懺悔 |
「クラウド、お客さんよ」 セブンスヘブンの奥で呆けていた俺に ティファが呼びかけた 誰が来たのか見当もつかず 誰かと聞く前に去っていったティファを追った 「やあ」 清々しい顔でツォンが俺に挨拶をした 俺はイヤな顔をして見せるが、ツォンは全く気にしていないようだ 「社長はどこだ?」 「は?」 ツォンにコーヒーを出して、ティファが会話に参加した 「ルーファウスがどうしたの?」 「いや、社長がこの店に行くといっていて…いないのか?」 「そんな奴はいない、帰れ」 「クラウド!」 ティファに名前を呼ばれ、俺はため息をついた 「ここには来てないわ。まさかルーファウス、一人で外出したの?」 ツォンの話はこうだ セブンスヘブンに行くと言ったルーファウスを ツォンがこの店まで送ってから 近くに来ているイリーナと合流するはずだったらしい 少し仕事があるらしい イリーナを先に見つけてしまったツォンが イリーナに気を取られているほんの少しの間に ルーファウスが消えたらしい 「イリーナに気を取られて?」 ティファがその部分を聞き返すと ツォンが顔をこわばらせた 「絡まれていたから何かあったらいける体制を取っていて イリーナが絡んできた連中を見事に撃退する姿を見届けて…」 ぷっと笑うティファを小突いて ツォンを見た 「で、さらわれたなんて可能性はないよな?」 「さらうなら車椅子までなくなっていないと思うんだ。 社長が自ら脱走したとしか思えない」 「電話はしてみたか?」 「車の中で鳴ったよ」 「ねえツォン、イリーナと合流するのよね?行かなくて大丈夫?」 「しかし社長が」 「大丈夫、クラウドが探してくれるわよ」 「勝手に決めるな!」 「そうか、それなら安心だ、よろしく頼むよティファ」 「任せといて」 「おい!」 俺の目の前で俺抜きで、俺の行動が決められた 「女の子を待たせちゃダメよ」 そうだな、と頷くツォンに俺は叫ぶ 「ルーファウスは男だ!」 「何言ってるのよ、イリーナのことよ」 今にも噴き出しそうなツォンを睨んだ 間違ってもティファは睨めない… ツォンが店を出た後、俺はフェンリルのキーを掴んだ 「ティファ、何かあったらすぐ連絡しろ。 それともしあの野郎が来たらツォンに連絡してやれ」 ふふっと笑って「わかったわ」とティファが返事をした。 まだそこら辺に居るなら 相当目立つ奴だからすぐ見つかるはずだ 野良猫を見つけるよりも簡単なはずだ これは徒歩で探すべきか? 治安が良いわけではない 一人でほっつき歩くのはあの男には危険すぎる 神羅に恨みがある奴はアイツの顔くらい知っているし あいつで金儲けをしようと思う奴だってたくさんいてもおかしくは無い 一時間近く経った頃、廃墟になった建物に上がり 壊れた窓から下を見下ろした 「別にさらわれてても何かあってもこれはツォンの責任だよな…」 男に囲まれたイリーナを心配になって油断する その心理はわからなくもない。 きっと俺も心配になる。 その時丁度真下で騒ぐ男の声が聞こえた その柄の悪そうな数人の男の目の前にいたのは 黒いシャツの金髪男 「まさか」 すぐ後ろにあった車椅子で確信した 「ルーファウスだ」 白い上着とシャツを脱いでたのか 車椅子から立ち上がってその男達と対峙するルーファウスを 少し見ていようと思った あいつ、一歩二歩しかあるけない筈 相手はドラッグの中毒者らしい 銃声が聞こえて 周囲が騒ぎだした 銃は相手の男によって発砲されたものだった よく見るとルーファウスの傍らには 小さな子供が居た 原因はあの子か? 