桜色の雪 |
「おい、でかけるぞ」 クラウドが家に入るなり突然そう言ってルーファウスを見た 「なんだいきなり」 相変わらずのルーファウスの服装に、クラウドは顔をしかめた 「あんたそれ暑くないのか?」 「いや、特に暑くはないが?」 「いいからとりあえず出かけるぞ」 パソコンを閉じてルーファウスは立ち上がった 「どこに行くんだ?」 「行けばわかる」 フェンリルにまたがり、ルーファウスはクラウドの腰を掴む それを確認して、クラウドはフェンリルを発進させた スピードを上げるとルーファウスは掴まる手に力を入れて 楽しそうに笑う 急カーブに、更にスピードを上げて突っ込むと ルーファウスが慌てて強く抱きついた 「ビビったのか?」 「乱暴者」 「ビビったんだ?」 「激しいのは嫌いじゃない」 「アンタなあ」 「ほら、よそ見するな」 人気の無い道に入り、そこを抜けると桜並木が見えてくる あっという間に桜並木の中に入る それと同時にクラウドはスピードを落とした ルーファウスが思わず片手を離して後ろを振り返る 「ルーファウス」 「…なんだ?」 「桜にも、思い出あんの?」 ルーファウスは桜を眺めながら薄く笑う 「きみは?」 フェンリルを停めて、その体勢のままクラウドが桜を見上げる 「母さんと見たことがある。母さんが弁当作って二人で見た」 「…桜を見ながら?」 「そう、嬉しかったな。そういうことをするのが」 「いい思い出なんだな」 「そうだな。アンタもそういうのある?」 「いや、桜を見ながら食事はしたことが無いな」 「誰かと見たりした?」 「そうだな、そのくらいなら」 「誰?」 風が吹いて、桜の花弁が舞った 「君は母としか見たことは無いのか?」 「…いや、ティファと…あと神羅にいた時に、親友と」 「あー…そうか」 クラウドの腕に乗っている花弁を取って ルーファウスはフェンリルから降りた 「すごい数の桜の木だ」 「そうだな」 機嫌良さそうに桜の木に手を当てて木を見上げて クラウドを振り返る 何か言おうとして口を閉じたルーファウスに、クラウドは歩み寄る 「…どうした?」 「…いや…何を言うのか忘れた」 「嘘だろ」 「思い出したら言うよ」 「…わかった」 翌日、ルーファウスは、クラウドの仕事が終わる時間に電話をした 昼前には終わる予定だと聞いていた 「仕事は終わったか?」 「あー、一応終わった」 「来るか?」 「今セブンスヘブンなんだ。マリンとデンゼル達と、桜見に行くんだ。 迎えに行くから行くぞ」 ルーファウスは額を押さえて苦笑する 「いや、これからちょっと仕事があって、今日は遅くなると伝えようと思ってな」 「あー、そうか、わかった。なんかあったらすぐ電話しろよ」 「ああ、キミは楽しんでこい。ついでに今日はそっちで寝て来い」 「そんなに遅くなるのか…わかった、じゃあ明日な。アンタは気をつけてな」 「はは、ああ」 電話を切った後、ルーファウスは苦笑しながら作った弁当を見下ろした 「なんだか、間抜けだな。どうしようか」 「綺麗だねクラウド!」 感動しながら桜を見上げて笑うティファと はしゃぐマリンとデンゼルを見て笑うクラウド 「人がたくさんいるね」 マリンがあたりを見回すと、デンゼルが「はぐれないようにしろよ」と、マリンに笑いかける 「クラウドはいろんな場所を知ってるよね」 敷物を広げながらティファがクラウドを見上げる 「まあ、いろんな所に行くからな」 「早く食べたいー!」 「お腹すいたっ!」 子供達のリクエストに、ティファが腕を振るった弁当を広げた 食事を済ませて遊ぶ子供達を眺めながら ティファはそっとクラウドに近づく 「本当はルーファウスと見たかったんでしょ?」 