花火







「今日花火大会だねクラウド」



ティファがニコニコとしながら俺に飲み物を差し出した


そういえば、人が多い気がする



「バレットがね、マリンとデンゼルを連れて一緒に行かないかって。
行こうと思うんだけど、クラウドも行かない?」



「面倒くさい」


「行こうよ」



ティファがお弁当作るから、と嬉しそうだ



「クラウドが一緒なら、マリンもデンゼルも喜ぶよ」



花火は嫌いじゃないけど、人ごみが面倒だ



ティファがじっと俺の顔を見ている



「何だよ」



「ううん。無理いってごめん。」



寂しそうなティファの顔に、俺は溜息が出た



「何時に何処だ?行けたら、行く」

















一時間後、俺はルーファウスの部屋に居た


こいつに呼び出されたからだ




ルーファウスの部屋に行くと、ツォンがいた



「クラウドが来たから大丈夫だ」

ルーファウスが俺に軽くジェスチャーで挨拶をしてツォンに言った
何のことだか俺にはさっぱりわからない


「しかしそうもいかないでしょう。
クラウド、キミは今日予定は無かったのか?」

「予定が無いから来たんだ。ツォンはもういいから下がれ」

ツォンは俺に聞いたのに、ルーファウスが答えた

「しかし」

「たまには息抜きをして来い。命令だ。早く行け」



ツォンはどうしていいかわからない顔をして俺を見た


「ツォン、私はクラウドに話がある。早く下がってくれないか?」



「…わかりました」



ツォンが一礼をして部屋を出た




「話って何だ」

俺がルーファウスの方を向くと
ルーファウスは窓を眺めながらツォンを見送っていた

「何も無い」



イラっときた。



「帰る」



部屋を出ようとする俺を止める声は無い

ここには俺とルーファウス以外誰もいない


ツォンが帰ったとなると他のタークスがいないとなれば

ルーファウスが狙われた時はどうする?



立ち止まってる俺に、ルーファウスが近づいてきた



「今日花火大会らしいぞ」



「…らしいな」



ルーファウスの方を向いた



「実はな、ツォン以外は休みなんだ。
イリーナは花火大会を楽しみにしていて、ツォンは花火大会が気になっていた。
あいつをイリーナと行かせてやりたくてな」


俺は腕組みをしてルーファウスから目を離した


「イリーナと行きたかったのか?ツォンは」


アンタじゃなく?と聞こうとしてやめた


「私の予想ではな。別に私も戦えないわけではない。
少しくらい一人でも平気だ。しかしツォンは私を一人にはできないと。
だからキミに来てもらったんだ」



やっぱりアンタと居たかったんじゃないのか?俺の予想では

そんなことは言えない



「で、俺の予定も聞かずに早く来いって?」


「いや、勿論すぐ帰ってくれて構わない。お前も花火を見に行くのか?」


「予定があるだけだ」



ルーファウスが俺を見上げて小さく息を吐いた



「ティファか?」


「…あと子供たちだ」



ルーファウスは少し笑って俺に背を向けた



「そうか、楽しんで来い」



いつもはもっと喋るくせに。



「アンタは行くのか?」



「車椅子で?まさか」



俺のほうに顔を向けて笑った



俺は冷蔵庫から飲み物を取り出してソファに腰を下ろした。

ルーファウスはその行動を気にも留めていない



一緒に行くか?


言葉が出ない

なんでそう思ったのかもわからない

これは俺らしくも無い言葉だ




「見たいのか?」

代わりに出た言葉はコレだった



「この部屋から見れるんだ。行く必要は無い」



部屋の一番大きな窓を指さす



「今日はこれから誰か来るのか?」



ルーファウスが笑いながら俺を見た



「なんだ、心配してくれるのか?」



「一人で花火見てろ」




勢いで部屋を出た
その直前見たルーファウスの顔は、微妙な表情だった



笑ってるような無表情のような、なんかあったのか?

















会場まで来て、ティファに電話をかけた


「クラウド!今どこ?!」


電話の声で、嬉しそうな顔のティファが頭に浮かんだ


「来れそう?」



「すまん、ちょっと用事が出来た」


なぜそう言ってしまったのか自分でもわからない

人ごみの中の電話で、この花火大会の会場に来ていることは
ティファは気付いているかもしれない


「…そっか。残念だけど仕方ないね。気をつけてね」






少し歩くと、突然肩を叩かれた

ツォンとイリーナだ



「…社長は?」


「…家だろ」



ツォンが大きなため息をついて空を睨んだ。


「まったくあの人は…」

そうつぶやいてすぐにイリーナの方に向き直った



「すまん、イリーナ」


「行ってくださいツォンさん」



「なあ」



俺は口を挟んだ



「何でそんなに一人にするのが心配なんだ?」


これはずっと疑問だった


星痕も治ったよな?

そんなに危険か?そこまで弱いか?