他の住民にも危害が及びかねない 男達がルーファウスにかかった瞬間に 俺は窓から飛び降り、ルーファウスの前に降り立った 「クラウド」 「アンタなにやってんだ」 ルーファウスに背を向けて男達を見る 俺の名前を呼んだルーファウスの声がなんだか間抜けで 顔が見てみたかった 素手で男達を殴りつけて そいつらはあっさり気絶した 振り返ると、 ルーファウスが車椅子に座り 子供に話しかけた 「こわかったか?気をつけるんだぞ」 それは見たことも無い優しい顔だった 車椅子より二歩くらい前を歩く 「アンタなにしてたんだ?」 「ツォンがイリーナに夢中になってる時 あいつらに連れて行かれる子供を見かけてな」 イリーナを心配そうに見つめるツォンの顔を頭に描いて失敗した あまり想像できない 「まったく心配かけるなよ」 「…心配したのか?クラウドが?」 足を止めてルーファウスを見下ろした 「俺じゃない!」 「そうか?」 「ツォンに無理矢理押し付けられたんだ」 「しかし、随分と派手な登場だったな」 俺の顔を見もしないで満足そうに車椅子を走らせた 「格好良かったぞ」 「バカにしやがって」 綺麗な鐘の音が聞こえて足を止めると 細い路地の奥に小さな教会があった 「そういえばクラウド、君は教会に住んでいたんだったか?」 「ここじゃないけどな」 教会に入ると、祭壇だけが光に照らされていた 「思い出してるのか?」 あの古代種を、と続けるルーファウスを無視して祭壇の目の前まで歩いた 確かに俺はエアリスを思い出している エアリスとそしてザックスを 祭壇に上がり、光を浴びる 光のほうを向いて目を閉じた 後ろ向きな感情は俺に染み付いたクセのように 後悔ばかりを思い出させる 鐘の音がやんだ はっと気づくとルーファウスの姿が無いことに気付いて 教会を飛び出した 教会の入り口で、ルーファウスと目が合った 「祈りでもささげてきたか?」 どちらかというと、懺悔に近い ルーファウスが教会を見上げて言った 「私には祈りも懺悔も必要ない。ここは私には似合わないしな」 「俺には…」 「…どちらも必要か?」 俺は口をぐっと閉じて、そこに座り込んだ 「アンタには人並み以上に懺悔があるはずだ 神羅に家族を奪われて一人になった子供なんか少なくない。 神羅の存在が無ければ起こらなかった惨劇も多い。 アンタは…」 目を伏せて言葉に聞き入るルーファウス こいつはちゃんとわかってるはずだ なのに、罪をたくさん犯しているのに ぽつりとルーファウスの頬に何かが落ちて流れた 「続けろクラウド」 雨が降ってきた 「アンタが懺悔する相手はたくさんいるはずだ!」 俺は立ち上がって 急激に激しくなる雨に打たれながら 叫んだ 「少しは自分の罪を恥じろ!」 ルーファウスが薄く笑って空を見上げた 「わかっている。私はあの時死ぬべきだったということくらい」 「どうして生きてる」 「なぜ死ななかった」 「代わりに死ねばよかった」 そういった言葉は ルーファウス神羅が生きてると知った神羅に恨みを抱くものから ルーファウスが言われ続けてる言葉で。 でも、そうじゃないだろ、 いや、そうだ、 何ていえばいいのか この罪人には何ていえばいいのか 「神羅カンパニーの罪も立場もわかっている。 私の立場も」 俺はイライラとしてきて、地面を蹴った 親を失った子供も、子供を失った親も どんな気持ちか、なんてそんなのは はかりしれない程傷ついて ジェノバも宝条もセフィロスも あいつらの罪は神羅の罪でもあるじゃないか 「私は祈る言葉も懺悔をする言葉も持ち合わせていないんだ。 例え民衆の前で詫びて頭を下げても、誰がそれを信用するだろう」 「言葉なんか何の意味も持たない。私は、許されなくていいんだ」 「だったら!」 叫んだ俺を、ルーファウスが見上げた 「お前を護衛する俺の行動は無意味なのか!」 「君は!」 珍しく大きな声を出すルーファウスに驚いて 俺は目を見開いた 「私が好きで生きてると思うか!」 