原動力










外の空気は昼でももう肌寒く、もうすぐ雪でも降るのかと思う




窓から柔らかい日差しが差し込んでいた



その日差しに照らされて、きれいな金髪がキラキラと光る




「私はいらない人間なのだろうから」



悲しんでいるかと思えば


「邪魔だから早く死んでくれないかな」



父親に対してこの言い方



ルーファウスという人間は、病んでいると思う




「お前、なんでそんなにプレジデントが憎い?」



ルーファウスがオレを見ていつも見る笑みを浮かべた



「理由なんて忘れたな」




こいつは、どこか感情が欠落してる部分がある




「ルーファウス、お前悲しくないか?」



「何故?」



元々持つ優雅さと、皮肉めいた表情

気取っているわけではなく、こういうヤツ




「何があった?」



ルーファウスは弱い人間ではないと思う


でも、たまに

自分から線を引いて誰も自分の領域には入れない弱さも見える




「忘れたよ」




そんなに背伸びをしてどうする?


そんなに心を隠すのは何故だ?








「なんでお前は笑顔がぎこちないんだろうな」



「そうか?」



ルーファウスの笑い方は

大抵、ニッと口角を上げる



他には、ハハハ、と高笑いをする



たまに、困ったような、顔をして笑う




きっとそれが精一杯の笑顔なんだろうと思うと

胸が締め付けられるときがある



前はもっと、たまにでも、普通に笑ってなかったか?




「オレには家族がいないから分からない。家族はそんな悲しいものか?」



腕組をして考えているような顔をするスーファウスが

オレの肩をポンと叩いた



「その家族によるさ。そんな情けない顔をするな」



昔、プレジデントがルーファウスを殴った現場を見たことがある


今思うとどうしても


二人の間に親子の空気は無かった様に思う



ルーファウスの目は憎しみに満ちていて



プレジデントの目は物を見るような冷たさだった




「ずっと憎みすぎて疲れたりはしないか?」



フン、とルーファウスが笑う



「これが私の原動力なんでね」




なにがどうなってどうして



原動力が憎しみというのは


悲しいことじゃないのか?




「オレは、時々悲しくなる」



ルーファウスがその言葉に

俺の顔を覗き込み、俺の手の上に手を置いた



こういう時、ルーファウスには「優しさ」がある


本人がそれは優しさだと気付いているかは別だが



「何を悲しむ?」



「お前が心を閉ざしていることが」



呆れ顔のルーファウスが大きなため息をつく



「私が心を開いてるんじゃない
相手が心を閉ざすんだ」




ああそうか、こいつ思った以上に不器用だ


自分が線を引いてることに気付いていないんだ


寄り添い方も知らない

甘え方も知らない



「相手が心を開いても、お前が開かないだろう?」


「人によるだろう」


「俺は?」



「充分すぎるほど、私はキミと打ち解けているが」


これはもう育ち方よりこいつの性質なんじゃないか?



「じゃあ話してくれ。何が怖いんだ?」



ルーファウスの顔が曇る



「怖いものなど無い」



「俺が、消えても何も感じないか?」



ますます厳しくなるルーファウスの顔を見つめる



「感じないと思うなら、お前は私のことを何も分かっていない」



ルーファウスが俺の頬に触れる



「私のことで悩むなよ」



「俺はなルーファウス、お前が心配で仕方が無い」



「そんなのはお前が私の傍にいることで解決だ。
お前の隣なら、私は安心していられるんだ」



俺に不器用そうな笑顔を向ける



「だからお前は、私の傍を離れるな」







人を守りたいと思ったのは

初めてだ



こいつの原動力が憎しみだとしても

俺の原動力はこの感情かもしれない





せめて俺の隣にいるときだけでも

少しでも笑顔になって欲しいと思う










傷つく顔を、見たくないんだ













BGMはBOOWYのONLYYOU(古いとか言うなよ)

セフィルーソング(病気ですしね)

こう、お互いに守りたいんですこの子達。
プッ。

どうでもいいけど題名決めるの苦手