やさしいうた |
昔覚えた歌があった ベッドに横になりながら目を閉じて、ルーファウスは それを歌った だれかが歌っていた歌だったか だれかが教えてくれた歌だったか 歌の途中でハッとルーファウスが目を開けると 窓からクラウドが覗き込んでいた 慌てて起き上がり、何の用だとルーファウスが言った 「続けろよ」 笑うでもなく、普通にクラウドが言った 「入って来い」 「続きは?」 「いいから」 「じゃあ帰る」 「おい!」 クラウドの服を掴み引っ張る 「歌うんなら入ってやってもいい」 「帰れ」 「何の歌だ?」 クラウドの質問にルーファウスはすぐには答えられなかった 「さあ、子供のときに、気付いたら覚えていた。 ああ、思い出したよ、昔教会で覚えたんだ」 「なんか優しい歌だな。賛美歌?」 「多分」 クラウドが窓枠に両肘を置いて 手の上に顔を乗せてリラックスした態度を取る 「続き」 そのクラウドの大きな態度にちょっとのため息を漏らし ルーファウスが、目を閉じてもう一度歌いだすと クラウドはルーファウスの顔をじっと見つめた ルーファウスの頭の中には幼い日の自分がつまらなそうに 教会でミサを聞きながら足をブラブラとしている姿が思い出された さて、私はいつ教会なんぞに通っていたのか そんな疑問もでてきた クラウドは 歌が終わるまでずっとルーファウスを見ていた 歌が終わると、クラウドが窓から入ってきた 「野良犬め」 「綺麗だな」 「なんだ私の顔か?」 しかめっ面でルーファウスが答えると クラウドが笑った 「別に否定はしないけど、歌ってる声さ、驚いた」 ルーファウスが不思議そうにクラウドを見る 「機嫌でもいいのか?」 「歌のおかげで」 「酔ってないか?」 「一滴も飲んでない」 クラウドもベッドに座り ルーファウスと向き合った 「思い出したんだ、俺、アンタと会ってた」 ルーファウスの顔が明るくなった 「話してみろ」 「セフィロスがさ」 そう切り出したクラウドの言葉に ルーファウスは汗が出そうになった 「セフィロス?」 「ああ、セフィロスがな、銃を恋人にやったんだって。 護身用にって。 でも「後悔してる、恋人には人を殺して欲しくないんだ」って言っててさ」 ルーファウスのあいた口が 言葉も無いのに動いた 「でさ、俺、どんな人なんだろう、この人の恋人って、って考えてた。 きっとすごいカッコイイ女なんだろうって。 そしたらルーファウスが俺達の前にひょっこり顔を出したんだよ。 セフィロス嬉しそうにアンタのトコ行ったよな。 そこでザックスが言ったんだ。 「ほれみてみろ、噂をすれば影だ」ってね」 ホント驚いたよ、といったクラウドの顔を ルーファウスが自分のほうが驚いたという顔で見ていた 「おま、おま、クラウド、それは…何の話だ?!」 「だからアンタと会った、っていうか目があっただけだよな」 「いや、待て、あの中にキミがいたのは知らなかった…」 「は?」 「だってあの時クラウド、頭に防具かぶってなかったか?」 「そういえば任務中だったからかぶってたかもな」 アンタ、セフィロスとそういう仲だったんだな、とクラウドが苦笑した ルーファウスは激しく首を振った 「ちがうちがう!その時じゃない時! キミが私を助けてくれたじゃないか!」 「はー??」 オーバーリアクションになっているルーファウスを見て クラウドは笑った 「なに焦ってんだよ」 「私がえーとえーとあれは、そうだ、私がミッドガル付近にいた時だ。 私がモンスターに襲われた時私の目の前に出てモンスターを倒したんだ。 そしてキミはこの私に「大丈夫?金髪少年」と言ったんだぞ! しかも神羅ビルに行こうとしてたと言ったら「お父さん働いてるの?」 とか言って私をビルの前まで連れていってくれたんだぞ!?」 息継ぎをしてるかわからないくらい、一気に喋り倒した そのルーファウスの勢いにクラウドは少し驚いていた 「あー!!」 