初雪の頃








仕事を終えたクラウドがドアを開けると 外の空気が室内に入ってきた

「ただいま」

クラウドがゴーグルを外して ソファに座るルーファウスに近寄ると
ルーファウスは笑顔で「お帰り」と手を伸ばす

「手が冷たい」

クラウドの右手を両手で包み ルーファウスがクラウドを見上げる
クラウドは座って左手をルーファウスの頬に当てた

「今日すごい寒いぞ」
「ふふ、冷たい。本当に寒くなったな」
「もう冬も間近だ。アンタ冬好きだろ」
「何故」
「なんとなく似合うから」
「キミも冬は好きだろう」
「なんで」
「なんか思い出に浸りそう」
「おい」

クラウドがルーファウスを撫でるように叩くと、ルーファウスが笑う
クラウドはそのまま倒れ込むようにルーファウスの膝に頭を乗せて寛いだ

「…クラウド、今日、電話がきたんだ。マリンから」
「マリン?なんて?」
「クラウドは元気かと。会いたいと。電話出ないって言ってたぞ」
「あー、最近帰ってないからな…」
「変わりは無いそうだ」
「ならいい」
「マリンくらいには、電話してやったらどうだ?」
「そうだなー…でもアンタ、俺がセブンスヘブン行ってもついてこないからな」
「別に私が居なくても行けるだろう」
「いや、行けるけど…なんで来ないんだよ」
「私が行くと落ち着かないと思うよ。キミとマリン以外は」
「…俺がセブンスヘブンに行くのは、嫌じゃないのか?」
「どうして」
「だって…」

ルーファウスはクラウドの頭を撫でて笑って見せた

「私に気を遣ってる」
「だってアンタは仲間を家族って言うし、特別視してるだろ?」
「だって特別だろう?」
「アンタのがよっぽど特別だよ」
「ふふ」
「それにアンタさ、ティファと俺のこと気にしてないか?」
「…なんて答えよう…」
「本当のこと言えよ」
「してないと言ったら嘘になるけど、別に疑うとかそういうのではないよ」
「…わかった、ちょっと行ってくる。でもすぐ帰るからどっかで待ち合わせよう」
「ここで待ってるよ。時間とか日にちとか気にするなよ」
「なに日にちって。何日も俺が来なくていいのか?」
「キミの気が向くままにしてほしいだけ」
「俺はアンタの本心聞きたいんだけど。俺のことを思ってじゃなく」
「本心だよ。キミの好きなようにしてほしい」
「俺が帰ってこなくてもいいって?」
「キミが帰りたくないなら来なくても仕方ないよ」
「可愛くないなあ。そういう所が嫌なんだっての」

クラウドが起きあがってジャケットを羽織る
ルーファウスは小さく溜息をついてクラウドを見上げた

「わかる?俺がどういう所が嫌だって言ってるのか」
「わかるよ。だがこれが私だ」
「自分の気持ちとか、なんで言わないの」
「言ってる」
「会いたくても会いたいとかいわないだろ。それとも俺に会いたくならないのか?」
「ここで私が言いたいのは、私の所ばかりに居ないで
家族との時間も大事にしたほうが良いのではないかということだ」
「俺との時間が苦痛なのかよアンタ」
「違う、だから、例えば家族と離れて友人と暮らしていても故郷の家族は大事だろう?」
「あー、ああ」
「私ばかりといては、家族は寂しがるよ」
「…恋人とばっかりいちゃついてないで友達も大事にしろってことか」
「……あー、まあ、そういう感じ」
「それはわかった。で、俺は寝に帰ってくるべき?あっちで寝るべき?」
「自分で決めるべき」
「アンタはどうして欲しいか聞きたいんだっての」
「たまにゆっくりしておいで」
「あーそう。心配じゃないんだ?オレが夜ティファと二人になったりするの」
「心配なんかしないよ。キミはそんなことしないだろう?」