「昨日見てきた」 「…いいね、ルーファウスは」 うっかり出た言葉にティファが口を塞いで立ち上がる 「私も遊んでくる」 「ああ」 とても暖かい日で ルーファウスは家のすぐ近くに一本だけある桜の木に背中を預けて目を閉じる 「おい」 はっと目を開くと、目の前にクラウドの顔があった ルーファウスは下を向いて、手で顔を覆った 「…ああ…どうした、早いな」 「まあ、早く終わったからこっちで横になろうと思ったら、家に鍵かかってなかったから…」 「ああ、ここから家は見えるからな、すぐ帰るつもりが寝てしまったか」 「もう夕方だし…危ないな…っつーかアンタ、仕事は?」 クラウドを見上げてルーファウスは苦笑した 「終わった」 「遅くなるんじゃなかったのか?」 「ああ、早かった」 「電話しろよ」 「眠くて」 家に戻り、テーブルの上の弁当を見つけてクラウドが持ち上げる 「これなんだ?」 ルーファウスが額を押さえて顔をしかめる 「…夕飯、…ああ、イリーナが」 クラウドは弁当を広げて笑った 「これアンタ一人で食べきれる量じゃないよな」 「はは、3食分はあるな」 「なあ、もう一回桜並木行かないか?夜桜見ながら食べようぜ?」 「キミは食べたばかりだろう」 「食べたの昼だって。もう夕方だし」 「あ、でも昼に行っただろう、桜は」 「昼行ったのはアンタと行った場所じゃないから」 ルーファウスが苦笑して壁に寄りかかった 「どこ行ったんだ一体」 「花見の名所。さすがに人多くて早めに切り上げたんだ」 「あれ?寝に来たんだろう?」 「アンタがいないと思ったから寝ようとしただけ。別に眠いわけじゃない」 「家族は?」 「…子供達は泊まりに行ってる。ティファはゆっくりしてるだろ」 「そうか」 「なあ、前から言いたかったんだけど、家族って表現、違うぞ」 「…この表現は気分が悪いか?」 「いや、そうじゃないけど…」 「キミ達を見てると、本当の家族のようだ。本当に身近なんだと思う」 「確かにティファとは長いな。子供達も…」 ルーファウスの顔を見て、クラウドは口を止めた 「子供達も、なんだ?」 「…なあアンタが思う本当の家族ってなに?」 「…キミ達のことを言ったのは、周りから見たらキミ達は夫婦に見えて マリンとデンゼルはキミ達の子供に見えると言うことだ」 「嬉しくないんだけど」 「ん?なにが?」 「夫婦に見られることはたまにあるけど、嬉しくない」 「別に喜ばせたくて言ったわけではないよ。キミに妻がいたら…」 ルーファウスはボーっとする頭を軽く叩いて笑った 「…俺に妻がいたら何だよ」 顔をしかめるクラウドを見て苦笑する 「いや、キミにも私にだって、妻が居てもおかしくはないんだから」 「言いたかったの本当にそれか?」 「まだ少し脳が寝ているんだ」 「アンタ結婚なんかするなよ」 「そう言いながら自分が結婚したりしてな」 ルーファウスが笑いながら言うと、クラウドが苦笑してルーファウスの手を引っ張る 「アンタが女ならアンタと結婚する」 「私かキミが異性だったらきっとお互いは選ばないよ」 「夢もロマンもないな」 夜桜は大きな月に照らされてはっきりと見えた ルーファウスはフェンリルに腰をかけながら桜を見上げる 「食うぞ」 「いや、いきなりか」 ルーファウスが弁当を広げるクラウドを笑いながら見る 「あー、うまいじゃん、イリーナって料理うまいんだな」 「そう、なのか?」 「俺の好きなものばっかり」 「あー、そうかもな」 手を付けずにクラウドを見るルーファウスに、「食えよ」と、笑うクラウドに ルーファウスは笑う 「キミが食べてるのを見ていたくて」 食事が終わり、機嫌が良さそうに桜を見上げて小声で歌うクラウドの声に ルーファウスは黙って耳を傾ける ふと歌声が止み、ルーファウスがクラウドを見ると クラウドは笑ってルーファウスにキスをして、また歌いだす ルーファウスが苦笑してからクラウドの肩に寄りかかる そして唇を結んだ すぐにクラウドはルーファウスを抱きしめ、耳にキスをする そのままの体勢で、ルーファウスは笑ってクラウドの手を掴んだ 「少し、歩こうか」 ルーファウスの足が、微かに震えて、無意識に足に力を入れた 「なあルーファウス、足はどうだ?