まだセフィルー仲良ししてない
makeloveより前のお話


雨の匂いと









書類を揃えると、ルーファウスは引き出しから取り出した封筒にそれを入れた


封をして、ツォンに渡すと

ツォンはそれを受け取り、一礼をして副社長室を出る



副社長室の前のセフィロス

ツォンは彼を微かに睨んだ



「ルーファウス様に何の用だ?」


「お前には関係無い」



先にドアに手を掛けたツォンが、もう一度副社長室に舞い戻ると

ルーファウスはコートを羽織っていた



「ルーファウス様、どこへ?」



ルーファウスは不思議そうにツォンとセフィロスを見ると

少し、笑った



「珍しい組み合わせだなあ」


「ルーファウス、どこ行くんだ」

「取引先」

「護衛は?」

「適当。危険はないから下っぱでも…」

「いけません!」

「付いていこうか」



自分より先に言い出したセフィロスを、ツォンは睨む



「セフィロスお前任務はないのか」



ルーファウスは二人を眺め、ふっ、と笑ってから歩きだした



「セフィロス、仕事は?」

「ノルマはないぞ」

「ははっ、じゃあ、運転を」



ため息を吐いて二人を見送り、ツォンは書類を持って社長室へ向かった



「時間あるか?」



帰り道、セフィロスは車を走らせながら呟く



「ん?」

「だから時間、あるか、って」



後部座席でとぼけた声を出すルーファウスに、セフィロスがもう一度言うと

暇に見えるか?とルーファウスが笑う



「で、どうかしたか?」

「隣に座れ」

「んん?」

「助手席に座れルーファウス」



ルーファウスは頬杖を付いて眉を片方上げた



「君が後ろに来い」



緩やかに車を停車させ、セフィロスは一度車を出てから後部座席へ入り

鍵を閉めた



「広いな」

「そうか?」



小さな部屋のような後部座席の冷蔵庫から

ルーファウスが水を出してセフィロスに渡す


セフィロスはそれを受け取りながら、ルーファウスを見ている



「どうした」

「話があった」



なんだ?と聞いてくるルーファウスは、見当もつかないと笑う



「聞こう。話して」



手元のノートパソコンをいじりながらルーファウスが言うと

セフィロスは水を飲みながらその手元を眺める



「話を聞く時くらい、手を止めて相手を見ろ」



ルーファウスは僅かに視線を上げて口角を上げると

素早く手を動かし、電源を切った



「これでいいかな?」



ノートパソコンを閉じ、しまってから脚を組んでセフィロスを見る


セフィロスはその姿を見て満足そうに笑った



「いいだろう」


「話とは何だ」



ルーファウスの言葉に、セフィロスは髪を掻き上げて苦笑する

不思議そうにセフィロスを見て

ルーファウスは言葉を待った



「話があるというより、話をしてみたかったんだ」

「なに?何故」

「…お前とはあまり話をした事が無いから」

「なんだ、君でもそんなこと考えるのか」

「悪いか」

「いいや、何を話す気だ?」

「そうだな、お前はどういう話を、友人とする?」

「あいにく友人なんてものはいない」

「…恋人はいるのか?」

「はぁ?」

「好きな人とか」

「その手の話が好きなのか?」

「話題を変えるか?」

「そうだな、そのほうが話しやすい」





その時、車の窓が叩かれた



セフィロスはルーファウスを自分のほうに少し寄せて

様子を伺う



「まさかお前をさらいに来たのか?」

「かもな。この車目立つからな」

「余裕だな」

「当然だ、君がいる」



笑うルーファウスを見て、セフィロスは一瞬表情を作れなくなった

そして微笑んだ




セフィロスが車の外に出ると、一瞬で事は片付いた



その様子を眺めていたルーファウスは

自分のもとへ来たセフィロスを嬉しそうに見上げる



「ごくろう」



ルーファウスは助手席に乗っており、セフィロスは運転席に乗り込んだ




「セフィロス、明日の予定は?」

「明日か?…どこか行くのか?」

「ちょっとな。モンスターの多いところに」

「何しに?」

「ちょっとした冒険だ。未開の地の調査を兼ねた」

「お前が行くようなところじゃないな」

「私が行きたいんだ。人が住んでいない土地なんて面白そうだ」

「それ、仕事か?遊びか?」

「調査だ調査。仕事」

「わかった、調整する。で、車で行くのか?」

「ヘリで。操縦できるよな?」






























「ルーファウス!後ろだ!」



