休憩場












屈みこむカダージュの目が

無理矢理ルーファウスの瞳を捉えた




「社長の目の色は、きれいだねえ」




セフィロスと同じ色のカダージュの瞳が

ルーファウスに彼を思い出させる





「なのにどうしてそんなに胸の中は空っぽなの?」





心まで見透かしてるというように、鼻で笑うカダージュに


白いローブで顔を隠しているルーファウスは
微動だにしなかった





「お前にはなにがある?」



ルーファウスの言葉にカダージュがぴたりと動きを止めた





「僕の目的は知ってるでしょ」




フン、と笑うルーファウスの

白いローブが揺れた





「母が恋しいか」



「社長は、恋しくないの?誰かが」





カダージュがルーファウスに跪き



「見せてあげようか」





セフィロスの姿を一瞬










ルーファウスがカダージュを見て笑っていた


心底苛ついている気持ちを隠すように





「それは幻でしかない。カダージュ、お前はセフィロスにはなれない。
…お前だけではな」







カダージュが、ローブの上からルーファウスを

手の甲で殴った




「社長、不自由な体でかわいそう
口には気をつけてよ」





「今のお前はセフィロスやクラウドの三分の一以下だ」




思い切りカダージュに殴られ

車椅子から白いローブごと床に落ちた




「言ったでしょ、口には気をつけてって」






カダージュは
ローブを引っ張り、ルーファウスの顔をさらけ出させた





「ふうん」




ローブを隣にぱさりと置き
カダージュがルーファウスの顔をじっと見つめる





「きれいだね」





ルーファウスが鼻で笑い
目の前にあるカダージュの揺れる髪に触れた





「髪が邪魔だ」





ルーファウスはセフィロスを思い出さないように

冷静に、考える








「カダージュ、話し相手になってくれるのはありがたいが
もう少し礼儀正しくできないか?」




「なにそれ、つまんない」








ルーファウスの前に座り込み
カダージュはこれでもかと見つめてくる




「楽しいか?」




不愉快そうな目でルーファウスがカダージュを見る





「たのしいよ」






負けずにカダージュを見ているルーファウスが
くすりと笑った





「なに?」



カダージュが聞くと
ルーファウスが目を離した





「いや。…さあ床は固い。
立ち上がるかソファに座れ」





車椅子を掴み立ち上がろうとするルーファウスの手を
カダージュが掴んで

ルーファウスはまた床にぺたりと座り込んだ





「教えてよ」







ルーファウスが伏目で

どこか懐かしそうに自分の手を見る







「お前は本当に綺麗だ、そう思ったんだ」







不思議そうな顔でカダージュがルーファウスの手を掴む



ルーファウスの手がビクリと動いた




「社長のほうがきれいじゃない
僕は社長から見て綺麗なの?」




参ったな、と小さく笑ってルーファウスが
カダージュの手を握り返した





「お前は純粋で、綺麗だ」







なおも不思議そうにカダージュがルーファウスを見る



「社長、こっち見て」




ふとカダージュを見たルーファウスが驚いて上体を反らした



カダージュがルーファウスの唇に自分の唇を重ねたのだ







「したいと思ったからキスするのってダメ?
ねえ社長、社長もキスしてよ」






ねだるカダージュにルーファウスは困ったように
笑顔を見せた






横に置かれていたローブをカダージュにばさりとかぶせて
カダージュをローブで覆うと

ローブの両端をを引っ張ってカダージュの額にキスをした







そのままカダージュはルーファウスの胸にもたれこみ

抱きついた





「気持ちいいね」



「そうか?」




「社長は気持ちよくないの?」




「床が痛いんだ」






がばりと起き上がったカダージュが

細い腕で軽々とルーファウスの腰を持ち上げた






「うわ」




離せ下ろせという暇も無く

カダージュがルーファウスをベッドに放り投げた





驚くやら焦るやら笑えるやら

