これまでのお話を読んで下さってる方は、別物として考えてください
伸ばした手の先にあるもの |
「とうさんやめて!」 「静かに、静かにしろ!」 「やだとうさん!やだ!」 皮の厚い、大きな手で口を塞がれる 「大人しくしていろ!」 殴られ、ルーファウスは抵抗をやめた こわい 「声を出すなよ」 酷い痛みに引き裂かれ、涙が出た その行為には、視界を塞ぎ唇を噛む事で耐えるようになった ある日、母がルーファウスを部屋に呼んだ 「そうね、よく見れば、あなたはあの女に似てるわ 本当に、ソックリね」 「…誰のこと?」 「お父様の、好きな人よ」 母から笑顔が消えたのはいつだったか ガスの中、首を吊る母を見上げながら気を失った 「だんだんと似てくるな」 ルーファウスの抵抗が激しくなると、縛られながらもその行為は続いた 「なあ、妻以外に、おやじが愛した女を知っているか?」 唐突なルーファウスの質問に、ヴェルドは言葉を詰まらせる 「…奥様ではなく、ですか?それは存じません」 「そうか」 デスクに突っ伏し、ルーファウスはヴェルドを見上げた 「なあ…ヴェルド…」 「どうしました?ルーファウス様」 話したいことはある でもそれが言葉にならず ルーファウスは目を閉じた 「いや、なんでもない。なんでもない」 ヴェルドはそっとルーファウスの頭を撫でる ルーファウスは目を閉じながら、その手を握ると、優しく握り返される 「何がありました、ルーファウス様」 ルーファウスはその手をそっと離した 「…下がれ」 「ルーファウス様、貴方は何でもひとりで抱え込みすぎる」 リーブだって ヴェルドだって この汚い神羅をいつか裏切る あいつらは、心の底まで汚くもないし 神羅に大事なものがない 「心を許した者の負けなんだ」 「…ルーファウス、お前、慣れてるな…」 「…そういう事言うものじゃないぞ」 苦笑しながら、ルーファウスはセフィロスを見上げる 「誰だ、お前抱いたの」 「聞くなよそんなこと。君こそ誰かを抱いてるだろう」 「抱いてない。男は」 「女は、抱いてるだろう」 「妬けるか?」 「全然」 セフィロスがルーファウスの耳を噛み、舐める 「少しは妬け」 「っ、はは」 セフィロスは優しく笑って、ルーファウスを抱き締めキスをした 「お前を抱いた奴が憎たらしい」 ルーファウスも、セフィロスに抱きつき、笑う ずっとセフィロスが隣に居てくれる事を願った セフィロスとの時間は、短かった あれから、ヴェルドと会うことももう無かった 「おやじがくたばったのはいいんだが、あいつの後処理はしんどい」 リーブの前で、パソコンを睨みながら、書類の束を出す 「そんな愚痴言っちゃダメですよ」 「見てみろ、あいつの回りくどいやり方。無駄だらけでまるでおやじそのものだ」 ルーファウスは書類をデスクに投げつけ、ため息を吐く 「少しでもプレジデントを見習って下さいよ。あなたよりは会社を運営するのは上手いです」 「酷いな」 「だって、あなたが神羅の社長なんてまだ早い。普通の会社と違うんですよ?」 「あんな気が狂った奴、死ぬのが遅かったくらいだ」 リーブには、正気ではないのはどちらかというとルーファウスに見えていた ルーファウスが進む道は、自分の望む道ではないことも、気付いていた 「ルーファウス、恐怖で世界は治められない」 「人は恐怖に逆らえない」 「どうしてそう思う?」 「…考えなくても、わかる事だ。それは人間に染み付いてるんだ」 リーブはルーファウスを抱き締め、頭を撫でる 「安心しないか?」 答える代わりに、ルーファウスは目を閉じてリーブに全身を委ねる 「信用で治めろ。そのほうが、長続きするぞ」 「お前なんか、信じない」 リーブを引っ張り、キスをした 「ルーファウス、私はお前と、離れたくないな」 「私に変われというんだろう?離れる方がマシだ」 次は、リーブからルーファウスにキスをした 「ルーファウス、お前は、離れても平気か?」 「いつか離れると、思ってきたから」 「なんで」 ルーファウスをデスクに乗せ、リーブはその額を撫でた 「さあな」 離れても平気な筈なんか、ない 素直になんか言えず、心配そうに自分を眺めるリーブに ルーファウスは軽く苦笑いをした リーブが神羅から離れていく様子は、手に取るようにわかった リーブとの会話もなくなった リーブには、大事な仲間や新しい人脈ができている 自分自身のこの立場が、神羅が、もう長くないだろう事も気付いている でも私は、とまれない ウエポンの攻撃を受け、死にかけてもまだ、しぶとくまだ生きている 「無事でよかったと、思ってるよ」 そう言うリーブを見上げ、ルーファウスは穏やかに笑った ハイデッカーが、私を死んだとリーブに伝えた時に リーブは自分を一切心配はしなかった 眼中にないといった様子じゃなかったか ルーファウスはその時の音声を思い出す 「私が死んだと、思ったか?」 