注意
うちのクラウドはルーファウスオンリーです
本当に




それでも好きだから











「憂鬱そうな顔して」


ティファは不機嫌そうに クラウドに声をかけた


「ルーファウスいないからってそんな顔しないでよ。美味しいご飯作るから」


クラウドは眉を片方上げて溜息をつく



「ルーファウスどこいってんの?」


暗い顔のクラウドにユフィが声をかける


「仕事で明日までいないんだって」


かわりにティファが答えた


「今日ルーファウスいないの?」


外から戻ってきたマリンがクラウドを見上げると
クラウドはうなずいた


「お、若社長いねえのかクラウド」


シドが外から入ってきて言うと、クラウドは大きく溜息をついた


「ルーファウスと、連絡とれないんだ」













遡って昨日の夜







バーでルーファウスと待ち合わせをしていたクラウドは先にかなり飲んでいた



「誰かと待ち合わせ?」


綺麗な女がクラウドの隣に座る


「ああ」

「恋人?」


クラウドは答えず、見向きもせずに飲んでいた






何を話していたのか、気付いたらクラウドはその女と話をしながら飲んでいた

至近距離で女はクラウドの顔をのぞきこむ


「ねえ、本当に待ち合わせ?来ないね」

「仕事で、遅れてるだけだろ」

「ちょっと休みにいかない?」


女がクラウドの足に手を乗せる

クラウドは顔をしかめて手を払った


「彼女いるの?」


ルーファウスは女じゃないから彼女とは言わないか

でも、恋人だ


「もっとこっちに来て」


女がクラウドに擦りより、自分の足をクラウドに擦りつける


シャンプーの匂いが鼻をくすぐった


この匂い、ルーファウスのシャンプーと似てる


女の金色の髪がサラリと流れる



気付いたらキスをしていた



「お邪魔だったかな?」



キスを終えたクラウドに、ルーファウスが話をかける

その表情は全くいつもと変わらなかった


「ル…」

「遅くなったが、退屈はしていなかったようだな」


そう言ってルーファウスは女に薄く微笑むと
クラウドの支払いを済ませて出て行った


「ねえ、今の待ち合わせの…?」

「くそ…」


クラウドは頭を掻いて、女には目もくれずに出ていった



「待てよル−ファウス」

「何だ」

「言いたいことあるんだろう?」

「いいや」

「…待ってた、帰ろう」

「これからまた仕事があるんだ。明日は私は仕事で不在だ」

「ずっと待ってたんだぞ」

「電話をいれたのだが」


その言葉にクラウドが慌てて携帯の履歴を確認する
一時間も前に 着信が入っていた


「…気付かなかったのは悪かった、でも待って…」

「退屈してないだろう?新しい友達ならこの次に紹介してくれ」

「ルー…」

「では楽しむといい」


車に乗りこむルーファウスを追って、クラウドは車に走り寄り、窓を叩いた


「誤解だ」

「なにがだ?」

「あれは…」

「あれとは?」

「…だから…キスは…」

「そのことについて私は何も言っていないが」

「新しい友達とか、そういうのじゃない」

「そうか、しかしそれ以上説明は不要だ、では仕事に戻る」

「ルーファウス!」



走り出した車を眺めながら電話をかけるが、繋がらなかった


ルーファウスの家に行っても、人の気配が無い


クラウドは1人そこで夜を明かしてセブンスヘブンに来た


ルーファウスは終始表情を歪めなかった
















「で、その日のうちにタ−クスに電話をしたら今日は家に戻らないと。仕事で」




「それ、本当に仕事か?」


シドと2人、クラウドが話をしている


「わからない…完璧に俺が悪いんだけど…」
「…やきもち妬くんだな…あの社長も」


そうシドが言うと、クラウドは顔を上げて口元をゆるませた

「やきもち、かな」

「じゃないか?」

「浮気じゃないのに」

「出来心も浮気のうちだろうが」

「…ルーファウスと同じようなシャンプーの匂いしたんだ…」

「お前重症だな」







ごめん。でもあれは、お前と似てるシャンプーの匂いして
気付いたらキスしてて、そこにお前が来た。
あとは何もしてないしどこの誰かも知らないし
もうあそこには行かないしあの人には興味無い。
もうアンタいない時に酔わないから
電話出て、話したい



