笑顔









「神羅ができなかったこと、キミはやってのけたな」


「星が必要なのは神羅じゃなくキミ達だって、解っている」


「それでも私も、私も…」



「災いばかり、悲しみや苦しみばかり残してしまったな」



「私自身を終わりにしたい」


「だからクラウド、もっと愛され必要とされるキミ達」


「私が愛したけど、愛されなかったこの星を、よろしく」



どういう意味だよ


なんでそんないい笑顔なんだ


ルーファウスなぜ





ルーファウス!



「クラウド!」




その声に目が覚めた

夢だったんだ



「どうした?」



心配そうに俺の顔を覗き込むルーファウスを抱き締めた



「…どこも行くなよ」


「…行かないよ」



優しく俺の背中を叩くその手に安心した



















食事も風呂も終わってから

ルーファウスがワインとビールを俺に見せた



「ビール」



ルーファウスがテーブルにワインとビールとグラス二個を用意した









少し酔いが回ってきた頃

ルーファウスが突然口にした



「誰かがどこかに行った夢を見た?」



ワインを回しながら俺を見る




俺は答えられずにビールを眺める



「俺、なんか寝言言ってたか?」


「いいや、少しうなされていただけだ」


「そうか」


「どんな夢?」


「…人が、離れていく夢」



グラスに口をつけながらルーファウスが俺を見る



「誰?」

「覚えてない」

「大事な人だったか?」


「…かもしれない」



グラスを口から離して

ルーファウスがごく普通の笑顔を俺に見せた



「大丈夫、きっと逆夢だ」



その笑顔が、なんだかあまりにも眩しく見えた



「アンタは、そう思うか?」



ふふ、と笑って頷いて

ワインを飲む



ああ、俺コイツのこういうの、好きだ



「そういえばアンタいつもワインだけど、ビールは飲まないのか?」


「ああー、美味しいと思えなくてな。キミは好きだよな」


「ああ、好きだ」



ルーファウスがテーブルに頭を置いて目を閉じる



「私も、キミがするキスがビールの味のときは
ビールが好きになる」



俺は今、ビールのせいじゃなく

顔が赤いと思う



「…アンタ酔ってるな」


「でも嘘は言ってない」



熱を含んだ声

俺を見上げた




「ビールより効いた」


俺はそう呟いてから

立ち上がってルーファウスの隣に座り

ソファに深く腰をかけた


ルーファウスは目を閉じながらら背もたれに深く体を預けた



なんか機嫌がよさそうな気がする



「アンタなんかいい事あったのか?」


「キミがいること」



なにも言い返せずに俺は自分の顔を手で覆った



「顔が赤いのはビールのせいだろう?」



そう言って笑うルーファウス

今の言葉で赤くなったのは確実にバレてるらしい



「クラウド」


「…な、んだよ」


「暑いか?」



いきなり何を言い出すのかと思って俺はルーファウスを見る

酒は入っているが室温は低めで

暑くは無いし寒くも無い



「いや…暑いか?窓でもあけるか?」



俺がそう言うと「いいや」と言って俺の肩に寄りかかってきた



「なんだよ」



ダメだ、今の俺の声はまんざらじゃないって声してた



「いいじゃないか、暑くないなら」



そう言うルーファウスの肩に手をかける



「よくない事するぞ」



ははは、と声をあげてルーファウスが笑った



「よくない事ってなんだろう」



俺がルーファウスを引っ張って組み敷いて

キスをすると


熱っぽい目で俺を見上げた



「こういうこと」


「これはいいことだ」


「アンタもバカだ」


「キミも?」



ふっと俺が笑うと

ルーファウスが俺の首に腕を絡めて抱きついてきた



「キミ、機嫌いいな」


「アンタもな」



ルーファウスがまた、 ふふ、と笑って、うん、と言って頷いた



俺たちはまたキスをした




































ベッドに横になりながら

俺はボーっと夢を思い出していた



どうしてあんな夢を見たのか


コイツあんな事言ってたっけ



ルーファウスが俺を覗き込み

起きてることを確認したからか

俺を引っ張った



「外に涼みに行かないか?」


「…海にでも行くか?」


夏も終わるしな、と言った俺に

ルーファウスは穏やかな表情で頷いた





















海は暗く静かで

波の音しか聞こえない



月の明るさが星の数を減らしていた



たまに遠くに車やバイクのエンジン音が聞こえる



穏やかな波に心が落ち着く



何も言わずに砂浜に座って海を眺める




空気が夏の終わりを知らせている様で

なんだか少し寂しい気がする




ルーファウスが素足になって

ゆっくり海へ入る



「わ、冷たい」



「当たり前だ」



コイツがいつ転ぶかもしれないと思い

俺も素足でルーファウスを追った



早速足がもつれたルーファウスが俺の腕に掴み

体制を整えて離す



「見ろ、海の中でこんなに歩ける」



自慢げに4歩5歩と歩いてみせるルーファウス



「ここまで来てみろ」



俺は少し離れてルーファウスを呼ぶ


ルーファウスがたまに止まりながらもゆっくりと近づいてくる




「捕まえた」



ルーファウスが俺に抱きつくように倒れこむ



「はい、よくできました」



俺は思い切り抱きしめる



「ああいやだ、この足がいやだ」



ぎゅっと手に力を入れるルーファウスの背中を

俺は優しく撫でた



「その足も曲がった根性もまるごとアンタだ。否定するな」



「ははっ」




波の音が綺麗で


俺に抱きつくその手が綺麗で


その声が、表情が綺麗で



俺を見て無邪気に笑うこいつが

あの神羅カンパニーの社長だった男だとは思えなくて



たまに、ごくたまに

歳より幼く見える瞬間がある


それはこういう無邪気な表情の時



「クラウド、何を考えている?」


「…楽しそうだな、と思って」


「楽しくないか?」


「いや、楽しいよ」






笑う俺に惜しみない笑顔を向けてくる











だから俺は素直になれる気がしてる





















もうクラウドうわごとでルーファウスとか呼んでるから。

アイタタ。