あおぞら |
「ねぇまだ終わらないの?ソレ」 カダージュはつまらなさそうにルーファウスを見ている 「まだだ。そんなに暇なら他に行ってろ」 「ヤだよ」 少しの沈黙の後、カダージュが この部屋暑いんだよ、と言って窓を全開にした 風が強く吹いて ルーファウスの目を通している書類がバタバタと飛ぼうとして ルーファウスは慌ててそれを押さえた 「こら!閉めろ!」 「やだよ。暑いじゃないか」 ルーファウスはデスクに突っ伏して、また顔を上げて 風が弱くなると カダージュを見ずに書類を引き出しにしまった 「わかった、話をしよう」 カダージュが満足そうに笑ってルーファウスの前に座った カダージュは最近 話す事が無くてもルーファウスの元を訪れる ルーファウスはそんなカダージュを好きにさせている 「社長の話をしてよ」 「そう言われてもな」 「なんでもいいよ」 ルーファウスは眉間にしわを寄せてため息をついた 「話す事が見当たらないな」 「つまんない」 その時ルーファウスの携帯が鳴って ルーファウスが携帯を手に取った 「誰?」 形態の液晶を見て、ルーファウスが少し笑った 「誰だよ」 ルーファウスから携帯を取り上げ カダージュは携帯を見る 液晶には名前が表示されていない 通話ボタンを押そうとするカダージュの手から ルーファウスは携帯を取り上げた 「やめろ」 「…でないの?」 カダージュはルーファウスを睨む プツリと携帯が鳴り止んだ 「かけなおせば?」 「いい」 カダージュはひどく不満げだ 「かけなおしてあげようか?」 ルーファウスが苦笑しながら携帯をデスクに置いた 「誰だったのかって聞いてるんだけど」 「お前の知らない人だ」 「なにそれ」 また強い風が吹いて カダージュとルーファウスの髪が激しく揺れた 「カダージュ、窓を閉めろ」 「気持ちいいじゃない」 そしてまた沈黙 「ねえ社長、全々歩けないの?」 カダージュがルーファウスの車椅子を見て すぐ目の前まで歩み寄る 「さあな」 ルーファウスは興味無さ気に窓を見ている 突然ルーファウスの両手を掴みあげ カダージュはルーファウスを立たせた 驚いた顔でルーファウスが自分の足を見る 「歩いてよ」 ルーファウスがカダージュを見ると 楽しそうな視線を向けていた 「やめろ」 「歩いて」 ルーファウスは いきなり手を離そうとするカダージュの腕につかまった 「何がしたいんだ」 「歩いてる社長を見たいだけ」 「断る」 カダージュを軽くはねのけるように押して ルーファウスはそのままストン、と車椅子に器用に座った 「社長つまんない」 「私は楽しい話がうまい人間ではないのでな」 「それ乗りたい」 ルーファウスが小さく噴出すように笑って ソファまで移動した 車椅子から降りるとカダージュに乗れ、とジェスチャー 「どうやって動かすの?」 ルーファウスが簡単な操作を教えると カダージュがぐるっと部屋を一周した 「ラクだけど歩いたほうが早いね」 「だろうな」 ソファに座るルーファウスからわざと離した場所に車椅子をとめて カダージュがルーファウスに近づく ルーファウスの膝の上に頭を置いて横になった 「あー、青空が見えるねー」 「そうか」 「…ねえ、社長の母さんは?」 「ん?」 窓の外を見ようとしたルーファウスがカダージュに視線を落とす 「社長の母さんだよ。社長はさ、知ってるんでしょ?」 ルーファウスが右の眉を掻いて視線を外にやった 「そんなに大事か、お前には母が」 「早く会いたいよ」 母を思う純粋な気持ちを考えると ルーファウスの胸にもやもやしたものが生まれた カダージュがルーファウスの右手を掴んで 黒い部分に口付けた 離そうとするルーファウスの力のほうが、弱かった 「社長の中にもいるんだよね、母さん」 忌まわしい ルーファウスはそう言おうとしてやめた 「社長の傍って居心地がいいな。ねえ一緒に行こうよ」 「断る」 「冷たいねぇ」 カダージュのしていることが許されないことだと そして自分はカダージュを騙していると でもカダージュを見ていると、ルーファウスは時々 忘れたはずの痛みを思い出す 「どうにもならないものな」 カダージュに落としたルーファウスの視線が カダージュの真っ直ぐな視線とぶつかる 「何が?」 「私がお前に出来ることは無いということだ」 「たくさんあるよ」 「無いんだ」 ルーファウスがカダージュの手袋を外した 「何?」 その手を窓に向けて眺める 「何やってんの社長」 その手のひらにキスをした 驚いて目を丸くするカダージュを気にせずに 少し長めにキスをした 唇を離した瞬間カダージュが飛び起きた 「今のどういう意味?」 ルーファウスがカダージュの膝に頭を乗せて 寝転んだ その行為にもカダージュが驚いている ルーファウスが薄く笑いながらカダージュを見た 「そうだな、青空が見えるな」 「社長!」 この子らに、新しいなにかが見つかれば この子らは思念体ではなく人になれるんじゃないかとさえ思った 不可能な希望だった 「子供には愛情が必要だな」 「子供じゃない!」 ジェノバの子供たちはいつまで苦しむのか 彼もまだ苦しんでいるのか 「社長?」 疑問がありそうな顔で覗き込むカダージュの頭を ルーファウスが撫でた 「ヘンな人だよね社長って」 「褒め言葉だな」 「うん」 ルーファウスが青空の向こうを見るように視線を遠くに向ける 涙が出そうだった 空が青く、広がっていた |
少し平和にいってみた 部屋の仕組みとかママボックスとか無視無視。 ACの子供たちは本当に悲しいなーと思うことがある |