まだ痛む時あるんだろう?」 「不自由は無いよ」 どこまでも続いてるような桜並木 先に歩き出したルーファウスを、走ってクラウドが抱き上げた ルーファウスは驚いてクラウドを叩く 「離さないか」 「いやだ」 「降ろせ」 「自力で降りろよ」 力では適うはずが無いルーファウスは溜息をついてそのままおとなしくなった 強い風が吹き、花弁が舞う 桜が舞う空を見上げる 「クラウド、歩ける、大丈夫だ」 ルーファウスの足をかばおうと抱き上げて歩いたクラウドが 苦笑しながらルーファウスを降ろした 立ち止まり、先に歩いていくクラウドの背中を眺める ざあっ、と風が吹いて、一気に大量の花弁が舞う 「クラウド」 ルーファウスの声に振り向いたクラウドの視界にはルーファウスはいなく クラウドはあたりを見回す 「ルーファウス!ルー…」 ルーファウスが立っていた場所まで行くと 地面に転がるルーファウスがクラウドを見上げた 「大丈夫か?」 ルーファウスは苦笑して目を伏せる クラウドはそこにしゃがみこんでルーファウスの首の後ろに手を当てて持ち上げる 「足?」 「すぐ、立てる」 「なら、立てるまで転がってるか?」 はは、と笑うルーファウスをクラウドはもう一度地面に寝かせながらキスをする 桜が舞う生暖かい風に目を閉じて ルーファウスはクラウドの首に手を回す 「立てる?」 「無理だ」 苦笑するルーファウスを抱き上げ クラウドはフェンリルに座らせる 「寒くないか?」 「ないよ」 「暑くないか?」 「ないよ」 ルーファウスの隣に座り、クラウドが空を見上げる ルーファウスは地面を見下ろす 「俺、アンタとずっと居たいと思う」 「どうした急に」 「アンタは?俺とずっといたくないか?」 「キミが退屈な男なら、一緒にはいない」 「素直に言えば?」 「素直に言ったじゃないか」 「…なあ、桜をさ、やっぱ、あいつとかツォンとかと見たのか?」 あいつってセフィロスか?と笑いながらルーファウスがクラウドを見る クラウドは目を合わせないように、地面を見下ろす 「ルーファウス、桜、好きか?」 花弁が舞う ルーファウスは手を伸ばして笑った 「雪みたいだ」 「…アンタさ、家族は?」 「…正妻が1人と妾が4人と子供が6人…」 「うそつけ!」 「ははは」 「婚約とかしたこと、あんの?」 「記憶に無いな」 「男にプロポーズされたことは?」 ルーファウスは噴き出して、苦笑してクラウドを見た 「記憶に無い」 クラウドが突然走り出し、ルーファウスはとっさに足が出ずに背中を見送った 少し時間が経っていた 羽織っていた上着を手元に丸めて、クラウドが走ってきた ルーファウスの頭上でばさりと上に放る様にそれを広げると 桜の花や花弁が大量に降ってきた 「わ!」 ルーファウスが思わず声を上げると クラウドが笑いながらルーファウスの両手を取った 「健やかな時も病める時も、生涯変わらずに…」 ルーファウスがクラウドの襟を引っ張り、キスをする 長いキスの後、クラウドがルーファウスを抱きしめながら苦笑する 「…最後まで言わせろよ」 「いやだ」 「なんで」 ルーファウスはクラウドの手を解き しゃがみこんで足元に積もった桜の花弁を両手いっぱいに持ち上げた 「もう充分、伝わったから」 そう言いながらクラウドと自分の上に放る 降り注ぐ桜の花弁の中でクラウドが笑った ルーファウスがクラウドの笑顔を見て、微笑む |
せっかくなので桜で。 プロポーズ通り越して誓いの言葉ですかしかも失敗ですか ああ残念な小説に仕上りました そのうち指輪でも そんなのルーファウスに送っても、はめてくれないですよクラウド |