クラウドが黙ってルーファウスを見る
少し、顔が熱を持っていることに気付いた所でゴーグルをつけた

「行って来る」
「行ってらっしゃい」

ルーファウスは立ちあがり 玄関まで見送る

フェンリルのエンジン音が聞こえなくなるまで見送ると、苦笑しながら窓から外を眺めた

窓に触れると、ひやりとする
冷たい。





窓から離れて紅茶を飲みながらデスクに向かった








マリンとデンゼルとひとしきり遊んで食事をとって
2人が寝た後 クラウドはティファと雑談をしてからセブンスへブンを出た


立ち寄った酒屋で偶然にもタ−クスに会ってしまった
この酒屋はバーもついていて、タ−クスはそこで飲んでいた

「おおクラウドじゃねえか」
「…アンタらか」
「なんだよ。折角ならちょっと飲まないか?」


断ろうと思った瞬間、レノに引っ張られ座らされた
それは他のメンバーから少し離れた所

「なにそのワイン。社長にか?」
「ああ」
「…クラウド、お前表情すげ−柔らかくなったよなー」

目の前に置かれた酒を飲みながら、クラウドは顔をしかめた

「そうか?」
「ああ。人間らしく笑ってるぞ、と」
「…元々人間だ」
「へへへ」
「俺はあいつといて変わったか?」
「ああ。お前社長と居て楽だろ」
「…楽、だな」
「社長あんま怒らないだろ」
「…ああ…」

確かに怒り出すのはいつも自分だ、とクラウドが少し酔った頭で考える
ティファの所でほろ酔いだったクラウドは 酔うまいと水を飲んだ

「ルーファウスは…俺といて変わったか?」
「まあ、自然に笑う顔が見れるようになったかな、と。あの人元々わかりにくい人だったけど」
「わかりにくい…よな。自分の気持ちを素直に言わない」
「うーん。特にプライベートはわかりにくいな、と」
「あいつ元々笑わないよな。あまり」
「ああ?笑うぞ?まあ、笑い方はなかなか自然な笑顔じゃないけど。そういう人なだけだろ、と」
「うーん。ああ…」
「なんだよ、なんかお前悩んでんのか?」
「…あいつが本当に好きな人って誰だろう」
「…」

ルーファウスに対してそういう話題を持ちかけても答えてもらった試しも無い
レノは言葉に詰まる

「…クラウド、お前、社長と付き合ってんだろ?」
「…俺はそのつもりだけど?」
「俺社長の恋人なんて初めて見たぞ、と」

セフィロスは?タ−クスはまさか、知らないんだろうか
クラウドが首をかしげる

「ツォンさんは俺らよりも社長と長いから何か知ってるだろうな」
「…ルーファウスとツォンは、そういう関係だったりしたことあるのか?」
「…それは俺も知りたいぞ、と…」

レノがちらりとツォンを見ると ツォンがレノと目を合わせた

「…ツォン、ちょっとこっち来い」

クラウドが呼ぶと ツォンは不機嫌そうに2人の隣に座った

「なんだ」
「アンタ、ルーファウスのこと好きだろう」

クラウドの突然の言葉にツォンは固まったように止まった
そしてぐっと酒を飲む

「ルーファウス様は私の上司だ。それは昔から変わらない。それだけだ」
「恋愛感情があるだろうって言ってるんだよ。昔そういう関係だったりしたのか」
「それは無い。私はルーファウス様が幼かった頃から知っている。そういう関係はありえない」
「そういう感情は?」

ツォンがうんざりしたように席を離れようとする
クラウドはツォンを引っ張り座らせた

「アンタ俺とルーファウスが一緒に居るのが面白くないだろう」

ツォンはクラウドを睨みながら腕組みをした

「ああ、社長にお前は似合わないと思ってはいる」
「なんでだよ」
「釣り合わない。お前の器が小さいからだ」
「な…」
「お前は確かに世界を救った。だが精神はまるで子供だ。
お前がルーファウス様に甘えてるだけにしか見えない」
「それ、アンタがルーファウスに気があるからだろう!」
「そう見えるのか」
「見える」

はっきりと答えるクラウドの横で レノが煙草に火をつける

「お前とツォンさんじゃ、一緒に居た時間が違いすぎるぞ、と」

クラウドが不機嫌な顔で立ち上がる

「帰る。ルーファウスが待ってる」


立ち去っていくクラウドの背中を見てレノが笑った

「ただのヤキモチだぞ、と」












「早かったな。あ、酔ってる?」

クラウドの顔を見てすぐに酔ってる事に気付く
クラウドはジャケットを放り投げてルーファウスにワインを渡した

「アンタも飲んで酔えよ」
「なにかあったか?」
「帰りにタ−クスと会って少し飲んできた」

その面子を想像してルーファウスは苦笑した

「なあルーファウス、ツォンがあんたに気があるのはわかるけど、あんたは?
そういう関係になったことあんのか?」
「一体何の話をしてきたんだ」
「いいから」
「…昔ツォンは、私が苦手だったんだよ」

