トン、と纏められた書類がデスクに当てられて揃えられる
「これを」
纏められた書類が素っ気無くツォンに向かって差し出される
「はい」
ポーカーフェイスで黙々と仕事をこなしていくルーファウスの姿を見てツォンは内心で軽い溜息を吐く
本日の神羅社長の本来のスケジュールはオフ だが急な仕事が舞い込んでその偶の休みは無いものとなってしまった
そう簡単に取れる訳ではないオフの為に数日前からスケジュール調整をして、その日に会う相手との約束もしていた
…のだが…
ポーカーフェイスの下に隠れた機嫌の悪さはツォンからみると隠し通せるものでなく、どう機嫌を取ったものかと思案を巡らせていた
ツォンがファイルに纏めた書類を隣室に控えていた秘書に渡すと再度社長室に静寂が訪れる
手早くキーボードを叩く軽快な音だけが社長室に流れていたが一際高くトン、とエンターキーを押す音を最後にルーファウスの指が止まった
「おいツォン」
「はっ」
「少し休む コーヒーを」
ぐっと解す様に身体を伸ばして息を吐くと椅子に深く身体を預けた
ツォンが一礼して退室するとポケットに忍ばせていたプライヴェート用の携帯電話を取り出す
メールの着信が一件
室内には自分ひとりと分かっているにも関わらず軽く周囲に目配せをしてメールを開く
今日の休みに会う筈だった相手からの、無理をしないようにとの労りのメッセージに僅かに相好を崩す
スクロールした先に続いたメッセージを見て、ルーファウスが慌ててパソコンに纏めてあるスケジュールを開いた
夕食に会食などの予定は無し つまりはフリー
ホッとした様に手早く携帯電話を操作して一件のレストランサイトに予約を入れると次にメールの返信画面を開く
『21時にいつものレストランで』
そうメールの返信を打った所でコーヒーを携えたツォンが戻ってきた
「お疲れの様でしたので砂糖とミルクを多めにお持ちしました」
ルーファウスの前に出されたブルーマウンテンが芳醇な香りを辺りに漂わせる
上品な白い陶器のシュガーポットと揃いのミルクピッチャー ソーサーに添えられたクッキーが気分を落ち着かせる様に揃えられツォンが一礼して部屋の隅に控えた
「ディナーは不要だ 勝手にとる 21時からで構わないな」
その冷静な声に隠れた浮かれた声音をツォンは聞き逃さなかった
「畏まりました では食事の時間を含め2時間程ご自由になさって下さい」
頷いてコーヒーに砂糖を溶かしてミルクを注ぐ 柔らかな色に変わったそれを口に含むと甘さが身体に沁み渡りほうっと落着いた
さて、これを飲んだらもう一仕事だ
ルーファウスの雰囲気がコーヒーを用意しに行っている間に変わった事に安堵したツォンが本日のルーファウスの食事の相手に心の中で感謝の意を送った
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2009.8
ジャンルの違うカスミさんにいただきました!活力!
忙しいのにありがとう!
ルーファウスにはかすりもしてないのにスマン…(笑)
でもまたよろ(略