特別な人















「どうしたものか」



首をかしげため息をつくルーファウスの前に


セフィロスが寝ていた



副社長室のソファでのびのびと、それはもう気持ちよさそうに
窓から降り注ぐ夕日を浴びて寝ている




もうセフィロスはとっくに帰宅している時間で


ルーファウスは今、仕事から帰ってきたばかり


何故副社長室にセフィロスがいるか、さっぱり見当が付かなかった




とりあえず書類等を整理する為にデスクに向かう





一時間ほど経ち、何か飲み物をと思い電話を取った


いつもならここで「何か持って来い」と誰かに持ってこさせるところだ




いまだにぐっすり眠るセフィロスに目をやり、電話を置いて

部屋にある冷蔵庫を開けた



「…缶コーヒー、誰のだろう」



その缶を手にとって眺めて

誰のでもいいやと封を開けた



「ニガイ…」



セフィロスの寝てるソファの隣のテーブルにその缶を置いて

新たに冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した



デスクに向かい、また仕事を始める






また数時間経った頃

セフィロスが目を覚ました



ふとデスクを見ると、ルーファウスが頬杖をついて寝ていた





窓の外は真っ暗




「帰ってきてたのか」




起き上がると目の前に缶コーヒーが置いてあった


「飲んだのか」


その缶コーヒーを持ち上げると

セフィロスが買った時と重量が変わらない


「苦かったか…」


苦い顔のルーファウスを想像して笑って

それを飲んだ



セフィロスがデスクで寝るルーファウスの傍へ向かい

額にキスをする



「お帰り」


ハッと顔を上げるルーファウスが自分の額を触った



「…ただいま」



セフィロスは笑いながらルーファウスの頭を撫でた


「仕事終わったのか?」


「ああ、済ませた」


そう言うとルーファウスはデスクの上の書類をしまった



「明日休みなんだろう?」



「ああ、一応な」



「オレも休みを取ったぞ」



笑いながら言うセフィロスの顔を見上げて

ルーファウスは困ったような顔で笑った


セフィロスは
ルーファウスが嬉しさを表現するのが上手くないのを知っている




ルーファウスの視界にテーブルの上の缶コーヒーが映った

「缶コーヒー、お前のだった?」

「ああ、お前飲んだか?」


「飲めなかった」


「何故?」


「マズくて」



セフィロスは楽しそうに声を上げて笑って

苦かっただろう、と言った



ルーファウスが苦い顔で

あんなものよくのめるな、と言った




さて君はこの後どうするのか、とルーファウスが腕を伸ばす


セフィロスはゆっくり手をルーファウスに差し出す



「俺の部屋かお前の部屋、どっちがいい?」



腕を伸ばしたままルーファウスが笑った



「帰るの面倒になるから私の部屋で」









「セフィロス、何であそこで寝てたんだ?」



「副社長が帰ってくるからお待ちしてたんだ」



「寝てか?」



「予定到着時刻より1時間は待ったぞ、なにしてたんだ?」」



「汗かいたからシャワー…」


「なにした」


「仕事」



「誰、どんなヤツとどんな仕事だよ」



「何考えてるんだよお前は」



車を運転するセフィロスの頭を小突くと
セフィロスが笑った




「食事でもしていくか」

というルーファウスの言葉に

セフィロスが笑って、副社長のおごりですか?と聞いた


勿論出させるつもりはないのだけれど








「お前、少食だよな」


セフィロスはルーファウスの食事の量が不思議らしい

体を使った仕事なので
セフィロスの周りは大抵普通より量を食べる人が多い


「お前が食べすぎ」


力を使う仕事ではないルーファウスにしてみれば

その量が異常だ!という



「もっと食べないと大きくならんぞ」


「大きなお世話だ」



そんな他愛も無い話がいい












ルーファウスの家につくと

先に電気をつけたのはセフィロス



ルーファウスはそのまま上着を脱いでソファウでくつろぐ




「疲れたか?」


セフィロスがシャツ一枚に着替え、ルーファウスの隣に腰を下ろす


「いや、お前は?」


「平気だ」



お前もラクな服着たら?と言われ立ち上がるルーファウス




隣の部屋で着替えながら

セフィロスの疲れた顔を思い出す


明日の休みのために頑張ったんだろうな…


休みを取ったというセフィロスの顔を思い出して

ルーファウスはまた笑ってしまった



ソファを見ると、セフィロスの後姿が見える



「あ…」



ルーファウスはそっと近づいて、セフィロスの顔を覗き込む



「寝てやがる」



小さく笑って

こいつ抱き上げてベッドまで運ぶ力なんか自分には無い

そう思ったルーファウスはセフィロスをゆっくりソファに寝かせて

毛布をかける




疲れてるな、と思いながらセフィロスの寝顔を眺める




セフィロスの手を見ると

厚くなった皮に、傷がある

それでいてきれいな手



戦う人の手は綺麗だな


私の手は苦労を知らないな




暇になったルーファウスがライフルの手入れを始める



「銃は殺す道具だが、お前は人は殺すな、守るためだけに使え」



セフィロスの言葉を思い出す



手入れを終えると

付きっぱなしのテレビを消し

立ち上がる




さてどうしようか

まだ眠くない




そっと家を抜け出し、歩いて10分程度の場所にある店に行った



コーヒー、自分に紅茶、それと疲れてる体にいいものはなんだろう

考えながら果物を買った


店のラジオから神羅カンパニーのCMが流れた







帰り道、家の前で少し座り込んで空を見上げた




風が冷たくて身震いするくらいが心地よかった



なんか憂鬱だな




父のこと

仕事のこと



不満が多すぎた



私は何をやってるんだろう


私は会社に必要か?




