make love









厳粛で神秘的な教会

美しいステンドグラスから光が差し込む


美しい歌を歌う

美しい子供が居た


そのステンドグラスを通ってきた光に照らされた子供は

その存在自体が奇跡のようだった

救われる気持ちだった



あれは誰かの葬儀だった気がする


ならばあれはレクイエム?








やけに記憶に残ってる










「昔この教会で歌を聞いたんだ」



ルーファウスにあの教会を指さすと

ルーファウスはそこを見上げた



「セフィロスが教会?」


「似合わないか?」


「私より似合う」




あの歌う子供とルーファウスが重なったのは

白い服と金の髪のせいだろうか



「ルーファウス、お前はここに来たことは?」



俺を見上げて、ルーファウスは眉毛を片方だけ上げた




「記憶に無い」




それもそうだ、そもそもきっとあの子供はもっと心清らかだろう



「賛美歌とかは歌えるか?」


「歌わない」



「歌わないとは?」


「訂正する、歌えない」


教会は苦手だ、とその場を足早に通り過ぎるルーファウスを追いかけた




「お前はあまり自分のことを喋ってくれないな」


「大して歴史のある人間じゃないぞ私は」


「それでもいい」


「じゃあキミから喋ることだ」


「何を喋ればいい?」



ルーファウスがひらりと優雅に振り向く



「面倒くさい奴だな」



「酷い言い草だ」



ルーファウスの手を引っ張り

俺は教会へ向かった



「離せ無礼者!」



「どうせ今日はもう仕事が終わりだから
寄り道もいいだろう」


「一人で行け」


「イヤだ」





重い扉は閉めきられ

開く気配が無い



「入れないのか?」


扉に話しかけるな、とルーファウスが俺を叩いて歩いていった


帰り道ではない方向なので止めずについていくと

ルーファウスが庭に居た牧師と話している



すぐにあの重い扉が開いた



「開けてもらえるものなのか?」


「ここはウチの持ち物」



なるほど、と呟きながら中に入る



ルーファウスが一番後ろの席に座ると

牧師がルーファウスの傍に寄ってきた



「坊ちゃん、よく来た。ゆっくりしていってください」


「顔色が悪いな」


ルーファウスの表情が穏やかになっている



「私はもうすぐこの世のものではなくなります」



ルーファウスが牧師の手を握ると

牧師がルーファウスに優しく微笑みかけた



「また歌ってくれますか?」



「…昔みたいに声は出ないけど」



ルーファウスが上着を俺に預けて


パイプオルガンの前に座る


何か少しいじって少し音を出して動きを止める





「よく見ていなさい」


牧師がルーファウスを眺めながら俺に言った







それは俺には既に人には見えなかった



あれがあのルーファウスだろうか


なにか乗りうつってるに違いない


上流階級のお嬢様お坊ちゃまはみんなこうなのか?