笑いながらルーファウスはワインをグラスに注いだ

「あいつがアンタを苦手?想像できない。なんで?」
「私を苦手だという人は珍しくないからね」
「じゃあなんでこんなにベッタリになったんだよ」
「…そうだなあ。まあ、仕事を一緒にして少しずつ打ち溶けた感じだ」
「あいつとキスとか、それ以上とか、したことあんの?」
「あったらキミは妬く?」
「ああ」
「じゃあ、ある」
「アンタなー!」
「ははは!」

クラウドはルーファウスを引き寄せて、後ろから抱きしめて細いうなじにキスをする

「したのかよ、本当に」
「してない」

ルーファウスがクラウドの手を握り、キスをする

「ルーファウス」
「なんだ?クラウド」
「アンタ本当に俺好きか?」


ルーファウスがクラウドの顔を引き寄せ、頬にキスをする
クラウドは満足そうにルーファウスの身体を組み強いた






















「今日、雪だって」

翌日クラウドが起きると ルーファウスがテレビの前で言った

「寒いはずだ。今日の予定は?」
「特に急ぎの仕事は無い。人に会う予定も無い。キミは?」
「俺も。なあ、この家クリスマスツリーってあるか?」
「無いよ」
「よし。買い物に行くか」
「クリスマスツリー?」
「そ。クリスマスツリー」


ツリーを乗せるためにフェンリルではなく車で行く
当然のように運転席に乗ったクラウドの隣に乗り込み ルーファウスがクラウドを見た


突然思い出した
そういえば昔はいつも、セフィロスの隣に乗っていた


「クラウド」
「何」
「車でも、たくさんでかけよう」

クラウドは軽く「ああ」と返事をしてから考える
突然こんなことを言うのには理由があるんだろ
理由は聞かずに クラウドはルーファウスを見て微かに笑った

「いろんな所連れてってやるよ」




クリスマス用品を取り扱っている店を歩く

品物を見るクラウドの目を見て ルーファウスが笑う
楽しそうだ

「なあルーファウス、コレコレ、本物のもみの木のがいいか?」
「…外に置くのか?」
「中」
「中ならこれ、大きすぎるよ」
「そうか?じゃあ電気で光る方がいいか。どれがいい?」

ルーファウスが気に止めて眺めるツリーは白いものばかり
本当に白が好きなんだな、とクラウドが笑う

「クリスマスってパーティとかなんかしてた?」
「うーん。ここ数年は何もしてないな。キミは?」
「俺は簡単なパーティを、セブンスヘブンでやったこともあったな」
「今年は?」
「アンタと」
「子供達に恨まれないか?」
「あー…夕飯はアンタも一緒にセブンスヘブンってのは?」
「私はいいから行っておいで」
「じゃあイブに向こうで過ごしてクリスマスはあんたと」
「任せるよ。でもちゃんと向こうの予定も確認するんだぞ?」
「ああ」


飾り気は無いけれどとても美しく光る白いツリーに決めた



外に出るなりルーファウスは肩を縮める
全身で「寒い」と言っているルーファウスを助手席に押しこみ
クラウドはトランクにツリーを入れた


セフィロスもこうしてこいつと出かけたんだろうか
どんな所に行ったんだろう
知ってるなら片っ端から同じ場所に行って、思い出を塗りかえるのに


「ルーファウス」
「何だ?」
「どこ行く?行きたい所無いか?」

ルーファウスは不思議そうな顔でクラウドを見る
そして笑った

「キミは?」
「なんか、どっかアンタの行きたい所に行きたい」
「そうか、そうだな…あまり近くないけど良いか?」
「いいよ、どこでも。遠いのか?」
「遠くは無いかな」