そのメールを送信して、1日が経った

送ったメールを読み返してクラウドがため息をつく


これ、完璧にいいわけだ…







夜中、クラウドはルーファウスの家で1人、ルーファウスを待つ



仕事の話が本当なら、今日は帰ってこないはず


コールを鳴らすと、6回目で繋がった



「ルーファウス!」

「何だ」

「よかった、繋がった」

「何だ」

「…怒ってるよな」

「いいや、ところで何用だ?」

「話したかった。メールは読んだ?今ドコだ?」

「読んだが、忙しかった」

「用事は、そのことで、話がしたい」

「そうか、その他には話は無いんだな?それだけだな?」

「ああ、とにかくその…」

「その話は不要だ。では」

「ちょ…」


もう一度コールを鳴らすと、繋がらない



「怒ってるじゃないかよ」



クラウドは肩を落としてベッドに突っ伏した












翌日の夜、帰ってきたルーファウスがクラウドを見つけて目を細めた



「おかえり」

「ああ」

「ルーファウス、話を」

「必要無い。変わりは無いな?」

「無い」

「そうか。悪いが疲れた。今日は1人にしてくれないか」

「いやだ、このままもう待てない」

「キミが気にしなければいい」

「無理だ、アンタ怒ってるだろう」



ルーファウスは溜息をついてソファに座った



「では話したいことがあるなら話すといい」


「俺、すごい飲んでて、あの女が来て話をしてていつのまにか一緒に飲んでて
誘うように触ってきたんだ。で、アンタと同じようなシャンプーの匂いがして
本当につい、キスをして、そしたらアンタがきた。
それ以上もそれ以外もなにもしてないし名前も知らない。もうあそこに行かないから」


「…話は終わったか?」

「…ああ」

「わかった。では休ませてくれ」

「ちょ、アンタの気持ちとか俺を責める言葉とかないのかよ!」

「責めてどうする」

「…妬いてもいないのかよ」

「妬かせたくて取った行動か?」

「違う」

「ならいいのではないか?」

「それでも普通…アンタ…」

「もうその話は終わりで良いだろう」

「アンタ何も感じなかったのかよ」

「キミも男だ。女性に誘われては勝てないだろう」

「アンタも誘われたら勝てないのか?」

「私はさして興味が無い。そういう意味ではキミは私より健全だと言える」

「…どうも思わないのかよ」



ルーファウスはふい、と目線を逸らせて自分の爪を眺めた



「女相手にかなうとは思ってないからな」



僅かにルーファウスの指先が震え、ルーファウスはぎゅっと手を握る



「だから特別どうこう言うつもりは無い」



ルーファウスは、クラウドを見上げた



「…ごめん」



私があそこで行かなかったら
私と約束をしていない中であの状況になっていたら

彼女と一線を超えただろう?


ルーファウスは口には出さずに、じっとクラウドを見上げて微笑んだ




「いいよ、気にしない」


クラウドがルーファウスの髪に触れた瞬間

突然ルーファウスの目に涙が溜まった


素早く立ち上がり、背中を向けるルーファウスの腕を掴む


「ちょ、」

「水が飲みたいな、キミも飲むか?」

「待って、ルーファウス」

「ああ、そうだ、水切らしてて、買って…」



落ち着きの無い動きで、ルーファウスが少し早口になる


後ろからルーファウスを抱きしめると

ルーファウスの動きが止まった



「どうしたクラウド」

「…ごめん、絶対にもう間違ってもしないから」

「男っていうのはな、仕方ないさ。責めてないよ」

「でも」

「クラウド、もういいから」

「ごめん」

「…本気になったんじゃないなら、謝るな」

「…わかった、ルーファウス、もう間違わないから」

「いいよ、そんなに気にするな」

「ルーファウス、キスする気になれない?」

「…水が飲みたい。買ってきてくれたら、キスをするよ」

「すぐ行ってくる」




ルーファウスの頭を撫でて、走ってフェンリルに乗り、水を買う



水が切れているはずが無いのは知っている

それでも、クラウドは水を買いに走った





オレ どうしてあんなことしたんだろう

あの女には何も感じなかったのに



後悔ばかりが胸を占める




帰った時にはもういつものルーファウスで、俺はもうその話に触れるのをやめた



ルーファウスは
嫉妬したわけではなく傷ついたんだ



クラウドの中でもやもやといつまでもそれは尾を引いていた









浮気っぽいものを書いてみたかっただけ

2009・7