予感









神羅という看板を背負って

タークスは走り回る





タークスが出払うときは、俺がルーファウスの警護に当たる

契約をした





それはルーファウスのいない所


セブンスヘブンにツォンが来た時にだ。












ルーファウスはウエポンの攻撃で

体のあちこちに損傷を受けたらしい。




「たまにまだ、後遺症が出るのが、耳鳴りや眩暈だ

脳にもごくわずかだが、後遺症が残っている。

言語障害がまれに見られる」



「重度なのか?」



あいつを見る限り、そうは見えなかった。

余裕な顔をして車椅子から立ち上がる姿を見たことがある。

それは足が不自由だと感じさせないほど、しっかりしているように見えた。





「今はもうかなり良くなっているが、それでもまだまだだな」



ツォンは、コーヒーを飲みながらゆっくり喋る






「たまに意識を失って倒れることがある。
私はルーファウス様が寝てる時に
そのまま起きないのではないかとたまに不安になる」



医者も、その可能性は否定していないと付け加えられた





それでも受けてくれるか、と聞かれ

俺はそれに同意した。





































ツォンに先導されて入った部屋に

いつもの車椅子姿のルーファウスがいた






あの日から会うのは初めてだから

俺は少し緊張していた





あの日と違う部屋

定期的に居場所を変えているからだ









ありえないくらい普通に接してくるルーファウスに

俺はあの日のことが夢だったのかとさえ思えてきた



だから俺も、何も無かった顔をして見せた






「痛みますか?」



ツォンがルーファウスの首に薬を塗り、包帯を巻きなおしている



「もう慣れた」





巻き終わり、ツォンはルーファウスに軽く頭を下げた





「それでは、行って参ります」









ツォンがすれ違いざまに、俺の肩を軽く叩く




「クラウド、こっちの部屋を使ってくれ
ベッドもシャワーもある。
それでは、後は頼んだぞ」





俺は二人きりになるのに少し抵抗があった





ツォンが部屋を出た後


ルーファウスが俺を見上げた





「引き受けてくれるとは思っていなかったから
驚いているよ」



俺はそこにあったイスに腰をかけ、目線を同じ高さにする



「やめたくなったらいつでも降りるつもりだ」



「そうか、そうだな」




目を伏せて笑みを浮かべる


その目に、数日前の夜に見せた表情を思い出した




「アンタは」


つい、出てしまった声だった。

どういうつもりだったんだと聞きたかった。



聞く勇気が無くて、他の言葉を捜す



「ん?」


首を少しだけ横に傾げて

ルーファウスが聞き返す



なんでもない、それすらも言えなくて俺は黙ってしまった




「何だ?クラウド」



言おうとしても言葉に出なくて

俺は立ち上がった



「くそ…」



つい出た呟きは、こいつに聞こえただろうか




「なあクラウド、今の私はお前にはどう見える?」





どう答えていいかもわからず

俺は興味無いと切り捨てた。





ルーファウスは

前の狂気じみた自信に満ちた顔ではない


もっとスマートな表情と、優雅なたち振る舞いの中に垣間見える

自信に満ちた顔になっている


一気に大人びた気がする



でも、腹の中は読めない







「惨めな姿だと思うか?」



バカらしい、と鼻で笑うと

ルーファウスはまた目を伏せた



「そうだな」




ティファやみんなにするように

なぜもっと素直に接することができないんだろう





ルーファウスが棚に手を伸ばしながら立ち上がる

バランスを崩して床に倒れ込んだ


「おい!」


手を伸ばした俺の手を優しく突き返す



「いい」



車椅子につかまり、ゆっくりと立ち上がり

また棚に手を伸ばし、写真立てを取ると

俺に差し出した




「ツォンに聞いたんだ」




受け取った写真立ての中には

ザックスと俺が写っていた

まだ俺が神羅にいた頃


まだザックスが



生きていた頃…






こんな写真、初めて見た





「これは…」



「ツォンが書類整理をしていて見つけたらしい。君にあげようと思ってな。」



ルーファウスは写真の中の俺を幼いな、と笑った


そして、好きに過ごしていてくれと俺に言うと

隣の部屋に入っていった
















うたた寝した小一時間で

俺はザックスの夢を見た



内容は忘れたけど、確かにザックスが夢の中で、笑っていた














ルーファウスが入っていった隣の部屋をノックする

反応がない






部屋を開けてルーファウスの姿を確認した



車椅子に背中を預け、窓をあけて、柔らかい風に髪を揺らされ
目を閉じている



正面に回って顔を覗き込むと


小さく微かに寝息が聞こえた




前髪に軽く触れ、指でルーファウスの髪を優しくかきあげる




ルーファウスが小さく息を吐く



俺は手を引っ込めると

風に揺れるカーテンをあけて辺りを見回した



気配がないことを確認すると

窓枠に座って、眠る無防備なルーファウスを眺める



柔らかく、優しい時間が流れる







「クラウド」




突然小さく呟かれた言葉に動揺して

立ち上がった



ルーファウスに寄ると

薄く目を開けて俺を見上げた




「すまない、眠ってしまった」



「別にいいよ」


また窓枠に腰をかけた




ルーファウスが額を押さえて、軽く頭を振った

深く息を吐き、天井を見上げる姿を眺める








下を向いて、こめかみをおさえて


自分を抱きしめるようにして屈むルーファウスに駆け寄った






「今度はなんだよ」





青ざめて震えるルーファウスに

異常を感じた




「医者呼ぶか?」




ルーファウスの正面に膝をついて

肩をつかむ





「大丈夫だ、たまにある事だから
部屋に行っててくれ」





戸惑うことしかできずに

