故郷 |
「足元気を付けろよ」 細い手を引っ張り上げると、ルーファウスのもう片方の手も俺の手に掴まる ルーファウスが隣に立ち、崖の上から景色を見渡す 金色に光る海面に太陽の影が揺れる 「…これが…」 片方、手を繋いだまま ルーファウスがその景色に見惚れる 「これが私に見せたかったものか…」 「そうだ、明日からまた任務でここを離れるからな、その前に見せたかった」 ゆっくり俺を見上げ、薄い笑みを見せる 「気に入ったか?」 「ああ、…綺麗だ」 美しい朝焼けは、気に入ってもらえたようだ 握りっぱなしの手の甲にキスをする 朝日を浴びながら、ルーファウスは微笑む 指先まで唇を滑らせると、ルーファウスは微かに身を捻り、手を引いた 「くすぐったい、馬鹿者」 自然な笑顔が眩しい 俺も気付かないうちに、笑っていた また手を握り、座り込むと ルーファウスもつられた様に座った ルーファウスは繋がれた手を解き 自分の膝に手を乗せた 「なあルーファウス、俺には故郷とか、誰かが待っていてくれるという場所がない」 ルーファウスは眼下に広がる景色を眺めながら、ふっ、と笑った 「故郷ねえ…」 「俺も帰る場所が、欲しいと思うことがある。誰かの待つ場所…その安心感」 「そんなもんかね」 人に執着なんかした事が無かった 初めての感情 「なあルーファウス、お前が、俺の帰る場所になってはくれないか?」 ルーファウスの前では感情を出せる安心感 でもこれを断られたら俺は そう思った矢先、ルーファウスはははっ、と笑って俺を軽く叩いた 「なんかキミが言うと歌の歌詞か映画のセリフみたいだ」 「なんで」 「キミはまるで自覚が無い。キミは英雄と言う点を除いても、魅力があるから」 「で、答えはNOということか?」 ああ、と 何かを思い出したような発音で声を出し 俺を見上げるルーファウス 「何故、私がキミの帰る場所になることを望むんだキミは」 愛や恋という言葉ではなく、違う言葉で答えねばならない でもそれは簡単なこと 「お前といると、安心するからだルーファウス。 お前だけが俺に安らぎをくれる」 ははっと笑ってルーファウスが、笑う やっぱり映画みたいだな、と笑う 「そうだな、あとは、お前は俺を前向きにさせてくれる」 「まさか」 「生きていたいと思わせてくれる」 「なに、死にたかったのか?」 「いいや、生きる目標が曖昧だった。 それが初めて守りたいものが出来た、お前だ」 ルーファウスが片方だけ眉を上げて俺を見て そしてまた笑った 「馬鹿な」 俺はいたって真面目な顔をしてルーファウスを見た ルーファウスの口元からも笑みが消えた 「お前はどれだけの傷を隠してる? お前は社交的ではあるが、人を寄せ付けない。孤独だ」 「確かに、人を簡単に信用するタイプではないが、孤独ではないよ」 そして派手に俺の肩を叩いた 「だって今はキミがいる、そうだろう?セフィロス」 だからもうキミも孤独ではないんだろう? そういって笑ったルーファウス 気持ちが、通じてそして受け入れられたんだと思った ルーファウスが俺の顔を見て ニッと笑う 「泣くなよ」 「俺には、初めての感情だ、お前に対するこれは」 泣きそうだった 受け入れられたんだ、俺は 「私にも、初めての感情だがね」 ルーファウスから、手を握ってきた 「キミは昔から涙腺がゆるいのか?」 俺を覗き込むアイスブルーの瞳 「いいや、お前といるときだけ、だから、安心してるんだろう、俺は」 「仕様がない奴だ」 俺を抱きしめて頭を撫でる細く頼りない手 これが、俺に安らぎを与えてくれる 「セフィロス、無傷で帰って来いよ」 「ああ」 ルーファウスの目の端に微かに涙が滲んでいた 「どうした?」 「いいや、すまない朝が早かったもので欠伸を」 「ムードない奴め!」 「ははは!」 すっかり明るくなった早朝の空の下 笑いあった |
ただ、ルーファウスは自分を帰る場所にしたセフィロスが嬉しかっただけ。 自分でもそう思われるということに泣けた。 だってもう大好きになってるから。 |