ベッドに沈みながらルーファウスが考える


怒ったほうがいいだろうか







「これなら痛くないよね
そうしたら社長も気持ちいいよね」






噴き出しそうになったルーファウスが

子供のように甘えてくるカダージュを抱きしめた






上に乗られてもさほど重さを感じない





「僕はね社長、どうしても社長が憎く思えない」





その言葉に少し、ルーファウスの胸が痛んだ



「私ははじめから、お前を憎くは思っていないよ」



あやす様にカダージュを撫でる


そう、憎いのはジェノバ。



彼を奪い、この子らをこうも苦しめているな、と、ふと思う





カダージュが頭を摺り寄せてきて
ルーファウスの顔に顔を近づけた






泣きそうな気持ちを隠すようにカダージュが
またルーファウスにキスをした



ルーファウスは抵抗も驚きもせず

受け入れた



唇を重ねるだけの優しいキスだった









「僕の今の気持ちが、僕にはよくわからないよ」



ルーファウスがカダージュの髪を指に巻きつけて遊んでいる



「もう、聞いてるの?」



「聞いてるよ。ちゃんと聞いている」





優しく笑うルーファウスに
カダージュは同じ表情が作れず悲しそうに俯く




「社長みたいに、笑いたいよ」





ルーファウスの星痕の跡を優しく撫でて

その手を自分の頬に当てる





「笑顔を無理に作ろうとするな。
それになカダージュ、そんなにいっぺんに考えすぎると混乱するぞ」



「色々なことを考えても、初めてのことばかりでも
社長は混乱しないの?」



もう一方の手を、ルーファウスはカダージュの頬に添え




あぁ、と頷きながらルーファウスが喋った

「するよ。きっとみんなする。それはごく普通のことなんだ」












ばさりと、カダージュはルーファウスを押し倒すような体制で

上にのった



そしてまたキスをして


「こういう時はどうしたらいいの?」





ルーファウスは
押さえつけられている手首から力を抜くと、口を開いた





「どうしたいんだ?」







表情が動かないルーファウス






カダージュがルーファウスの首を引っかいて

首を絞めた




「うあっ…」




顔をゆがませ苦痛を訴えるルーファウスの意識が遠のく







はっと表情を変えたカダージュがその手を離した





「社長!」





激しく咳き込み、ルーファウスが薄く目を開いた





「殺したいか?私を」






首を思い切り派手に横に振り
カダージュがルーファウスに抱きついた





「ちがう、死んでほしいなんて気持ちじゃない
でも、なんか、…



わかんないよ」






カダージュを抱き寄せ、ルーファウスが背中を軽く叩く


それは母親が子供をあやすようなしぐさだった







「社長、僕はね、ずっとこうしてたいと思うのは
気持ちいいからじゃない気がする」



だってキスは他の人にはしたくなよ、と
ねだるようにルーファウスを見る




ルーファウスはカダージュの目を見て

口角を上げた




「目的を見失ってるぞ」



「今はどうでもいい」





内心少し困ったと戸惑うルーファウス。
そのルーファウスの首筋に触れて
カダージュは楽しそうに聞いた





「キスのあとってどうやるの?」



今度こそ噴き出して

ルーファウスが動揺しながら笑った




「子供はそこまで」








子ども扱いしないでよと怒るカダージュに電話が入る






「出ないのか?」




「出たら社長と話せないじゃないか」






カダージュの携帯を取って

ルーファウスが通話ボタンを押した




「あ!何すんの!」




慌てて携帯を取り返し、しぶしぶ電話に出たカダージュ





ふてくされた顔で電話を切ると、立ち上がった







「帰らなきゃ」




「そうか?」





ぱっと明るい表情になって、カダージュがルーファウスに提案した





「ロッズとヤズー呼べばいいのか!」





「帰りなさい」







不貞腐れたカダージュが帰るはずも無く



この部屋はこの日


ルーファウスが疲れて眠るまでとても賑やかだった
















END