「あの方はお母様の影響が色濃いのです。
おそらくご自分でも気付いてはいないでしょうね」



「・・・昔ココであんな感じの子供が葬儀かなにかで歌ってるのを…見ました」



「おそらくお母様の葬儀でレクイエムを歌った彼でしょう。
貴方もあの時ここに居たから」



俺は口を開いたまま牧師を見て

ルーファウスを見た




短い曲が終わり

ルーファウスが優雅に歩いてきて

牧師と握手と会話をしている



俺は何を話しているのかわからずに

頭がまだはっきりしなかった






車に戻るとルーファウスが俺の頬に冷たい缶コーヒーをつけた


「つめてっ」


「なにをボーっとしている」


目の前にいるいつものルーファウス

俺は確かめるようにその頬を撫でた


「お前は…ヘンな奴だな」

「嬉しくないな」



抱き寄せ、見つめる



「な、なんだ」


腰が引けているルーファウスを見つめる



「綺麗だとか言われないか?」

「お世辞は言われ慣れている」

「それはきっとお世辞じゃない」

「君こそ綺麗と言われないか?」


「言われても、思うことが少ない。だが、お前は綺麗だ」


唇を親指で撫でる


「…なんだ」

「キスしていいか?」



固まるルーファウス



「そ、それは初めて言われた」


「いいか?」

「…い、いや、困る」



ルーファウスの顔が強張る



「オイ、セフィ…」



そのままキスをすると

ルーファウスは驚いて缶コーヒーを落として


唇を離した



「ちょっ、何やってるんだ!」



もう一度強引に引き寄せて

口の中に舌を入れると

ルーファウスの身体が固まった



次の瞬間頭を思い切り殴られた



「いって…」


「何を考えてる何を!!」



顔を真っ赤にしてルーファウスがフロントガラスを指さした



「ここは人も通るのは覚えていたか?」


「考えてなかった」



頭を抱えてうなだれるルーファウスを抱きしめようとすると


その手を叩かれた



「お前男だろう?」


「そうだが」


「私は男だぞ?」


「そうだな」


「じゃあなぜそんなことする必要が?」


「してはいけいないと言われてないし」



落ちた缶コーヒーを開けて

ルーファウスが一口飲んで「苦い!」と怒りながら俺に突き出した


ああもうこの姿すら愛しい



「ダメなことだろうか?ルーファウス」


「当たり前だ」


「なぜ?」



俺がルーファウスをじっと見ると

ルーファウスがまた頭を抱えた



「ファーストキスだ」



俺の顔は相当緩んでいたと思う


コーヒーをホルダーに入れてルーファウスを抱きしめると

猫が威嚇するように俺を拒否した



「やめれやめれやめれ!」


「我慢できない」


「わーっ!」



キスをしようと迫る俺の口と自分の口の間に

ルーファウスはそこにあった地図で仕切ってキスをかわした



「…場所を移動したらいいのか?」


「おまえ怖いから」



警戒するその姿すら愛しい


「わかった」


「な、なにをだ」



俺は車を発進させた


















「ここは?」



高層マンションを見上げるルーファウスを無理矢理引っ張って

招き入れた



「俺の家が上にある」


「か、帰らせてもらう!」


「嫌がることはしないから」



抵抗するルーファウスをあまり力も入れずに家に連れ込んだはいいが

自分の家にいるルーファウスを見て俺が緊張してきてしまった



「悪くない住まいだな」



ここで普通なら眺めがいいとか騒ぐのにな



「何か飲むか?」


「…アルコール以外」


「ブラックのコーヒーとワインどっち?」


「水!」



勝手に冷蔵庫をあさるルーファウスの姿を好ましく思って

つい笑いが零れた



どっかりと3人がけのソファの真ん中に座る

ルーファウスの態度の大きささえ愛しい



「俺病気かな?」


呟くとルーファウスが手招きをした


隣に座ると、俺の額に触れる

細く冷たい頼りない手



ドキっとしたのは俺だ



「熱は無いが、どっか悪いのか?」


「キスをしなおさないか?」



飛んできたパンチを軽くかわして

少し押し倒し気味にルーファウスに近づく



開かないルーファウスの唇に唇を重ね

舌を絡ませる



ビクッと身体を反応させ、必死で後退るルーファウスの腰を抱き

その綺麗な金髪を指で梳く



「んっ…は…」



唇が離れ、目が合う

頬を紅潮させるルーファウス見つめると

ルーファウスが半分睨んだ顔で俺を見た




「男相手に何してんだ」


「意識し出したら止まらなくなった」


「意識?…私を?」


「ああ、ずっとしたかった」






額にキスをすると


ルーファウスは諦めたように身体の力を抜いた



「キミは男がいいのか?女じゃなく」


「お前がいいんだ。男にこんな気持ちになったのは初めてだ」



複雑そうな顔でルーファウスが俺を見上げる



「何故」


「理由なんてないのかもな」


「私はキミを抱く気も抱かれる気もない」


「すぐには奪わないよ」



「うばっ…」



ルーファウスがため息と同時にソファから器用に降りて俺から離れた



「ルーファウス、キスは俺が始めてって本当か?」



ルーファウスは不満そうに俺を見る



「他の男に抱かれた事もまだ無い?」



勘弁してくれと言いたそうな顔で向かいのソファに座った



「きっと疲れてるんだ。セフィロス、キミに休暇を手配する」


「お前も同じ日に休暇を取るなら休む」


「私は、し・ご・と・だ!」




少し時間が経ち、ルーファウスが帰る、と立ち上がる


「泊まって行け」


「…いや、遠慮する」


「何もしない」


「したじゃないか!」


バシリと額を叩かれた

もうそれすら愛しい















翌日出勤すると、本当に次の日に休みが入っていた



副社長室は無人だった



逃げたな?