クラウドは楽しそうに笑った

ルーファウスのナビで少し走ると 海が見えてきた

「海に来たかったのか?」
「ああ、ここにな」
「アンタ海好きだよな」
「そうだな」
「…なんか思い出あんの?」

ルーファウスは潮風の冷たさに肩を縮ませて自分の手を握った

「ああ、ある」
「セフィロス?」
「さあね」
「どんな思い出?」
「さあ」
「そこまで言ってなんで言わないんだよ。嫌な感じだな」
「…言ってもいいのか?」
「聞かないで後悔するより聞いて後悔する」

ルーファウスの冷たい手を クラウドの暖かい手が掴む
ルーファウスはその手を見て 笑った

「まだそんなに歩き回れなかった時に、この海の中で自分の足が嫌だと言う私に
この足も曲がった根性もまるごと私だから否定するな、とキミは言ったんだ」
「…俺?…あー!思い出した!アンタよく覚えてるなそんな言葉まで」
「私はその時のキミの笑顔が忘れられないんだ。優しい顔をしていた」

ルーファウスの微笑みに、クラウドが恥ずかしそうに笑った

「てっきり、セフィロスとの思い出を聞くんだと思ってたから、びっくりした」
「セフィロスセフィロスって、キミはセフィロスが好きなのか?」
「違うっつーの!」
「ふふ」

ゆっくり砂浜を歩くルーファウスの歩調に合わせてクラウドも歩く

「クラウド、キミは何かで思い出す事ってあるか?何となく思い出す頻度が高い事とか、
場所とか、なんかにおいとか…それで誰を思い出すとか…」
「におい?」
「ほらあるだろう?この人の匂い、とか、一緒に過ごした時のあのにおい、とか」
「花は、エアリスを思い出す。教会とか、優しい光とか、あたたかい水とか
公園とか観覧車とか、デート、とか…」
「そういえば、花が好きだったんだっけ」
「ああ、花が好きだった」
「どんな人だった?」
「太陽みたいな…光で、癒しだった」
「大切な人だったんだな」
「今でも俺は…」

クラウドがそこまで言ってルーファウスと目が合った
ルーファウスはただ、優しく微笑んでいた

「ごめん俺何言ってるんだろ」
「私が聞いたんだ。話したくなかった?」
「いや…そうだな、アンタにはどれだけエアリスがみんなにとっての光だったか
本当は知ってて欲しかったかも」
「そうだな。多くの人に、彼女は愛されていたみたいだな」
「スラムで花を育てて、神羅から逃げながら暮らして、いつも笑顔で
自分の辛さより人の辛さを和らげるのが上手かった…俺、守れなかった…
エアリスは死んではいけない存在だった。それを…神羅が、セフィロスが…」

口から出たその言葉は痛いほどルーファウスはわかってるはず
クラウドが勢いよくルーファウスを見た

「続けて」
「…奪ったんだ…エアリスの…命を…そうだ…神羅が…セフィロスが…」
「私にとってはただの駒だった。人の命を、なんとも思っていなかった」
「わざと怒らせようとしてないかアンタ」
「いや。でも今キミが言いたいことを全部聞きたい」
「俺絶対アンタに嫌なこというぞ」
「いいよ」
「…なんで」
「私が振った話だよこれは。キミはこの話をしたとたん、辛そうな顔をした」
「…なあ、アンタは、エアリスの命をただの駒だって、本気で思ってたのか?」
「ああ。彼女の身に何かあって悲しむ人がいることくらい知っていたけれど
私は彼女を守ろうと思わなかった。守る方法があっても」
「よく考えたらアンタは俺の大事なものをたくさん奪ってるんだよな」
「ああ。キミやいろんな人のね」
「…もっとよく考えたらアンタじゃなくプレジデントか」
「神羅だ。誰、というよりも。
親父が死んでからも多くの人命が神羅によって失われたのは確かだし」
「…今はその神羅もアンタだけだな。ザマ見ろ」

ルーファウスが苦笑をした瞬間、クラウドの胸が痛んだ
一体何に対する痛みなんだろうこれは

「アンタの大事な人が、誰かのわがままで殺されたらアンタはどうする?」

ルーファウスの顔から笑みが消える

「神羅って本当に人殺し集団だよな。俺も昔はその中にいたんだけど」
「神羅兵」
「そ。アンタらは自分の都合でどんなこともしてきた」
「ああ」
「アンタ自分の手汚さないだろ」

