たいせつなおとしもの |
「社長!」 勢いよくドアを開け、飛び込んできたレノにルーファウスが目をやると レノはなにやら大きなカバンを持っていた 「ああ、レノご苦労…どうした?」 レノはルードと街の近くのモンスターが住み着いた森へ行き その巣を壊滅してきた帰りだ 「とんでもないものが落ちてたぞ、と」 差し出されたカバンを大事そうにルーファウスに差し出す カバンの口が開いていた 「これは?」 それを開くと中にいたのは赤ん坊だった 寝入っている赤ん坊からレノに目を移し ルーファウスがそのカバンをそっとレノに差し出した 「いらん」 「いらんて…」 中から赤ん坊を取り出してレノが寝かせるところが無いか辺りを見回す 「さすがに処分できないでしょ」 「親は」 「いたら返してるぞ、と」 ルーファウスが腕組をして赤ん坊を抱くレノを見る 「今ルードが親を探してる、すぐに見つかるかわからないからそれまで…」 「見つかるまで施設かどこかに預けろ」 「冷たいぞ、と」 「ここは託児所ではないぞ」 「あんな森に転がってたんだ、捨てられたのかもしれないんだぞ、と」 ルーファウスが眉間にシワを寄せてため息をついた 「…イリーナは?こういう時は女性が頼りになる」 「ツォンさんと任務で帰りは明後日だぞ、と。 とりあえず社長、どうせ暇なんだから世話は頼んだぞ、と。」 「暇では…」 そう言ってレノはソファの上に赤ん坊を寝かせると、任務だからと家を出た 残されたルーファウスは額をおさえて赤ん坊の正面に座った 「どうしろと」 ルーファウスが少し考えて携帯を手にとった 「…もしもし」 クラウドが電話をとると いつもと少し違う、少し暗いルーファウスの声が聞こえてきた 「今すぐ来てくれ。頼む」 それだけ言うと電話が切れた。 なんかあったのか? クラウドはルーファウスの元へ急ぎ、勢いよくドアをあけると ルーファウスが赤ん坊を抱いて立っていた 「な…なに…赤ん坊?」 クラウドの声が上ずる 「買い物を頼みたい」 「ちょっと待て、誰の子?」 クラウドの顔を見てルーファウスがニッと笑う 「私の子だ」 「相手誰だよ」 冗談が通じず残念そうな顔をするルーファウスに クラウドがにじり寄る 「レノがな」 「あいつとの子か!」 「落ち着け、レノも私も男だ。 レノが近くの森で拾ってきた。ルードが親を捜してるがとりあえずいま必要なのは」 真顔でクラウドを見つめ ルーファウスが口を開く 「オムツとミルク」 いまだにぐっすり眠る赤ん坊を抱きながら店に入るのに 緊張してるのはルーファウスよりもクラウドだった 「キミは孤児たちとも接してたろう?」 「赤ん坊は面倒見たことが無い」 「そうか?ちょっと、頼む」 ルーファウスがクラウドに赤ん坊を差し出すと クラウドは抱き方が分からず受け取れないでいた 「ネコを抱くようなもんでいいから」 そういいながらスーファウスが器用にクラウドにしっかりと抱かせる 「ここに手をやって」 なんか恥ずかしくなってきているクラウドを見て ルーファウスが笑った 「けっこう重いんだな」 「そうだな、重いな」 おむつ、粉ミルク、服、お尻ふき 色々なものの表示を見ながら買い込むルーファウスの姿を 複雑そうな顔で眺めるクラウド 買い物カートを押す姿がとても似合わない 「そんな表示見ただけでわかるのか?」 「サイズくらいはな」 「俺はさっぱりわからん」 ゆりかごを眺めるルーファウスがああ、と言ってクラウドを見た 「ベビーベッドも必要だな、そして布団も」 楽しそうなルーファウスを見て クラウドが微かに笑った こいつもしかして子供好きなのかな 買い物が終わった時 泣き始めた子供を抱きながら 大きい荷物をすべてクラウドに託して ルーファウスは店に備え付けの赤ん坊の休憩所に入る クラウドが車に荷物を運び込んだとき ルーファウスが赤ん坊を抱いて戻ってきた 手には哺乳瓶 「帰るぞ」 「…あ、ああ」 赤ん坊を抱きながらもルーファウスらしい態度で クラウドに命令する 運転をしながらミルクをあげるルーファウスを盗み見る こういう姿が恐ろしく似合わない… 「なんかアンタさ、慣れてないか?」 