派手にクラウドがルーファウスを指さした 「思い出した!アンタあの時の子か!」 「子とはなんだ!」 「髪型も服装もまるで違うからわかんなかった」 「まあ確かに白い服は着てなかったな。目立つから」 「あのとき何やってたの?」 「…聞きたいか?」 「ちょっと」 「会社がつまらないから着替えて出て行ったんだが、迷ったんだ、純粋に」 「バカだ」 「うっさい」 クラウドが笑って、 そして真剣な顔になった ルーファウスの頬を軽く撫でる 「まだアンタの恋人はセフィロス?」 ルーファウスが不思議そうな顔でクラウドを見返す 「もう、彼は死んだんだ。7年前に」 そして優しい顔をした 「私の中で彼が消えることは無いが、いつまでもとらわれてはいない」 もうとっくに吹っ切れた、と呟く 「正直、アンタがセフィロスの恋人だって思い出したときは、 セフィロスの恋人が男だって知ったときよりもショックだった」 なんでだろうね、と呟いた 「この際聞くけど、ルーファウス、アンタセフィロス以外に誰かと 付き合ったりした?今してるのか?」 「じゃあ先に答えてもらおうか、 キミはどんな付き合いをこれまでしてきた?」 嫌そうな顔でクラウドが頭を掻いた 「俺、人と付き合った事ないんだよ。 好きになったりも、きっとあるんだけど微妙で」 「キミはセフィロスが好きだったとかあったのか?」 「ばっか、俺好きになった男なんて…」 あんたくらいだと出そうになって言葉を飲み込んだ 俺がこいつを好き?あるわけがない 「好きになったことは無いのか?男」 「それが普通だろ」 無い、とはクラウドは答えていない 「確かに」 納得したようにルーファウスが頷いた 「今はいないのか?特別な人は」 ルーファウスの質問に 「いるよ」 クラウドの口から簡単に出た ルーファウスを凝視して、すんなり出た ルーファウスが苦笑してクラウドの頭を撫でた 「頑張れよ」 「な、なにをだよ」 「キミの傍にいて、キミの思いを受け入れない女性はいないんじゃないか?」 違う、とクラウドは心の中で呟く そして口をぎゅっと結んだ こいつの口から聞きたくない、そんな言葉 「アンタの番だ。誰かと付き合ったりしてるのか?」 「なんだ覚えてたのか?」 「ったく」 「今、私の傍にいるのはタークスの他には、キミくらいだ、クラウド」 そういったルーファウスはクラウドの胸を 人差し指で軽く押した クラウドが開きかけた自分の口を手で覆った 「そうか」 そう言い返すのが精一杯だった いや、タークスにも、ツォンがじゅうぶん怪しいけど それでも今のは、口元が緩む 「キミは男の私から見ても格好良いよ」 ルーファウスの唐突な言葉に クラウドの顔が少し赤くなった 「あ、アンタ、根っから男専門なのか?」 「ははは!なんだいきなり」 「だってアンタは、そうやって誰でも誘うのか?」 ルーファウスが軽くクラウドの頭を殴った 「誘っていない!」 「誘ったろ!」 「違う!」 こんな言い合いも無意味だと思ってクラウドは言い返すのをやめた 「どっか行くか?どうせ暇なんだろ?」 「フェンリルでか?」 嬉しそうな表情のルーファウスに、クラウドは縦に頷いた 「暇だから外で足のリハビリ付き合ってやるよ。 その代わりまた歌えよアレ」 ルーファウスが少し目を大きくして「ん?」と少し考えて 「ああ、わかった」 と笑った ルーファウスがあまりにも自然に笑ったもんだから クラウドも思わず笑った クラウドがルーファウスを抱きしめる 自然に手が出た 「どうした?」 「別に」 ルーファウスの髪がクラウドの鼻をくすぐって なんともいえないいい匂いがした 「私といるのに他の女のことを考えているのか」 「バカだよアンタは」 抱きつくルーファウスを軽々と抱き上げ 家を出た |
甘い。 オエップ 進展があったのかどうか、微妙にすれ違ってるんですが。 |