大量のモンスターの相手をしながらセフィロスが叫ぶ

ルーファウスは後ろからきたモンスターに肩を斬られた


セフィロスが魔法攻撃でそのモンスターを倒し

回復のマテリアをルーファウスに向かって投げた



「使え」

「どうやって」



マテリアを睨み、ルーファウスが呟く



「唱えるだけだ、使った事無いのか?」



ルーファウスはむっとしてセフィロスを睨む



「早く使え!」



モンスターを斬り倒しながらセフィロスが叫ぶ

ルーファウスは無反応のマテリアを、セフィロスを襲う敵に思いきり投げつけた


セフィロスは一瞬唖然としてから噴き出した



「使い方が違う!!」

「これでどうだ!」



ルーファウスは走ってきて、マテリアを拾い上げてモンスターを殴った



「馬鹿おま…」
















「痛むか」



不機嫌そうにルーファウスがセフィロスを見上げる

セフィロスは苦笑いをして、首を横に振る



「いいや、痛くは無い。慣れてるしな」



自分をかばって怪我をしたセフィロスの傷の手当てをして
ルーファウスは深く溜息をついた



「しかし、お前…」



思いだして笑うセフィロスを、ルーファウスは見れない



「マテリアの使い方も知らないのか」

「使い方くらいは知っている」

「あれは飛び道具じゃないぞ」

「わかってる」



セフィロスは真面目な顔で、ルーファウスを見た



「もしかして」

「使えない。資質がないんだ」

「…珍しいな」



ルーファウスはマテリアに口付けてから、額をつけた



「…お前にそんなハンデがあったとはな」

「少しも反応しない。魔法の資質は本来産まれた時から人に備わっている能力だ。
その資質は星からの贈りものらしい。これが無い者は、星に愛されていないからだと」



MPは星からの贈り物

それが全くないという障害は、星から生まれたことを祝福してもらえなかったことを意味する

セフィロスも、どこかで聞いたことがある話だった



「迷信だろう。それに、あっても使わない人間は多い。使いこなせない奴も多い。
必ず必要なものでもないだろう」

「気休めなら聞き飽きた」



セフィロスはルーファウスの頭を自分の胸に抱き寄せた

さらりと、ルーファウスの顔に綺麗な銀髪がかかった



「なに…」



驚いて言葉が出ずに困惑するルーファスの頭をしっかり掴み

セフィロスが低く優しい声で、ゆっくりと喋る



「星に愛されない分、誰かに愛されるはずだ」

「そんなことが必要なわけではない」

「いや、お前に必要なのはMPじゃない。回復魔法は身体しか癒さないからな」

「馬鹿かお前は。何の話だ一体」



ルーファウスが苦笑しながらも、睨むようにセフィロスを見上げた



「お前、病んでるだろう」

「キミほどでは」

「俺はそこまで病んでないぞ」

「どうだかな」



雨が降ってきて、ルーファウスはセフィロスの腕からすり抜けた



「おい」



前を歩くルーファウスを呼びとめる

セフィロスはルーファウスの肩に触れた

そこから血が流れている



「怪我してるのなら言えよ」

「たいした怪我ではない」

「俺より自分に傷薬使えよ」

「…あれしか持ってなかったんだ、傷薬」



意外な反応


セフィロスは微笑んでルーファウスの肩に手を当てた

回復魔法がルーファウスの傷を癒す


ルーファウスは不満そうに笑った



「気持ち良い。こういう時に…私は誰かを、自分さえも助けられない」



セフィロスはルーファウスの手を引き、小さな洞穴に向かって走った



「それなら、俺と行動すれば良い。護衛には俺をつければ良い」



手を引かれ、必死についていきながらルーファウスはセフィロスの背中を見る






洞穴に入り、ルーファウスは息を整える

セフィロスはルーファウスを眺めてから視線を落とし、微笑みながら座った



「寒いか」

「そうだな」



腕をさする手を止めて、ルーファウスは激しくなる雨を見る



「キミは寒いか?」

「…ルーファウス…悪かったな、ヘリさえ故障しなければ…」

「細工されたんだろう。仕方ないさ。墜落しなくてよかったじゃないか」



雨で濡れた髪をかきあげ、セフィロスはルーファウスを眺める

その視線に気付いて、ルーファウスは視線を合わせた


なんとなく視線を外して、セフィロスが洞穴を歩き回る



「燃やせるものも無いな」

「この洞穴があっただけでもいいさ」



ルーファウスの隣に腰を降ろし、セフィロスは携帯電話を取りだす



「相変わらず圏外だ」