「ああ、心配したよ」 嘘だ。 昔からきっと、嘘だったんだ 私を、心配だと言ったことも、離れたくないと言ったことも 愛情を見せたその言葉も行動も 期待をした私が、負けなんだ 「なあツォン、君は、私の進む道をどう思う?」 離れていったみんなが、指摘した私が進む道 「照らしたいと思います」 「間違っていると、思わないか?」 「弱気な発言ですね。間違っていると、思っていらっしゃいますか?」 「いいや、思わない。ただ君の個人的な気持ちを聞きたい。 タークスとしてではなく、一個人としての」 「間違っているかいないかなど、関係ありません。あなたの進む道が私の進む道。 私には貴方が絶対なのです、ルーファウス様」 「何故」 「貴方の最も嫌う言葉でしか、説明がつきません」 「なんだそれは」 「お許しをいただけるなら、言いますが」 「…嫌な予感がする。言わなくていい」 「残念ですが、おわかり頂けている様ですね」 ツォンは、笑っていた 満足そうに 「胡散臭いよお前。昔はあんなに可愛かったのにな」 ルーファウスの言葉に、ツォンは声を上げて笑った 「昔は私を、苦手だったろう?お前ヴェルドと関係持ってたか?」 「主任と関係持っていたのは貴方じゃないですか」 「妬くな。あいつはいつだって娘とお前のことを考えていた」 「妬くとしたら、あなたが関係を持った全員に対してです」 「下手な言い訳だ」 「なぜ素直に聞けませんかね。貴方はいつだってそうだ」 「これが私だ。文句があるなら他の主人か仲間か、いい人を探すんだな」 ツォンもきっと、みんなと同じ 「ルーファウス様、貴方は」 「なに?」 「なぜいつもひとりで居ようとするんですか?線を引いて、受け入れて下さらない。 私を信じて頂けない?」 素肌のぬくもりを感じながら 甘い言葉を囁かれても もう笑う余裕が、私にはある 信じるものか、絶対に、もう 「信じているさ、君は優秀だ」 「これだけは覚えていて下さい。私は、貴方を誰より何より、崇拝しております」 「崇拝ねぇ」 「愛の言葉のかわりには、コレしか浮かびませんでした」 「そうなるともう、君の存在自体陳腐だ」 「なんとでもおっしゃい、捻くれ坊っちゃん」 「ははは」 「罵倒されてめげる私ではありません」 知っているんだツォン 君に、愛する人がいることくらい なのに私を思う素振りを見せるのはやはり 私を利用するためじゃないのか? 「君にはまだ、利用価値がある」 「有難い御言葉ですね」 「だが、もう抱くな、私を」 「…想う人が、出来たのですか…」 ツォンの黒い目が伏せられる 「さあな」 お前の恋人に、お前を、ツォンを返してやりたいだけ 私には、このぬくもりは必要無いから 「何で泣いてんの、アンタ」 「…泣いてない」 「じゃあ、そんな顔するなよ」 不器用な男 何故泣きそうな顔で私を見るのか 「アンタさ、そんなに忘れられないのか、それとも他のこと?」 泣きそうな理由?それは私の? 「別に、だが今考えていたのは君のことだよ。クラウド」 「俺?」 頼りなく、純粋な、不器用な男 セフィロスを重ねてるわけじゃない それ以前に、重ならない 「別に泣けるわけじゃない。感傷に浸ってるわけでもない」 「アンタはひとりで我慢しすぎなんじゃないか?」 「君には言われたくないな」 期待してはいけないと思いながらも 「ルーファウス、泣きたいなら泣けよ。アンタには、俺がいる」 笑うクラウドに笑って返せば 恐らく心からだろう、恥ずかしそうな笑顔を見せる 「うん」 クラウドの首に腕を回せば、見た目より力強い腕で腰を抱かれる 「ルーファウス、なにが不安?」 「何も」 「じゃあ、もっと笑ってろ」 「キミが笑うなら」 「ほらまた、泣きそうな顔だ。笑ってても泣きそうだ」 クラウドがルーファウスの目蓋にキスをして ルーファウスは横に首を振る 愛しいと、彼を求めてしまった また、繰り返すのか 泣きたいのは、悲しいからじゃないんだ |
ええと、言い訳とかはしませんー |