「ザックス、副社長を見なかったか?」


「あ?どした?」


「野暮用」


「セフィロスが野暮用ってなんか…喫茶にいたぞさっき」


「そうか」






喫茶にはルーファウスがいて

ツォンまでいた



「何してんだ?」


二人の席に行くと、ルーファウスがマフィンを噴き出した



「ルーファウス様…」


「いきなり何だ君は。驚くだろう」



呆れた態度の不機嫌そうな顔


今、慌てたよな?言ってやりたかった



「仕事の話をしていたが終わったので失礼」



ツォンがルーファウスに挨拶をして行こうとすると

ルーファウスがツォンを呼び戻した



「この資料を社長室に」


それを受け取るとツォンがルーファウスに優しい目を向けた


「ルーファウス様、明日はゆっくりお休みくださいね」



明日ゆっくり?



俺はツォンが退いた席に座り

ルーファウスを見る


「明日は休みか」


「久々にな」


「わざとか?」


「わざととは?」


「明日俺を休みにしただろう?」



今度は紅茶を噴き出しそうになるルーファウス

悪いが見てて飽きない



「明日休みなのか?」


「そうです副社長」


「それは知らなかった…なんだ休みあったんじゃないか」


「いや今日急に決まっていたぞ。お前じゃないのか?」


「私はセフィロスに近いうち余分に休みを入れることを指示しただけだ。
いつ休むかなんて私が勝手に決められないぞ」


「運命か」


「偶然だ」


「必然だな」


「偶、然、だ」



資料を眺めるルーファウスの陶器のような綺麗な顔に手を伸ばす


「…今日はうちに泊まるか?」



一気にルーファウスの顔が青ざめる


素直な奴め



「断わる」


「食事は?」


「断わる」


「お茶でも」


「今してる」


「じゃあキスしよう」



テーブルに思い切り額を打ち付けた



「痛くないか?」



上げた顔


額を撫でるとルーファウスが大きくため息をついた



「ディナーでもどうだ。キミとはもう少し話し合いが必要らしい」


















とてもお偉いさんらしい店の個室に通されて


俺はルーファウスと向かい合って座った


芸術のような食事が次々と運ばれてくる





「話し合いが必要だって?」



「あのなあ、あんな場で普通あんな事したり言ったりしないぞ」


「どんなこと?」


「顔を触ってみたり…キスしようとかあり得ないだろう」


「男同士だからか」


「男女でも」



ルーファウスが食べ物を口に運ぶ仕草を見る

それすらもまた



「男だとお前の特別にはなれないか?」


「心配しなくても既にキミは特別だ」


「どういう意味で?」


「優秀なソルジャー」


「特別じゃないぞそれ」



ため息をついてテーブルに突っ伏す俺を見て

ルーファウスがあははと笑った



ああ、この笑顔はあどけなさが抜け切っていないな



「諦め切れん」


「いいから食え英雄」






酒も少し入ったのに、サクっと帰るといわれて

ルーファウスは車を呼ぼうと携帯を出した



「送るから」


「いいい、いらない」


「なにもしない、送らせろ」


「…情けない顔だな」



呆れたように笑って携帯をしまう



「わかった、では頼むよ」



これではどちらが年上なのか








さてと車に乗り込みゆっくりと走らせる



「遠回りしてるな?」



ニッと笑うルーファウスが座席を少し倒し

腕を伸ばした



「いいさ、明日は予定も無い」


「俺も無いから映画でも」


「行かないぞ」


「遊園地」


「子供か」


「ホテル」


「却下」




ゆっくりと夜景の綺麗な場所に車をとめる



「おお」



窓からその景色に気付いたルーファウスがさっと外に出た



「綺麗な場所だな」


「お前に見せたかったんだルーファウス」



ルーファウスが俺に笑顔を向ける

それが罪だとわかっていないだろう



「ルーファウス、俺は」

「口説くなよ」



ニッと笑いながら夜景を眺める



俺は後ろからルーファウスを抱きしめる

ルーファウスが手の甲で俺の顔を殴った



「恋人を作れセフィロス
きっとキミには彼女が必要だ」



「…お前は?」


「私はいい、女とベッタリは御免だ」


「いや、恋人はお前がいい」



「今のままでは不満か?
上司と部下以上の関係じゃないか」



俺は草の上に転がり空を見上げた



「キスは?」