俺はそのまま動けなかった





「大丈夫だ」





ルーファウスは苦しそうな顔で、俺に笑顔を向けた








いまだにルーファウスの肩を掴んでる俺に

ルーファウスは声を振り絞ったように言った



「注射、できるか?」




ふいの質問に俺は首を縦に振った



「何の薬だ?」


「…鎮痛剤だ」



ルーファウスの呼吸が乱れている




「悪いが、上着を、脱がしてくれ」




どこに刺すと聞くと、左肩の後ろを指さした



ルーファウスの上着を脱がして


シャツのボタンを外す



苦しそうな顔でルーファウスが俺に

変な顔だ、と笑った





俺はどんな顔をしていたんだろう




ルーファウスの左肩を出して、素肌を撫でる



「ここでいいか?」



頷くルーファウスを見て


その部分にもう一度触れてから

渡された注射の針を刺す





注射器の中の液体をルーファウスの体に押し込む

かすかに見える綺麗な横顔が苦痛に歪んで

俺は心臓が早くなるのを感じた




針を刺した部分から、鮮血が滲む



なんか拭く物はと聞くと

膝にかけていた布を差し出された



俺はルーファウスの頭を小突いて



その血を舐めた




なんでこんなことをしたのか自分でもわからない

このときは自然にこう、当たり前のようにした





昔母さんが、俺が本当に小さい頃

小さな傷口は舐めてくれていたのを思い出した








ビクっと体を震わせて

慌てて俺のほうを向くルーファウスを抱き上げて

ベッドに横にならせた




「休んでろよ」





黒いシャツだけ着せて

ボタンをしめる


その作業をすべて

ルーファウスはじっと見ていた




まだ、苦しそうだ




俺が離れようとした瞬間

ルーファウスが俺に手を伸ばしたのに気づいて

俺は振り向いた




「なんだ?」




「いや、すまなかったな」












ルーファウスの上着と白いシャツをソファに放り投げる



「アンタ包帯巻いてシャツ二枚着て上着まで着て、暑くないのか?」




冬でもないのに




体の線を隠してるのかと聞くと

ルーファウスが苦笑した



場数を踏んでる俺とは違う、体の線


これも環境の違いか







「君は体温が高くていいな」




少し沈黙が続いたと思うと


ルーファウスは眠っていた








ベッドに腰を下ろし

汗でしっとりと顔に張り付いた髪をどかせて

髪をすく






端整な顔立ち


男の俺から見てもこいつは「いい男」だ




どこからどう見ても男だ






それでも俺は








額に口付けをして

唇を撫でて


唇に口付けた
















































頭を優しく撫でられている感覚がリアルだった


夢だと思って目を開けなかった



頭がハッキリしてきて目を開けると



ルーファウスが穏やかな顔で俺を見ていた



すぐ目の前にある顔に驚いた


俺の表情も驚いていたんだろうか




頭を撫でていたのはルーファウスだった





「ベッドにちゃんと寝かせてやろうと思ったんだが
起こしてしまいそうでな」




自分にしっかり布団がかかっているのに気づいた




俺はベッドから足を投げ出して

ルーファウスの隣で横になって寝入ってしまっていたんだ



同じベッドで寝ていることに気づいて

またあの日のことを思い出した




「あー…そうか」



どう反応したらいいか分からなくて


俺はそんなことしか言えなかった


こんなことばかり考えてしまっている自分が嫌になって





俺の髪を撫でながら、起きるか?、と聞くルーファウスに

俺は首を横に振った




上にずりあがり、ルーファウスの首に腕を回す




「まだ、眠い」




「君は本当に体温が高いな」




ルーファウスの髪が鼻をくすぐる










「寝てるのか?」



俺を見上げるルーファウスと目が合って


俺は口付けをした





ルーファウスの腕が背中に回り

俺はそのまま上体を起こしてルーファウスを組み敷いた








































































「クラウド」



うつ伏せでルーファウスが俺を呼ぶ


声は少し疲れが混ざっている




「なんだ」




ぶっきらぼうに答える俺は

ルーファウスにはどううつってるんだろう



目が合いそうになったのに

視線を外したのはルーファウスだった





「…呼んでみただけだ」






ふっと笑ってしまった


そうするとルーファウスもふっと、楽しそうに笑った


こんな笑顔は初めてで


心臓が踊る





顔を見られないように背中を向けようとして

それでは体だけと思われるかとか、そんなことを少し考えて

ルーファウスを抱きしめて




それがルーファウスにとって相当意外な行動だったのか

ビクっとする肩を強く掴んだ









「ルーファウス」




「なんだ?」






「呼んでみただけだ」







「ははっ」









俺はやっぱり好きなんだろうか


ルーファウスを



こんな男を





ルーファウスの体温に安心して




眠りについた
































FF7の中で一番の口下手(感情を出すのが苦手)なのはクラウドじゃないかな。
こんな奴を好きになるなんて認めたくないんです。そりゃそうよねウフフ。
社長の手で素直に変わっていく様を(中略)
車椅子のルーを見て思ったのは、どこまでの状態なんだろうと。
ACあたりでの私の脳内では立てるけど歩くのは2、3歩で限界ってカンジで。
あれだけの爆破で後遺症が体だけのはずはないと思い、元々脳が逝ってるから
多少脳に障害あっても私個人的には奴ならそれも萌、と(略)
一応ツォンに別々に寝ろオーラを出させましたが失敗です。

どうでもいいけど私社長本命なのにクラウドのカッコよさに倒れそう(AC)