特別な立場でも

そこまで特別な仕事をしていない





ぼーっと考えていると

そろそろ寒くなって立ち上がる




するとセフィロスが走って出てきた




「ルーファウス!」



「起きたのか?」



焦ったセフィロスの顔に

ルーファウスが首をかしげる



「そんなに慌てて会社に呼び出されでもしたか?」



セフィロスが安心した顔をしてすぐ、眉間にしわを寄せた



「お前が勝手にいなくなるからだ」



ルーファウスが困ったように笑ってセフィロスを撫でた


「不安だったか?すまんな」



「おい!」



ルーファウスがセフィロスに買い物袋を渡して
さっさと家に入っていった

セフィロスもすぐ後を追った




「おお、コーヒー買ってきたのか、酒は?」


「それは常備してる」






ルーファウスが果物を切りながら

テレビのチャンネルを変えるセフィロスにコーヒーか酒か?と聞くと


セフィロスが振り向いて酒、と言った



目を離さないセフィロスにルーファウスが何だと聞くと

セフィロスが笑った



「なんか夫婦みたいだな」


エプロンくらいしてみろと言うセフィロスに

ルーファウスがリンゴをぶつけた

勿論避けることも出来たけど







テレビを眺めながら酒を飲んでいると

ドラマで教会と新郎新婦が出てきた


「綺麗だな」

セフィロスの言葉にルーファウスが疑問に思う

「何がだ?」


「花嫁」



ルーファウスが興味深げにセフィロスの顔を見た

セフィロスもルーファウスを見て目が合うと

セフィロスより先にルーファウスが口を開いた


「お前あれ着たいのか?」


「殴られたいか」


「それは勘弁してくれ」


もう一度テレビを見てルーファウスがあぁ、と声を上げる


「こういう女が好みなのか」


「違う」



ルーファウスが果物を手にとってセフィロスを見る



「じゃあ、どういう女が好みだ?」


セフィロスは困った顔でルーファウスを見る


「…生意気で金髪でアイスブルーの目で、髪の短い短気な副社長」


思わず果物を噴き出すルーファウスをセフィロスが小突いた


「汚いですよ副社長」


「オマエが悪い」



「じゃあお前はどんな女が好みだ?」


ルーファウスが眉毛を片方上げて動きを止めた



「そうだな、私よりも権力のあるヤツ」



「じゃあ男の好みは?」

不満そうなセフィロスがまた質問をした




眉間にしわを寄せてルーファウスがセフィロスを見た


こいつ絶対自分だって言って欲しいんだ


そんなことを考えながらルーファウスが口を開く



「従順な使えるヤツなら誰でも」


「誰とでも寝るのか」



ルーファウスはセフィロスを力いっぱい殴った




テレビでは誓いの言葉が流れる




「なあルーファウス、お前家庭を持ちたいか?子供欲しいか?」


呆れた顔でルーファウスはテレビから目を離す

「面倒臭い」



「…オレは面倒か?」



「お前は女じゃない」




何気に真剣な顔でいるセフィロスを見て

ルーファウスは考える


あぁそうか、こいつ家族に憧れないはずないよな




「でも、面倒か?」


「あまり聞かれると面倒になるが、居心地のいいヤツだよお前は」



ワインを飲み干し

空のグラスをセフィロスに見せると

セフィロスが無意識に注ぐ



「プレジデントは子供が好きか?」



新しくグラスに入ったワインを回し

一口飲むと

ルーファウスがため息をついた



「それは知らないな」


興味も無いし、と付け加える




教会の鐘が、テレビから聞こえる




「お前、もしかして結婚する予定があるのか?」


ソファにもたれて、ルーファウスが聞く

もしそういう相手がこいつにいてもおかしくはないよな、そう思って出た言葉