ルーファウスはセフィロスの携帯を覗きこんでからセフィロスを見上げた

至近距離に顔がある


セフィロスは少しだけ目を伏せた



ルーファウスが笑いだし、自分の携帯電話を取りだした



「そうか、忘れてた、これ繋がるぞ」

「は?」

「私のは衛星電話」


















「すぐに来るそうだが、距離的に一時間はかかるだろう」

「早く思いだせよ、電話」

「本当だな、すっかり頭の中から飛んでいた」




嘘ではないだろう

ルーファウスは苦笑しながら自分の髪を軽く引っ張った




「寒いんだが」



セフィロスの言葉に、ルーファウスがあたりを見まわす



「我慢しろ。今は仕方が無い」

「人肌でもあれば、少しは暖かいんだが」



ルーファウスはセフィロスを見て、苦笑した



「キミは体温低そうだな…あれ?」



ルーファウスがセフィロスの顔を覗きこみ、額に触れる

セフィロスは少し身を引いた



「ちょっと」



ルーファウスの手がセフィロスの首に触れると

セフィロスは下を向いて息をゆっくり吐いた

何故かわからないが、心臓がうるさくなってきた



「セフィロスお前、熱」

「ん?」

「熱あがってきてるぞ。寒いはずだ」

「…寒い」



ルーファウスがあまり濡れていない中のシャツを脱いで

セフィロスの肩に掛ける



「お前寒いだろう」

「この上着、生地が良いからあまり寒くないんだ」

「服小さいぞ」

「文句言うな」

「なんかいい匂いがする」

「は?」



ルーファウスがセフィロスにはおらせたシャツを嗅ぐ

セフィロスは肩口をくすぐられているようで、笑ってルーファウスの頭を押し返した



「匂いしないぞ」

「自分の匂いってわかんないもんだ」

「あー、そういうことか」

「ちょっと」



セフィロスがルーファウスを引っ張り、頭に鼻をつける



「ああ、なんかいい匂いがする」

「香水とかつけてないぞ」

「そうなのか?何の匂いだろう」



ルーファウスがセフィロスに鼻を近づけ、首を横に振った



「雨の匂いがする」



そして笑いだした



「一体何をしてるんだ私達は」



セフィロスは笑いながら、ルーファウスの服に気付く



「お前、シャツ俺に貸してくれたよな」

「ああ」

「なんでシャツ着てるんだ?」

「は?重ね着」

「だってジャケットも着てるだろう。まさか三枚着てたのか?」

「なんだおかしいか?」

「…おかしい…というか、なら濡れたジャケット脱いだほうが良いんじゃないか?」



それもそうだとルーファウスがジャケットを脱ぐ

雨でうっすらと濡れた白いシャツがルーファウスの身体にくっつき

身体の線が浮き上がる


セフィロスは顔をしかめてルーファウスのジャケットを持ち上げた


「やっぱり着ろ」

「何故」

「目に毒だ」

「悪かったな」

「お前細いな」

「悪かったな」

「白いな」

「うるさい」

「ちょっと来い」

「キミが来たまえ」



ずい、とセフィロスは身を乗り出し

ルーファウスの腰を掴んだ



「少し鍛えろ」

「ほっとけ」



突然そのまま抱きしめられ、ルーファウスが身を引いた



「おい」

「暖かい」

「ああ、寒いのか」



そういうとルーファウスが黙る


そのまま何も言わなくなったルーファウスを抱きしめながら

セフィロスも黙りこんだ


体温が上がってくる



どのくらい黙っていたのか

セフィロスがルーファウスの髪に、少し触れる程度のキスをした

自分でもなぜ、こんな行動に出たのかはわからない



ルーファウスは気付いていないんだろう、黙っている



「ルーファウス、寝てるのか?」



顔を上げたルーファウスと、思った以上に至近距離で目があった



「起きてる。まだ寒いか。熱あがってないか?」



吸い込まれるように、セフィロスはルーファウスに顔を近付けた



「あ」



小さく呟き、ルーファウスが突然立ちあがる

ヘリの音が聞こえた



「来たぞセフィロス。迎えが」



目の前に神羅のヘリが着陸しようとしている


強い風がルーファウスの髪やスーツを揺らした



「セフィロス、匂いってわかったぞ、キミが言ってたこと。
そこでくっついてる時、キミの匂いがした」

「な、なに…」

「さあ迎えだ、行くぞ」



セフィロスは動揺しながら立ちあがる



「調子狂うな、あいつといると」



ルーファウスが乗り込むのを確認してから、セフィロスもヘリに乗り込んだ







いいんですか?それでいいんですか?

2009・5