「ああ、昔こんなのの面倒を、少し見たことがあるんだ」 「赤ん坊が家にいたのか?」 「いや、孤児院」 クラウドが不思議そうな顔でルーファウスを見た 「孤児院って、アンタがいたとかそういうわけじゃないよな?」 「オヤジが作った孤児院だ」 なるほど、と納得するが ルーファウスがそこに出入りしている姿が納得いかない 「アンタ子供好きなの?」 「昔は嫌いだったぞ、うるさくて」 じゃあ今は、という質問は愚問か? そんな事を考えながらクラウドは家に向かう 「そうだクラウド、ティファに手伝いをたのめないだろうか?」 「いいじゃんアンタ慣れてそうだし、しっかりみてやれよ」 ミルクを飲み終わり、またうとうととする赤ん坊をあやすルーファウス 「父親はこんな感じなんだろうか?」 「どっちかというと母親じゃないのか?」 ルーファウスが難しそうな顔でクラウドを見る 家に着くと、ルーファウスは寝る赤ん坊をソファに置いて ベビーベッドをクラウドに差し出した 「頼む」 「…ハイハイ」 見たことも無いようなラフな服に着替えたルーファウスを眺め クラウドがどうして着替えたか聞くと スーツじゃ抱きにくいからな、と返ってきた 完成したベビーベッドに布団を敷いて赤ん坊を寝かせる 「なあ、その孤児院によく通ってたのか?」 粉ミルクを一回分ずつ小分けにするルーファウスを眺め クラウドが質問した 「ああ…少しな」 「なんで?子供とか嫌いだったんだろう?」 「ちょっとな」 クラウドがベビーベッドに寝る赤ん坊を覗き込むと 手をバタつかせて遊んでいた 「起きてたのか。あれ?この子そういえば男?女?」 「男」 「ルード、まだ見つからないか?」 あれから3日が過ぎた 「…みつかりません…」 レノがベビーベッドを覗き込み 音の出るおもちゃを鳴らしている ルードが覗くと 赤ん坊の泣き声が聞こえた 「泣かすな!顔怖いんだよ!」 すぐに抱き上げルードを蹴飛ばすレノ 「社長、親は見つかりましたか?」 ツォンが家に入ってくる ルーファウスが横に首を振る 続けて入ってきたイリーナが赤ん坊によっていく 「先輩派手に泣かせましたね」 「泣かせたのはルードだぞ、と」 「おいルーファウス、外まで泣き声聞こえるぞ」 そういって入ってきたクラウドにタークスの視線が集中した ここ数日間赤ん坊がいるこの家に タークスもクラウドも通っているのだ クラウドはバツが悪そうにオムツをルーファウスに手渡すと クラウドがレノから赤ん坊を取り上げた 「お父さん帰ってきたな〜」 笑いながら赤ん坊に声をかけるレノをクラウドが蹴飛ばす クラウドの腕の中で赤ん坊が落ち着くのを見て ルーファウスが哺乳瓶を持ってきた 「社長!私あげてもいいですか?」 輝くイリーナにルーファウスが笑いながら哺乳瓶を手渡す 「頼む」 また数日が過ぎた時 いつものようにクラウドがルーファウスの家に行くと ルーファウスがキャッキャと喜ぶ赤ん坊を黙って抱いていた 「どうかしたのか?」 「ああ、いやな、親が見つかった」 「なんでそんな暗い顔してるんだよ。返したくないのか?」 ルーファウスの隣に座り クラウドは赤ん坊を覗き込む 「この子を拾った森で、自殺していた」 クラウドの動きが止まる 「なんで?」 「わからんが、親が孤児院育ちで家族がいない」 「どうすんの?」 ため息をついて赤ん坊を撫でるルーファウス 「施設に預けるしかないだろう」 「育てれば?」 「私に育てられても幸せにはなれないさ いつ死ぬか分からない家族なんか、悲しいだろう」 クラウドが無言でいると ルーファウスが笑顔でクラウドに赤ん坊を抱かせた 「キミのバイクの音がすると、この子喜ぶんだぞ」 「社長、引き取り先が見つかりましたよ」 数日後、ツォンが電話を片手にルーファウスに話しかけた ルーファウスは果汁を作りながらそうか、とだけ返事をする 「…離れがたいですか?」 