そこにある温もり









照れたように笑う顔を

愛しいと思ってしまった



「ルーファウス」



クラウドの声に

私は彼の頬を包み込み


汗ばんだ額を撫でた



不安そうなその顔に

何を思っているのかも聞けずに

笑って見せると


クラウドは照れたように笑った



この笑顔が、私は好きだ





























最近クラウドが傍に居ることが増えて

呼べば応えてくれるのが当たり前になりそうで


いつ、クラウドが離れていくのか

考えてしまう




何となく、考えると、不安そうな顔をクラウドが見せる時があって


彼はなにが不安なのか


それを考えると、すぐに離れてしまうのではないかと




「ルーファウス、アンタ誰のこと考えてるんだ?」



君だよとも言えず、まして他の名前も出てこない




なれすぎるのは、だめだな



期待をしなければいい

求めなければいいのだ







今だに彼に囚われているのか

繰り返し夢を見ることがある

すぐに思い出してしまう



しかしクラウドと居ると

忘れられる時間がある


それは何故だろう




「ルーファウス、聞いてるのか?」



彼の声はとても心地よく耳に響く



「ああ、ちゃんと聞いているよ」



クラウドの指に

指を絡め


顔を見上げると



クラウドは私の手を、ぎゅっと握り


額に額を合わせてきた



私が目を閉じると


唇に暖かな感触




期待しては、いけない



それでも私はどこかで

求めてしまう






クラウドの背中に手を回し

抱きつくと


クラウドの手は私の腰を抱く



見た目よりも筋肉質なこの身体全部

そして少し高めの体温が

安心感を与えてくれる




既に私は、自分が彼を求めていることに気付いて



それでも距離を置けなくて





「どうした?…ルーファウス」



私の顔を心配そうに覗き込み



私が首を横に振ると



逞しい腕で、私を抱きしめる




「どうもしないよ」



その胸に顔を預ける



「アンタたまにボーっとしてるよな。なに考えてる?」



「…あまり、なにも。ただボーっとしているだけだ」



駄目だ、しっかりしなければ

こんなことではきっと

私はまた









「外に出たいな」


そういう私に


「寒いのに?」


そういいながらもクラウドは、上着に手をかける





微かに雪が積もる


寒空の下をゆっくりと

歩く


うっすらと残るクラウドの足跡の上に

自分の足跡を重ねて歩き


その感覚に懐かしさを覚える



なんだか、この感覚を知っている気がして


眼下にある足跡に

一瞬だけセフィロスを思い出して



立ち止まった











夢を見ているような感覚に襲われて

自分が今なにを思い出したのか

自分が今なにを考えてるのか


それすらもわからない





「ルーファウス」



それははっきりと聞こえた


クラウドの声が私を現実に引き戻す



目の前に立っていたクラウドは

私の肩をポンと叩いた



「アンタ、ぼーっとしすぎだよ、今日」




「なんか、そうだな、自分でもそう思う」



クラウドは背中を向けて

一歩踏み出した


「なに考えてるんだか、さっぱりわからないなアンタ」



一歩、また一歩離れるクラウドを

何故か追えずに

その背中を眺めた


クラウドの、背中



少し離れてからクラウドが振り返る




「早く来いよ」



そして手を、私のほうに伸ばした




ゆっくりと歩き

その手に触れると


暖かい体温がその手を包んだ






この手を


ずっと離さないで欲しい




祈るような願いを飲み込んで


また歩き出した











しっかりと


自分の足跡を残しながら














セフィロスは忘れられないけれど

心にいるのはクラウド。

二股じゃないです。