ルーファウスは 泣いているのかもしれない それは雨かもしれない 泣いているのは俺かもしれない それも雨かもしれない 「畜生!」 生きていたくも無いのに生かされている絶望感を 俺は知っている あのときの俺と同じ気持ちなら そうなら俺はどうしてほしかった? そっとしておいてほしかった でも、それ以上に助けてほしかった 心を それに気付いたのはその時じゃなかった気がする みんなに助けられた、その時 俺は少なくとも仲間の優しさや大切さを知っている こいつは タークスだっているじゃないか 「アンタは、どうしたい、どうしてほしい」 俺の言葉に、普通の顔に戻っているルーファウスがつぶやいた 「そんなことに興味なんか、無いだろう」 どうしようもなく腹が立って、悲しくなった 「興味の無い奴を、まして男なんかを、 俺が好き好んで抱くわけ無いだろ! 興味がないならアンタなんか抱かない!」 次の瞬間立ち上がったルーファウスが 俺の頬を手のひらで叩いた 「ばっ、バカかお前!バカか!」 思ったよりも強い力で叩かれた 焦るような、そんな顔で俺を見ている はっと気付くと、大雨ではあるけど それは歩行者も居る外だった。 こっちを見ている歩行者だって、いた 俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ ルーファウスが座り込んで、俺の肩に手を置いた 「正直に言うと、この気持ちの部分はどうしてほしいのかはわからない でもこの世界を、どうにか再建させたい」 何かを言いかけてやめたルーファウスが俺の手を引っ張った 「帰ろうか、そろそろ風邪を引いてしまう」 「何を言いかけた?」 「何も」 「言え」 「忘れてしまった」 苦笑しながらルーファウスは車椅子に戻った 俺が立ち上がり、ルーファウスの頭に手を伸ばすと 何者かが近づく気配を感じた 「お迎えにあがりました」 「ツォン」 傘を俺に差し出すと、ツォンはルーファウスに笑いかけた 「本当に風邪引きそうな顔をしていますよ」 もう一つ持っていた傘を開くとツォンが俺に来い、と合図をした 俺は車椅子のスピードに合わせて歩いて 近くに停めてあった車に乗り込んだ セブンスヘブンに着くと すぐにティファがタオルを出した 「ちょっと大丈夫?!」 イリーナもここで待っていたらしく ツォンにタオルを差し出した 「よく居場所が分かったな」 ルーファウスがツォンに頭を拭かれながら言う 「クラウドの声が聞こえたもので」 はっと俺は顔を上げてルーファウスを見た ルーファウスも俺を見ている 「社長になんていう告白を…」 タオルで思い切り力を込めてツォンを叩いて 俺はツォンを押しのけた 「お前は自分で拭け!」 ルーファウスにタオルを渡して、俺はツォンのタオルを取り上げた 「何かあったんですか?」 イリーナがツォンに聞くと、ツォンは俺を指さして クラウドがな、と口を開いた 不思議そうに俺を見るティファの視線が痛い 「くだらないことで言い争いをしてしまっただけだ。 解決済みだから安心してくれ」 ルーファウスがティファに、少し口角を上げて言った 「そうだったの」 そんなことに夢中になってこんなに濡れるなんて子供みたい、と ティファが笑った ティファの笑顔に癒されながら ルーファウスに視線を移す ルーファウスは少し悲しそうに 床に溜まった水滴を眺めていた あんなこと、言わなければ良かった 胸が痛かった END |
たまに感情的になるACルーも居ないことは無いはずだと。 クラウドはまだ自分がルーファウスを好きなの認めたくないです。 支離滅裂なクラウドはクラウドらしいと思うです。 どうでもいいけどルーファウスが教会に居たら私は 天使だと思ってしまうと思う(病気だから) |