ふとクラウドが視線を落とすと ルーファウスの小指に力が入ったのが見えた

「人にばかり辛い、汚い仕事をさせて、自分では何もしないだろ。
デスクに向かうだけで、命令だけで人を殺して…」

どこまで言ったらルーファウスは怒ったり泣いたりするんだろう
そういう変化を見てみたい

クラウドは頭の片隅でそんな事を考えながらルーファウスの手を眺めた

「自分がよければ、町も壊すし人も殺して、どれだけ悲しむ人がいてもおかまいなしで
それのくせに自分達にかすり傷がついただけで大騒ぎしたり全力で潰したり壊したり。
わがままな奴は我慢を知らない奴だ。我慢なんかしたことないだろ」

ルーファウスの手は動かない

「なんか言えよ」
「…キミの言う通りだ」

砂浜に腰をおろすルーファウスの横に立って クラウドが眉を寄せる

「アンタがセフィロスを失った痛みって、どのくらい?」

言ってしまってから後悔した
ルーファウスの顔が見れない

「痛みには鈍感だから」
「俺は、エアリスやかあさんが殺された時、本当にセフィロスを憎んだ。今も。」
「私は・・・」


考えていることを言えずにクラウドを見る
クラウドはまっすぐ海を見ていた

「自分は、なんだよ」
「私は、人の痛みにも鈍感だ」
「アンタが一番悲しかったことってなに?」
「…さあ。とりあえず自分の境遇を悲観したことはない」
「境遇ねえ。恵まれてるもんなアンタ」
「そうだね」

海の向こうを見ているルーファウスを盗み見る
穏やかな顔のルーファウスは悲しむ気配も怒る気配も全く無い

クラウドが浅く溜息をつきながらその場に座る

「アンタって感情隠すのうまいだろ。今の話で怒ったり悲しそうな顔してもよかったのに」
「私が?上手くないよ」
「感情の変化無いだろあんま」
「あるよ。とても」
「じゃあなんであんま顔変えないの」
「変わらないように見えるのか?」

砂浜の砂を引っ掻いてルーファウスが目を細める

「セフィロスとはどういう別れ方したんだ?」
「覚えてない」
「嘘つけ」
「嘘だと思うならそれでいいよ。でも覚えていないから話せない」
「…卑怯者」
「何とでも」

そう言いながらルーファウスがまた海の向こうに視線を移す

「俺、アンタといる時間短いよな。ツォンもセフィロスも長かったんだろう」
「ツォンは確かに長いな。私が本当に幼かった時に、会った」
「その時間にはかなわないよな」
「でもキミとの時間はとても濃いよ」
「…俺はそれでもその時間の長さが気になる」
「キミとティファは?」
「ずっと一緒だったわけじゃない」
「私もだ。ツォンとは幼い頃から常に一緒だったわけではない」

クラウドが眉間に皺を寄せてルーファウスを見る

「…アンタの口から、セフィロスとの事がききたいんだけど」
「何故」
「気になるから」
「話すほどの事なんかない」
「嘘ばっかり」
「本当だ」
「一緒に暮らしてた?ご飯とかつくってあげた?休日はでかけた?」
「夫婦じゃないって」
「離婚したのか未亡人なのか」
「慰謝料も遺産も無いから離婚してないし未亡人でもない」
「俺はアンタが女だったら結婚するけど」

頭の中に婚姻届が浮かんだ
ルーファウスは派手に笑って首を振った

「キミと結婚なんかしない」
「なんでだよ、本当の家族になれるんだぞ?」
「…戸籍上の家族が欲しいのか」
「紙1枚の威力は大きいぞ」
「私は遠慮する」
「だからアンタが女だったらのたとえ話」
「ではキミが女なら私と結婚したいか?」
「アンタに抱かれるなんて御免だ」
「紙1枚の威力はその程度か」
「俺が男なんだっての」
「私も男だ」
「だから男も男役も俺なの」
「別にキミを抱く気は無いからいいけど…」
「結婚?」
「違うって」

ルーファウスが笑いながらクラウドの腕を叩くと
クラウドも笑いながら肘でルーファウスの腕を押した

「なあ、アンタと付き合ってから俺どんな風に変わった?」
「以前のキミのプライベートの顔を知らないから何とも言えないな」
「なんとなくでいいよ」
「そうだな…喋るようになった」
「ああ、確かに…じゃあアンタは自分がどう変わったとか、思う事ある?」
「眠れるようになった」
「え?」

クラウドが少し驚いたような顔でルーファウスを見ると
ルーファウスはにこりと笑って返した

「アンタはあんま眠れなかったのか?ずっと?」
「キミが隣に寝ると、睡眠時間が伸びる」
「なんで」
「ふふ」


安心する?