「…いつ発作があるかわからないというのが一番の理由だ」



「何の?」



口を開きたくない、という顔をするツォンを見て
イリーナが口を開いた



「ツォンさん、行ってください」



ツォンが少し歩き出すと、イリーナが俺に話しかけた



「発作自体はウェポンの攻撃の後遺症らしいんだけど
社長、たまに生きてるのに疲れてるように見えるの」



俺は大きなため息をついて、まだ近くに居たツォンを捕まえた



「俺が行く」


「何故?」


「イリーナと花火見てやれ」



少し考えて俺はツォンを見た



「あの家から花火見えるのか?」


「まさか。社長は花火は見ないぞ」


「何で?」































「おいルーファウス」


ルーファウスが俺を振り返った瞬間、花火の音が聞こえた





「花火と家族はどうした」


驚きもせず俺を見ている



「花火を見に行くぞ」



車椅子からルーファウスを持ち上げて外に出た



「おいクラウド!何してる!やめろ!」



フェンリルの後ろにルーファウスを乗せ、俺もまたがる



「捕まってないと振り落とすぞ」


バシッと頭を叩かれた

その仕草に少し笑ってしまった



俺の腰に腕を回すのを確認し

俺は緩やかに発進した







会場から少し離れたところに停まる

ここまで来る道はとても悪く、人気は無い
高くてよく見える小さな壊れかけの立ち入り禁止の展望台




花火が上がっている



「何故私がこんな所でお前と二人で花火を見るんだ?」



俺の腰に回された腕が離れた



「あの部屋花火見れないんだろ?何で見れると嘘をついた?」







俺がフェンリルから降りると、ルーファウスが俺の腕を掴んだ


「私も、降りる」


降ろしてから、向き合って両手を取って

ゆっくり手をかけれる柵がある場所まで進む





「なんで連れてきた?」

低めの柵に両手を置いてルーファウスが俺を見た


俺はルーファウスの体勢が安定したのを確認してから
花火を見上げた


「…花火が見たかっただけだ」


ルーファウスの鋭い視線を感じた

コイツ睨んでるな、と思った時、ルーファウスが俺の腕を掴んだ



「他の奴と見ろ。帰せ」



俺はルーファウス腕を掴み返した



「わざわざ!」


ルーファウスが、少し驚いた様に俺を凝視した


「わざわざアンタを連れてきた俺の気持ちを考えろよ」




花火が上がり続けている


ルーファウスは俺の様子を伺うように、覗き込むように見ている



「…なに…?」



俺は柵にルーファウスを座らせて、両手でルーファウスの腰を掴んだ



「花火に誰かとの思い出があるんだろう?」


ルーファウスが顔を強ばらせ
俺を睨んだ


「何を言っている?」

「ツォンが、アンタは花火を誰かと見て以来、見なくなった、強い思い出があると」


ルーファウスが自分の腰を掴む俺の手に、手を置いた



「確かに…花火で思い出す人はいるが…もう会うことがない相手だ」


俯くルーファウスの額に、俺は自分の額を当てた



「だったら、違う思い出を作ればいい」

俺と見て、次は俺を思い出せばいいと思った



俺は自分で何が言いたいんだか

何を言っているんだかよくわからなくなっている気がする


ルーファウスが自分の唇を噛んだ

強く噛んだんだろう、赤く今にも血が滲みそうな色だ


その唇に唇を重ねると、ルーファウスの力が少し抜けた


両手を俺の肩に乗せ、軽く腕を回す









呼吸を整えようと唇を離すルーファウスに、俺はそれを許さず

すぐにまた口付けた




一際大きく華やかな花火が上がった




俺もルーファウスも

夜空に浮かんでは消える大輪の花を見上げた





「きみは、たまに怖いな」


笑うルーファウスの後ろに花火が上がり続けている


「なにが?」


こういう時も、優しい声すら出せない自分に気付く


「クラウドが私に優しいって怖いじゃないか」



ははっ、と声を上げて笑うルーファウスの頭を

ぐしゃぐしゃに撫でてやった


「優しくしてるつもりなんか無いぞ!」


「わ!やめれ!」


笑いながらルーファウスが俺の頭も派手に撫でた





「ところで家族との予定は?」


「断った。ツォンがイリーナとの約束を断ってお前の所に
戻ろうとしたからさすがに不憫で」


「なんだ、私に会いたかったんじゃないのか?」


もう一度俺はルーファウスの頭を激しく撫でた



崩れた髪形を、互いに軽く直しながら話す



「アンタはなんで何も言わずに一緒に見てるんだ?」


「キミが有無を言わせずに連れてきたんじゃないか」


「…」


「それとな」


ルーファウスは少し嬉しそうな顔でフェンリルを見た


「私はあのバイクの音が好きだ。乗ってみたかった」



俺は何を言っていいか分からず
乱れた髪形を軽く直した


「いつも私のところに来る時、帰る時、あの音を聞いている。
心地いい音だ。バイクは私も好きだからな」


「乗れるのか?」


「足がこうじゃなければな」



「…アンタ家に閉じこもってばかりだからな。
気が向いたらたまに乗せてやるよ。俺の後ろだけどな」



少しルーファウスの顔が明るくなった気がした



「期待しないで待ってるよ」







「まだ花火を見るのは嫌か?」



ルーファウスが空を見上げる



「いいや。今はそうは思わない」



「また見るか?」


「さあ、そうだな、私が歩けても、キミがフェンリルに私を乗せて
花火がよく見える人の居ない所まで連れてきてくれると約束するなら見たいかもな」


「注文が多いな」


「あ、笑った」



ルーファウスのその言葉に気付いた

俺は笑っていた


そう言ったルーファウスの顔も笑っていた




花火が終わり、また俺はルーファウスを後ろに乗せて
フェンリルで帰路に着いた









一気に書き上げたのでもうホント微妙なものになりました。
いつも以上に文章がヘンだね★
セフィロスとルーファウスが花火を見た小説と同時に書いた。
ちなみに話しながらもちゃんと花火は見ているんだと思います。
ちなみにルーファウスが部屋から見れないのに見れると意味不明な嘘を
ついたのは、 もし行こうと言われたら断れないから。
クラウドが言いそうだと思ったのかしら。言いそうにもないよね。

ちょっと進展したかなクラルー