「それには拘るな。無くても死なない」


「死んでしまう」


「寝るな!死ぬぞ!」


転がる俺の腕をルーファウスが笑いながら引っ張る




「うわっ」


その腕を思い切り引っ張って抱き寄せる



「少しこうしてたい」


「…なにもするなよ」



腕の中におさまるルーファウスを抱きしめる力が

無意識に強くなる


ルーファウスは何も言わずに黙って空を見上げていた










「着いたぞ」


ルーファウスの自宅の前



「ご苦労だったな」



サクっと降りるルーファウスを目で追った



俺に手を振り背中を向ける




あいつにとっては部下だよな


それだけなのか



ハンドルに頭を預けながらちらりとルーファウスの自宅を見ると

灯りがついて、窓が開く



俺は車から降りてその窓を見上げた



「ゆっくり寝ろよ英雄」


「名前で言え副社長」



あははとルーファウスが笑う



「おやすみセフィロス」


「…おやすみルーファウス」



男同士はやはり罪だろうか



ルーファウスが頬杖をついて俺を見ている



「見送ってやるから帰れ」


「帰りたくない」


「いい人紹介してやるから」


「おやすみのキスだけ」



ルーファウスの腕時計がゴッ、と鈍い音で俺の頭に直撃した



「そういうこと言うな」



「抱きしめたい」


「頭ブチ抜くぞ!」



二階の窓から身を乗り出して今にも飛び出しそうなルーファウスが

おかしくて仕方ない



「わかったわかった、コレを人質にするから明日取りに来いよ」



俺はルーファウスが投げつけた腕時計を見せる



「それはやる。気に入って二つ買ったんだが、ひとつキミにプレゼントだ」



「…期待していいのか?」

だってお揃いなんだろう?


「いい人を紹介するって言ったろう?」


「ルーファウス神羅を紹介してくれ」



悪戯っぽく笑うルーファウスがそれはダメだと首を振った



「もしかしてルーファウス、お前はほかに誰かいるのか?」


「ちょっと待て」



ルーファウスが窓を閉める



少ししてから家から出てきた



「話し足りないか」


苦笑するルーファウス



「ああ、もっと話したい」



「キミは目立って仕方ない。入れ」


一人暮らしにしては広すぎる玄関に入る


「…俺を家に招くということは…」


期待が少し膨らんだ瞬間

ルーファウスが俺の首に片手だけ回して、少しだけかかとを上げて

俺に優しいキスをした



離された唇



俺が何もいえないでルーファウスを見ていると


ルーファウスは笑ってあとはもう何もするなよ、と言って家の中に進んでいった



恥ずかしさに耐え切れずに俺はしゃがみ込んだ



そんな俺を、ルーファウスが部屋から顔を出して見た



「そういえばさっきの話だが、そうじゃないんだ」



「…なんの、話だっけ」



間抜けな俺の姿をルーファウスが笑う



「ほかに誰かいるのかとキミが聞いた。その答えだ」




じゃあ、誰か思いを寄せる相手がいるわけではないというんだな?




「じゃあルーファウス、俺にも望みは…」


部屋に入るとラフな姿の
といっても上着を脱いだ姿だが、ルーファウスが居た



ルーファウスは俺にミネラルウォーターを差し出しながら首をかしげる



「なぜ私なんだ?」


「…人を好きになったことはあるか?」


「無い」


「じゃあわからないかもな。好きになるのに理由なんか無い」



俺はミネラルウォーターを頬に当て

深呼吸をした



「この感情は罪だと思うか?迷惑か?」



ルーファウスがわからないと首を横に振る


「少し困惑はするが、迷惑じゃないよ」


「よかった…」


俺はルーファウスの肩に頭を乗せる



ルーファウスがその俺の頭に頭を乗せた



気持ちが高ぶって

何故か涙が出そうになる

何故だろう



「なあルーファウス、キスは嫌か?」


「…私もさっき、キミにしたから、きっと嫌ではないんじゃないかな」








それから他愛も無い話をして


酒も飲まずに普通に笑って過ごした





帰り際俺がルーファウスの額にキスをすると


ルーファウスは困ったように笑って俺の胸を叩いた































教会の神秘的な美しさも
ルーファウスには敵いません。
ウエッヘッヘッヘ。

はじめてのチューでした。

おかしいのは私の頭の中だと気付いた

題名決まらなかったから恥ずかしい題名にしてみた