柔らかい日差しの中で

心地いい温度で眠っていた



隣にはルーファウスがいて

笑っていて







いつか誰かが歌っていた優しい歌







ルーファウスがそれを歌っている





もちろん女性のような柔らかさは無いけれど

どこから聞いても男の声だけど

どこから見ても男だけど



どこか 中性的な透明感があって


俺はそれが凄く好きだ















「その足、いまだに痛むのか?」



足をさするルーファウスに質問をすると

ルーファウスは足を伸ばしてから 背中と腕を伸ばした



「たまにな、ごくたまに」



そしてルーファウスは俺にエリクサーを渡す



「クラウド、回復したか?」


「したってば」



苦笑いをして、俺はエリクサーをルーファウスに押し返す



「私もキミのように身軽に戦ってみたい」



レベルを上げた所で人よりステータスの低いルーファウスは

本当に戦闘に不向きな人間だと思う



マテリアを持った所で使えもしない



本人もそれを気にしている



「戦う必要、無いだろアンタは」



マテリアの魔力を引き出せない人の方が珍しい


一般人だって簡単に手に入れて使うことが出来る

普通その身に備わっているMPが、コイツにはない





「でも、羨ましいんだ」



銃を構えて、そして下ろす



「アンタは戦っちゃいけないんだきっと」



「何故」



「アンタが強かったら、いつか俺はアンタと戦わなければいけなくなる気がする」



ルーファウスは銃をそこらに転がして

寝転んだ



「私が神羅だからか?」



「ルーファウス神羅だからだ」



ルーファウスは空を見上げて、眩しそうに目を細めて

起き上がり 日陰に逃げた



「なに、太陽苦手?」


「そういうわけじゃない。好きなんだが、直視するには痛くてね」



俺がルーファウスの隣に座ると

ルーファウスは体勢を低くして俺の頭を見上げた



「眩しい」



そういって笑うルーファウスを小突いた



「バカらしいかもしれないけど、夜が来なければいいのにって、思うこと無いか?」


俺の言葉に、ルーファウスが少し考えた顔をした



「この夜が永遠に続けばいいのに、とバカなことを考えたことはあるよ」


ふふっとルーファウスが笑って でも、何故だ?と俺に聞いた



俺は身体ごとルーファウスの方を向く



「夜は余計な事を考える時間が多い気がする」


「例えば?」



俺は少し考えて、また答える



「この世界どうなるんだろうとか、未来への不安、それとか過去の失敗とか
アンタのことも」


「私のことというのが一番引っかかる」



「アンタの昔の男とか、神羅のこととか」



「そういうことか」



ルーファウスは、不安になったら電話をしてくればいい、と軽く笑い飛ばす



「アンタが一番強く思った、一番続いてほしいと思った夜って?」



これはきっと、俺との夜じゃない、セフィロスか誰かとのなんだろう

そう思いつつも聞いてしまう自分がバカらしい



「…自分が意識もなく眠っていた夜が続けばよかったのにと
目が覚めてから思ったんだ」



一日が始まる朝日の絶望感は耐えがたかった時期があったと

いつもは言わないだろう心の内を、ルーファウスは言った




それはいつごろ?


聞きたくても、あまり聞いてはいけない気がした


ルーファウスが自分から自分の事を喋るのは、珍しい





「今はそうは思っていないが」と付け加えルーファウスが笑う


不器用な笑顔




その不器用な笑顔を完成させたのは誰?



「キミは未来にどんな不安がある?」



またセフィロスが現れるんじゃないかということ

これを言ったらなんだか、ルーファウスの心を蒸し返しそうで俺は黙った



その俺の表情を見て、ルーファウスがああ、と声を出す



「セフィロス?」



あっさりと出された名前

俺は苦笑しながら頷いた



「キミは彼になんだか、懐かれているもんな」



ルーファウスを見ると

口しか笑っていないのに気づく



それで笑ってるつもりなんだろうか



「彼が、また現れたら、きっとキミがまた彼を倒してくれるよな」



「ああ、アンタの所には行かせない」



ルーファウスが消え入りそうな笑顔で

頷いた




どうして、まだ、アンタの中であいつはそんなに色濃く息づいてるんだ



どうして




「セフィロス、が、忘れられない?」




ルーファウスが困ったように笑う



「またそんな話題を」




「アンタの中に、セフィロスばかりを見てしまう」



「何故?それはキミがセフィロスを気にするからではないか?」



疑問を抱くような顔で

ルーファウスは俺を見る



「キミは、セフィロスに特別な感情があるんだな」



俺はため息をついてルーファウスを軽く叩いた



「アンタが、あいつの話になると表情が変わるからだ」



不機嫌そうにルーファウスは顔を歪めた



生きてる表情に、ほっとする


「それは悪かった。だけど、私の中でセフィロスはもう死んでいる
ニブルヘイムで、死んだんだ」


そのあとはもう、私の知らない彼なんだ、と俯く




「本当に、好きだったんだな」



その言葉を出した瞬間


固まった ルーファウス



「おい?ルーファウス?」



肩を掴み、視線を自分に向かせようと頬を掴むと


強く結ばれた口が不自然に歪んで

それが笑顔を作ろうとしているんだろう事に気づく




「…クラウド、わ、私は…」



俺はルーファウスの肩を掴んだまま、どうしていいか、迷った




「それでも、私の…今の支えが、」




ゆっくり喋るルーファウスの眼を見て


うん、とゆっくり相槌を打つ



「キミだと、信じて、いるんだろうか?」




その表情を見ていると、胸が痛んだ


いっそ、泣けたら、きっとラクだろうと思う




「ああ、わかってる」



俺がそう返すと、息を乱しながら

ルーファウスが俺に倒れこむ



苦しそうに呼吸をするルーファウスにキスをする



「ルーファウス」



「ああ」



「大丈夫か?」




「ああ」



強く抱きしめると、ルーファウスが「すまない」とぽつりと呟いた



「何が?」


「情けないもんだな、私は」



苦笑しながら、ルーファウスは爪を立てて自分の首を引っ掻く



「やめろって」



「うん、痒い」



手を引っ張り、首を見ると、とても薄くではあるが

無数の傷がある



「アンタなー」


「いや、よく痒くなるんだ、ここ」



繰り返されてる行為だろう



「なんで痒くなるんだ?」


「さあ?」




重症だ




「私の中にセフィロスがいても、それが見えても
キミは私の傍にいてくれるんだろうか?」





無意識だろう、また首に爪を当てようとするルーファウスの手を封じるように

抱きしめた



「ああ」




「苦しい」



笑うルーファウスの言葉に

力を緩めると


ルーファウスが俺にしっかりと抱きついた














俺はこいつを しっかり支えていられるだろうか



震える細い肩には重すぎる過去を

俺はすべて受け入れることが出来るんだろうか



俺は 自分が不安になったことが、悔しかった

























セフィロスに嫉妬するクラウド。

いまだルーはセフィロスに未練タラタラだけど、クラウドが好き