「男と結婚できるかな」


「聞いて損した」


「真面目に聞け」


「聞けるか」



セフィロスがルーファウスの手を握る



「そんなにオレとの関係が知れるのがイヤなのか?」

「当たり前だ!」



セフィロスは別にオープンにしても、と言うが

ルーファウスは絶対イヤだ、と言う


「仲間にも言ってはいけないのか?」


「私の立場も考えてくれないか?」


セフィロスが困った顔でルーファウスの手をいじる


セフィロスが親しくしてるほんの何人かには

セフィロスの言動と行動でバレているからだ



「どうしてもダメか」


「知られたらもう会わないからな」


「自慢したい」


「自慢にならないし」


「プレジデントに言ってもいいか?」



この冗談はルーファウスには通じず
ルーファウスはセフィロスの手を振り払ってソファから離れてしまった



「この話は終わりだ。下らない」



セフィロスがじっとルーファウスを見る


視線を感じて振り返るルーファウスは

睨まれてる気になった



「なんだよ」



セフィロスがすっとルーファウスの目の前まで行き

掴みあげてベッドに放り投げた



「この関係は、好きとかそういう、そんな感情微塵も無しなのか?」



簡単に組み敷かれたルーファウスが見下すように笑う



「言う必要があるのか?」



「言葉は大事だ」



「私には必要の無いことだ」



ぐっと自分の唇を噛むセフィロスの

その口をルーファウスがじっと見る



「お前は誰とでも寝れるのか?」



言葉も感情も、オレには必要ないのか?

そう思うとセフィロスはなんだか無性にやりきれなくなった


ルーファウスがそんな感情を口に出さないやつだとは知ってても





「不愉快だ」


避けろ、と低い声でセフィロスを睨むと

セフィロスは強引にルーファウスの唇を奪った




「やめろセフィロス」



抵抗するルーファウスの腕をベッドに押さえつける



「やめろといってるんだ!」



服を脱がせ、胸に口付けるセフィロスに

どんどんルーファウスの口調が強くなる




ルーファウスの耳の下に噛み付いて

セフィロスがルーファウスを見る



「お前にはオレだけじゃないのか?」




ルーファウスの顔がかたまる



「お前は他のヤツとも寝るのか!オレはお前だけだ!」



そのままセフィロスがベッドから降りて家を出た




「なんだよアイツは」



ルーファウスが額を押さえて少し考えて

セフィロスの放置されていたキーを掴んで

セフィロスをおいかけて外へ出た



「待て」


すぐそこでセフィロスを簡単に見つけたルーファウスが

呼び止める



セフィロスは振り向かずに立ち止まる



「勝手に誤解してないか?私は何も言ってないぞ」



車のキーをセフィロスに投げつけると

セフィロスが振り向いて受け取った




「私が、お前といる時だけは楽しそうだと思わないのか?」



それだけ言うとルーファウスは中へ入った




セフィロスは車の横に座り込む


投げられたキーは車とセフィロスの家のものと、ルーファウスの家のもの




でも、言葉があるとないとでは気持ちが違うんだ


何故ルーファウスはそういうのを嫌う?




少し考えてルーファウスの家に戻ると

ルーファウスがソファでワインを回していた



「お帰り」




その言葉にセフィロスは少し笑えた

ああ、きっと同じ気持ちのはずだ






「ただいま」

















見事にまとまりがないので失敗作か普通に小説扱いするか悩んだ。

月に祈るのリベンジだったんだけど消化不良になってもうた。

なのでなんか内容かぶってる。

てか全部同じようなアレで自分ながら飽きるので

そのうち激しめの捏造でもすっか。