足跡






ぎゅっ、ぎゅっ、と


歩くたびに鳴る足音


歩くたびに付く足跡



ちらつく雪













「セフィロス」


真っ白な雪に溶け込む白い服と金の髪



「ん?」



俺の足跡を踏みながらついてくる


自分の足跡は残さないのか?



「また任務で遠くへ?」



「ああ、そうだ」



「そうか」



人気の無い雪道、時間は深夜を回っている


丁度街灯に照らされる場所でルーファウスは立ち止まった



「寂しいか?」

なんとなく、なんとなく聞くと、疑問そうに顔をしかめて俺を見た



「寂しい?何故」



「離れるから」



「あぁ、そうか。いや、平気だ」



なんだかな



「可愛げが無いな」



「そんなことを求められてもな」




冷え込む

黒い自分の上着をルーファウスに着せた



「わっ、いいって!」


「なんだ、大きすぎるからか?」


「頭きた。風邪ひいちまえ」


「フフ」



俺が歩き出すと、二歩くらい後ろを

同じスピードでついてくる




「なあルーファウス、お前なんか欲しいもの無いのか?」



「は?」



「買えないものは無いだろうけど、なんかないか?」



「なんだセフィロス、なんか欲しいのか?」



「違う、お前に聞いてるんだ」



また、疑問そうなしかめっ面



「私か?」


「だからそう言ってるだろ」


「親父の命とか社長のイスとか」


「それは買えないな。というより無理だ。他には」


「ない」


「なんかあるだろ」



しつこいな、という顔をして、ルーファウスが考えた


「わ!」


考えながら歩いていたせいか、ルーファウスが滑った


「おい!」


転ぶ前に引っ張りあげて立たせる

そしてまた歩き出す



「スパイク付きの靴でも買うか?」


「うわ、すっごいいらん」



「マフラーとかコートとか」


「間に合ってる」



「バイク、車」


「家にたくさんある」



「ゲームとか」


「子供じゃないし」



「ペット、ネコとか犬とか虫とか」


「あ」


「ん?」



その声で、俺は歩くのをやめて振り返った


「お前髪銀だから雪、髪についてるとなんかキラキラしすぎ」


「ああ、本当だ、お前の頭も街灯で雪光ってる」



ルーファウスの髪の雪を落としてやると

ルーファウスも俺の髪の雪を落とした



「あのな、私は虫は好きじゃないぞ?」


「そうか」



また歩きはじめた



「セフィロス」


「ん?」


「寒くないか?」


「ぜんぜん」



二歩歩いて、また止まった



「ルーファウス」


「ん?」


「寒くないか?」


「コレあるから平気だ」



俺の上着をピラピラと揺らした



また一歩進んだ時、ルーファウスが喋りだした


「欲しいものがある」


「なんだ?」



期待して勢いよく振り向くと



「もっと雪欲しいな。すっごい積もるくらいの」



ルーファウスは期待しているような答えをくれなかった



「…もっと残るものとか高価なものを、普通欲しがらないか?」



「あー、なるほど」



「あったか?」


「ない」



即答だった




「なんで欲しいものが無いんだ?指輪とか」


「すっごいいらない」


「何故」



サラっと断わられすぎて、少し悲しかった



「そんなのつけてどうするんだよ」



「あー、そうか、そうか…何故だ?」






「お前鼻赤いって」


ルーファウスが上着を俺に羽織らせて

そのまま俺の前を歩き出した



「おいルーファウス」


「じゃあお前の休暇、私によこせ」



「休暇はいつも一緒じゃないか」



「ああ。だからこれからも」



「わかった」



ルーファウスは不器用な人間だ、とよく思う


そして感情というものを俺よりも知らないんじゃないかと思う



「雪が強くなってきたなー」



空を見上げながら歩くルーファウスの

後姿を追って歩く



ルーファウスの足跡の上に足跡をつけると

ルーファウスの足跡が消える



まるで一人しか通っていない様に



「本当だな、お前寒くないのか?」


「ぜんぜん」








俺の家についた







「じゃあ」


「なんだ、寄っていかないのか?」


「帰る」


「いいから暖まっていけ。送ってくから」


「いや、なんとなくついてきただけだし。
しっかり働いてこいよ、明日」



そういうとすぐにルーファウスは背中を向けて

来た道を戻っていった





自分の足跡は残さずに

































ほんと、なんとなく書いた

夏なのに冬の話

残るものはもらいたくないルーと

なにか残るものをあげたいセフィの話