家に帰り、ツリーを出す
クラウドが簡単な飾り付けをする様子をルーファウスはコーヒーをいれながら眺める

「アンタはサンタクロース信じてた?」
「さあ、いつそれが御伽話だと知ったのかすら忘れた。キミは?」
「小さい頃は信じてた。そんなの居ないんだって知ってからも、待ってた事もあった」
「サンタクロースは来た?」
「ああ、親がいるのにサンタクロースが来たこともあったな。
あれいまだに誰だったのかわからない」
「本物だったんじゃないか?」
「…ああ、そうかもしれない」

簡単な飾り付けを終えてから部屋の電気を消して
ツリーの電気をつけると 白いツリーの先端が青く幻想的に光る

「綺麗だな」

満足そうに呟くクラウドにコーヒーを渡してルーファウスがうなずく

「ああ、綺麗だ」

クラウドの携帯にセブンスヘブンからの着信が入る
通話ボタンを押して、話すクラウドの穏やかな表情を見て ルーファウスがクラウドに
「隣の部屋で仕事をしている」と書いたメモを渡して部屋を移動する


隣の部屋で窓を眺めていると雪が降り出した


クラウドは電話の向こうの人と この初雪を見ているかも知れない
ルーファウスはそんな事を考えながら窓に触れる







クリスマスの予定から思い出話をしていると、あっという間に時間が過ぎていた

電話越しのティファに初雪を教えられ クラウドが窓を見ると
うっすらと辺りが白く染まっていた

クラウドは手短に挨拶をして通話を切ると、ルーファウスの仕事部屋に入った

窓に寄りかかるようにして眠っているルーファウスの顔をのぞきこむ


「ルーファウス、ベッドで寝ろよ」

ルーファウスがはっと目を覚ましてクラウドを見上げ、笑った

「クラウド、雪だぞ」
「ああ、初雪だな」

ルーファウスがクラウドの首に腕を回して目を閉じる
クラウドは少し動揺しながら抱きしめた

どうしたかと聞けば、ルーファウスは腕を解くだろうと思い
クラウドは何も言わずに窓の外を見る

「俺雪景色好きだな」
「アイシクルは?」
「…ああ、今エアリスを思い出した」

ルーファウスはゆっくりと離れながらうなずいた
ぼーっとするクラウドの横で ルーファウスは窓を眺める
その表情は穏やかだ

「俺、エアリスの話ばっかりしてない?」
「そうか?」
「…さっきティファと昔話してたんだ。ニブルヘイムの時の事からエアリスのことまで。
そしたらアンタの事思い出した。プレジデント殺された時に会った時の。そういえば戦ったなって」
「そんなこともあったな」
「こんな関係になるなんて予想もできなかったよな」
「ははは、そうだな」
「なんでこんなに俺気にしてるんだろう」
「何を?」
「アンタの過去」
「過去?」
「ツォンと過した時間長いよな、とか、セフィロスとはどんな話をしたとか
どこに行ったとか、どういう付き合いをしたとか、他にどんな奴とどういう関係だったのかとか
アンタはこういうこと気になったこと無いか?」
「キミは気にしすぎじゃないか?」
「俺気にし出したら止まらないんだよ」
「何かスッキリしてないのか?」
「ツォン」
「ツォン?」

そう言うとルーファウスは笑って首を振った

「仕事で過した時間はそれなりだが、今も昔も上司と部下だ」
「あいつはそう思ってないだろう」
「それを私に言われてもなあ。キミこそ、ティファはキミを思ってるじゃないか」
「あー・・・」
「ツォンや過去のことは気にすることも心配する事もないよ。
ツォンだって私とキミの関係を知っているしね」
「ティファもな」
「ふふ。ああ。そうだな」
「あ、そうだ、クリスマスは一緒にいるぞ。イブに向こうで過ごすけど
寝てこないでここで寝るからクリスマスは朝から一緒だぞ」
「わかったよ。イブは子供達が寝た後にプレゼントを?」
「ああ、一緒に買いに行ってくれるよな?」
「ああ」
「アンタは欲しい物言わないだろうから俺が勝手に決めるから」
「何もいらないよ」
「俺がいれば良い?」
「馬鹿め」

