ひとりの患者





「どんな悲惨な状態か、わかっているのか?」


ルーファウスを諸悪の根源、と言った男がルーファウスに言う

ルーファウスはゆるくうなづいた


「この目でも、見た。しっかりと」

「神羅カンパニーは どうやって責任を取る?お前が死んだくらいじゃ、足りない。
苦しみぬいて死んだ程度じゃ、足りない。
それでも民衆はお前の生存を知ったら死を願うはず」

「命をもって責任をとろうなんて、思ってない」

「ではどうやって」

「私の人生をかけて」

「足りない」

「わかっている。それでも、私が捧げられるのは人生だけだ。
これは私の命よりも重い」

「お前の命や人生をかけたところで 神羅は許されない。許さない。
家族や大事な人を殺された俺を含め 民衆はお前を殺したい。
息子はお前と同じ年だった。何故お前は生きてる」

「許されたいのではない。私は…」

「幸せを、掴もうなど絶対許されない」

「幸せになんて、いまさら…」


男に笑いかけ ルーファウスはその男の包帯を取り替え始めた


「俺の世話をして媚びたって 俺はお前を許さない」

「言ったはずだ。許されたいのではない」

「じゃあなんで、俺の世話をする」

「さあ、別に意味は無い。今日は調子もいいし、なんとなくな」





男の世話に 連日か寄っていたルーファウスが男の元を尋ねない日
ツォンが男の元を尋ねた


「犯罪者の頭はどうした」

「…名前でおっしゃっていただきたい」

「ルーファウス神羅はとうとう面倒になったか」

「貴方は毎日、ルーファウス様と会っていたのに気付かなかったのですか?
調子のいい日なんてほとんどなかったのに 貴方の元へ来ていた事を」

「知るか。頼んでないし関係無い」

「今日は、今朝から目が覚めていません」

「ザマあみろ。あいつが毎日目をあけるなんてことが間違いなんだ」


ツォンはそれ以上口を開かずに部屋を出た







「俺が死んだら、お前は俺の死体をしっかり見ろよ。
お前が殺した1人の男の死体を」

「わかった」

「俺が死んでも お前をゆるしはしない
誰かがお前を赦すと言っても 俺も、母なるこの星も お前を赦しはしない
お前は人殺しだ 無差別大量殺人の犯人だ」

「ああ」

「お前が死んでも 星はお前が星にかえる事をゆるさない。
人殺しとしてその事実に押しつぶされ 苦しみつづけるがいい」

「…ああ」


男は最期までルーファウスに笑うことは無かった


「人々の躯の上にお前はいる いつか必ず それに飲みこまれるだろう」


苦しみながら最期にそう言うと 背中をさするルーファウスの腕を引っ掻いて
睨みながら息を引き取った

目を閉じさせて できるだけ綺麗にしてから キルミスターに死者が出たことを告げると
興味なさそうに「わかった、あとでやっておく」と呟くように言った

ルーファウスは男の病室に戻り 男がルーファウスの腕につけた
引っ掻き傷を撫で 祈りを捧げた


神を信じているわけではない

それでも祈りを捧げた






「あなたは、少し私の父に似ていたんだ。どうか、安らかに」








何が言いたいのとか聞かないで下さい…

人の命がすごく奪われたなあと思いながら書きました
したらこんななっただよ

戦争とも自然災害とも違うし
原因はルーファウスじゃないけど神羅だし
ルーファウスもあくどかったしね
でもルーファウスは(腹黒いけど)どこか綺麗な部分が残ってる気がします
顔かしら


2009・8