返事の無いルーファウスに、ツォンが続けた 「ひと月以上も一緒にいましたからね」 「何故子供を残してこの子の親は死んでしまったのだろう」 「わかりかねますが、大きな理由があったのでしょう」 「いつから入れるんだ?」 「明日にでも」 「ルーファウス」 翌日の朝、クラウドが家に入ると元気な赤ん坊を抱き上げた 「お帰りパパ」 「パ…」 赤ん坊の服を畳み、 ルーファウスが荷造りをしている 「今日預けてくるのか?」 「ああ」 「これも入れてやってくれママ」 「マ…」 クラウドから差し出された 「これキミのバイク?」 「の、縮小版だけど」 「作ったのか?」 「違うの改造した」 「器用だなー」 まじまじとミニカーを眺めるルーファウス 荷造りの後、最後に大事そうにそっとカバンにしまった 「行くのか?」 「もう少し」 赤ん坊を抱くクラウドの横に座り ルーファウスが赤ん坊を撫でる 「なあクラウド、キミのお母さんはどんな人だった?」 「…普通の母親だったんじゃないかな?怒るけど優しくて」 「普通?」 「アンタの母親は?」 「死んだよ」 「…どんな人だった?」 「…忘れてしまった」 「なにも覚えてないのか?」 ルーファウスが天井を見上げて目を閉じる 「いや、覚えてることもあるけど断片的すぎてわからない」 泣き出した赤ん坊をルーファウスに渡し クラウドが席を立った 「ミルクの時間?」 「ああ、頼む」 少ししてツォンがドアを開けた 「お時間です」 孤児院に到着し ツォンが手続きを済ませるまで 赤ん坊を抱いて待機するクラウドとルーファウス 手続きが済むと ルーファウスがそこの職員に赤ん坊を渡し クラウドが荷物を渡す 「よろしく頼む」 「行きますよ社長、クラウド」 翌日、クラウドが天井を眺めながら 昨日の今日で寂しいだろうな そんな事を考える 「行ってやるか」 いつものドアを開けて家に入ると スーツ姿のルーファウスがデスクに向かって座っていた いつもの姿 既に部屋には赤ん坊が居た色は無い 「やあクラウド」 ここのところラフな姿ばかりしていたルーファウスに見慣れてはいたが やっぱりこれがルーファウスらしい姿だと思うと、クラウドがフッと笑った 「泣いてないかと思って来てやった」 「それは優しいことで」 書類にサインをしてから立ち上がり ルーファウスがクラウドの前に寄ってきた 今頃何してるかな そろそろミルクの時間だな そんな事を思いながらクラウドがルーファウスの手を握った 「なにやら物寂しい気がしないか?」 そう言って眉間にしわを寄せるルーファウスを抱きしめ クラウドは額にキスをする 「久しぶりに二人きりの時間な気がしないか? ココのところ泣いて邪魔されてばかりだったし」 ルーファウスが笑いながらクラウドの肩に頭を預けた 「アンタそんなに子供好きならどっかからもらえば?」 「普通作れといわないか?」 「だってアンタ産めないだろう」 「当たり前だ、産ませる方だぞ私は」 「アンタが女と暮らすなんて耐えれるのか?」 「どういう意味だ」 「愛が無いだろアンタ」 「失礼極まりない」 「死ぬ心配が無くなったら、落ち着いたらもらえばいい」 「そうか?」 「ああ、俺が父親になってやる」 「私は」 「ママ」 「抗議する」 ルーファウスがクラウドにキスをする その時ツォンが入ってきた 「あ…」 ツォンが真顔でクラウドを睨む 「また邪魔が入ったな」 クラウドが手を離すと ルーファウスも笑いながらクラウドから離れた 「社長、報告書です」 「ああ」 書類を受け取り ルーファウスがイスに座る いつもの風景 いつもの空気 |
ルーファウス小切手で寄付も忘れてないことでしょう なにってわけではなく、まず赤ん坊をあやすレノが頭に浮かんで そうするとルーって赤ん坊どうよと思うと激しく似合わなかったので 少しだけ書いたら書き上げちゃった なにを伝えたかったというわけではない中身の薄い小説 ということで失敗作行き決定 |