笑いながら撫でるようなパンチをクラウドにあてるルーファウスを抱きしめて
クラウドも笑う

「クリスマスは俺も仕事休むからアンタも休めよ」
「努力するよ」
「ペアリングとかどう思う?」
「誰と誰?」
「俺とアンタ」
「勘弁してくれ」
「ロマンねぇの。なあ、なんかクリスマスの歌うたって」
「クリスマスイブに、ちゃんと帰ってきたらな」
「今聞きたいんだけど」
「キミに歌ってもらいたい」
「俺?」
「そう。聞きたい」

滅多に無いルーファウスからのリクエストに クラウドがこたえて歌う












「あれ?おはよう」

ルーファウスが目を覚ますと クラウドがルーファウスの顔を覗きこんでいた
ルーファウスは一瞬止まってからうなずいた

「ああ…おはよう…キミが先に起きてるなんて珍しいな」
「アンタが俺より先に寝るのも珍しいよな」
「いつ寝たっけ」
「俺に歌わせておいて寝たじゃん」
「ああ、そうだ…心地よくて…」
「ほんとかよ」

笑うクラウドに微笑み返し ルーファウスが起きあがる


「キミの夢を見た。雪の中こっちを見ていて、手を振るんだ」
「なんか話した?」
「キミはじゃあな、って。私は手も振らずにただ見ていた」
「なんでアンタは手振らなかったんだ?」
「それが別れを意味していたから」
「…別れたくなかった、ってことだよな」
「呼んだら答えてくれるキミが良い。夢の中のキミは答えてくれなかった」

寝言で自分の名前を呼んだルーファウスを思い出し、クラウドが微笑む

「俺も夢よりも、実際触れるアンタがいい」
「うん」

抱きしめるクラウドの二の腕にしがみつくように抱きつき
ルーファウスはふっと笑った

「アンタ、俺好きだよな」
「ふふ」
「言えよ」
「喉に突っかえて出てこない」
「喉までは来てるんだ?」
「ん?」
「ん?じゃないだろ」

笑いながらクラウドがルーファウスを軽く叩く
ルーファウスは機嫌よさ気にその手を掴んだ

「クラウド、今日の予定は?」
「別に何かあるなら空けれるけど」
「じゃあドライブだ。キミの行きたい所に行きたい」

クラウドが少し目を丸くしてから立ちあがった

「よし、じゃあ買い物でもしに行こうぜ」

上機嫌で着替えるクラウドを眺めながらルーファウスが微笑む

「何を買うんだ?」
「なんでも。服でも家具でも食器でもなんでも。最後は夕飯の食材」
「店はキミが選んでくれよ」
「ああ、任せろ。ほら早く着替えろ。行くぞ」
「…なあクラウド、私は…キミが不安がるような他者との繋がりはないよ」
「ツォンとのこと?」
「ああ。そういうこと」
「…好きだって言ったら信じる」
「なら信じなくていい」

クラウドが大袈裟に残念そうなりアクションを見せながら笑った

ルーファウスも笑って、肩をすくめた

「ルーファウス、俺もアンタだけだから、安心しろよ」

目を丸くして一瞬動きを止め ルーファウスが苦笑しながらクラウドから視線を外すと
クラウドは笑ったままジャケットを羽織った



車に乗りこみ ルーファウスがクラウドにコーヒーを渡す
笑みを浮かべるクラウドを眺めながらルーファウスは首をかしげる

「やけに機嫌がいいじゃないか」
「まあね。いいじゃん」
「何故そんなに機嫌が良いんだ」
「俺ら、両思いだなって思って」
「なに!?」




ルーファウスの寝言は本人には教えない
きっとあれはルーファウスの本心だ


クラウドは上機嫌で車を発進させた






全体的にスッキリしないです
相変わらず何が言いたいのかまとまりのない小説です
ごめんなさいとは言いません…(土下座)


2009・11