いをして、セフィロスを見上げた



「はは、初めて飲んだ」



なんとも恥ずかしくなって、セフィロスはルーファウスを抱き締める


なんとも嬉しかった




「気持ち良かったか?」




セフィロスを見上げると、セフィロスもルーファウスを見ている




「かなり…」

「ははは」




ルーファウスはセフィロスの足の間に入り込み、胸に体を預けると目を閉じた




「眠いのか?」

「ん、ああ、少し」




セフィロスはルーファウスを抱き締めながら、髪を撫でる

ルーファウスはすぐに眠りに落ちた


そっとベッドに寝かせようとすると、セフィロスに強く抱きついて唸る



寝言のように何か囁いたが、セフィロスにはそれを聞き取ることができなかった






抱き締めたまま一緒に寝転がると、セフィロスの肩口に擦り寄り

落ち着いたのか、そのまま小さく寝息を立てる







セフィロスは微笑みながら、ルーファウスにキスをした









セフィロスの携帯には絶対ルーファウスの写真が入っている

そんな妄想でした。