何気ない日常 |
「お店に花が欲しいの。お願いできるかな?」 ティファの言葉にクラウドが「わかった」と答えると電話を切った 「なあルーファウス、店に飾るのはどんな花がいいと思う?」 ルーファウスは表現の難しい顔をする 無表情に近い顔 「…花は…わからない」 「なにがいいかな、ティファが店に花が欲しいって…」 「とりあえず見てきたらどうだ?花屋の方が詳しいと思うぞ」 「そうだな。行くぞ」 ルーファウスは表現の難しい顔のまま 首を横に振った 「なんで、行かないの?」 「花には興味がない」 「何で?」 「…棺を思い出す。葬儀」 「アンタどういうひねくれ方してんだよ」 いいから行くぞ、と手を引くクラウドに、ルーファウスはもう一度首を振る 「仕事が残ってるから、片付けておくよ」 3時間程で帰ってきたクラウドがルーファウスに巨大な何かを手渡す それは自分の身長ほどもあって、ルーファウスは目を細めた 「なんだこれ」 「アンタって木、好きじゃないか?」 「虫がいなければな」 渡されたものを受け取り、それを覆っていた紙を丁寧に取る 「それバニヤンって木だって。育て方の紙ついてるだろ?枯らすなよ」 太い幹に綺麗な青い葉がついた観葉植物 「多幸の木なんだって」 ルーファウスは笑ってその葉に優しく触れた 「大事にするよ」 「花とか木っていい歌や音楽を聞かせたら綺麗に育つらしいぞ」 「へえ」 バイクでこの木を持ってくるクラウドを想像して ルーファウスが突然笑い出す クラウドは驚いてルーファウスの顔を見た 「おい?どうした?」 「いや、これをもってくるの、苦労しただろうと思って」 「…ああ、ちょっとな」 「ふふふ」 機嫌よさ気に、ルーファウスがクラウドにキスをした 「ありがとう、クラウド」 木の取扱説明書に目を通すルーファウスの後ろに回り クラウドが抱き締める ルーファウスはそれを気にせずに紙を読んでいる 「育て方簡単らしいぞ。強い木なんだって」 「助かる」 「なあルーファウス」 クラウドが説明書を取り上げてデスクに放り、ルーファウスの耳に口付ける 「…まだ夕方なんだが」 「関係あんの?」 ルーファウスは苦笑しながらクラウドの手に触れた 「起きたか?」 「うう…」 柔らかな風が入ってくる ルーファウスといる時によく感じる風の柔らかさに安心をして クラウドは薄く目を開けた 「何時?」 「もう朝」 「は?」 慌てて時計を確認すると本当に朝で、クラウドは慌てて起き上がった 「俺どんだけ寝てた?」 「疲れていたんだろう?」 「仕事…」 「昨日の分は終わってたし、今日の分はまだだから、起こさなかった」 食事できてるぞ、と笑うルーファウスに、クラウドは笑った 「いい嫁になれるな」 「なれないし、ならない。 朝食なんて適当だし」 「あんた俺の奥さん?」 「違うって」 「家でも建てるか。マイホーム」 「ほら起きろ」 笑いながらルーファウスはクラウドの抱き締めていた毛布を取り上げる クラウドに捕まる前にルーファウスはベッドを離れた 「木って朝に水をあげるのが一番いいらしい。夜に水をあげたら枯れやすいと聞いた」 そう言いながら木に水をやるルーファウスを眺めながら 用意された朝食に手をつける 「そうなんだ?不思議だな」 「行って来る。今日アンタでかける?」 「仕事ではでかけない。買い物にでも行くよ」 「俺帰ってきてからじゃ遅いの?」 「遅くないけど」 「じゃあ、帰ったら買い物行こう。ってか何買うんだよ」 「じょうろ?」 ルーファウスは木に水をあげる仕草を見せる 「買ってきてやるよ」 クラウドは笑いながらルーファウスの頭を軽く撫でた 「じゃあ、頼む。いってらっしゃい」 ルーファウスは笑いながら手を振った 昼過ぎにクラウドがルーファウスの家に戻ると ルーファウスは扉まで出迎えた 「配達の途中か?」 「ああ、これ」 白いじょうろを手渡され、ルーファウスが笑った 「飯買って来たからアンタもちゃんと食えよ」 「ああ」 食事をしながらルーファウスがクラウドを眺める 「何時に帰る?」 「今日は近場ばかりだから、うーん。夕方には帰る」 「そうか」 「早く帰ってきて欲しい?」 「何を言っているんだか」 「オレいない時間ってアンタ何してんの?仕事以外は」 「仕事だ。仕事ばっかりしてる。 なあ、昨日、店には何を買ったんだ?花?木?」 「花。なんかいろんな花入れてもらって…なんで?」 「いや、なんとなくな。意味は無いんだが」 「ティファは花って言ってたからな。 俺花育てれないけどティファなら大事にするだろうな」 「私も花は…すぐ枯らすな」 「枯れない花とか売ってるだろ。あれは?」 「生きてないから生花じゃないよな」 「まあ、確かに」 クラウドはじっとルーファウスの表情を見て思い出す 「なあ、なんで花=棺とか、葬儀なの? あんたなら普通に花もらってんだろ」 ルーファウスは不思議そうな顔でクラウドを見た 「…だって棺に入れるだろう、花。葬儀に行くことが多かったからな」 「パーティーとかのが多いんじゃないか?」 「実際花に触れるのは葬式の方だ。 パーティーなんかでもらっても実際に受け取るのは私じゃない。 あれは部下が受け取るからな」 「ああ、そっか…ってそういう問題かなあ」 「わたしにはそういう問題だ」 「はー、そっか…じゃあ花は綺麗だと思うか?」 「んん??」 「花って、綺麗だと思う?」 「まあ、それなりに」 「アンタ花束とか似合いそうなのにな。見た目がキザっぽいから」 「褒めてないだろう?」 ルーファウスが柔らかく笑った クラウドもつられるように笑う 「でも、木は好きだ」 「なんで」 「理由が必要か?」 クラウドは少し考え込みながら、綺麗になった食器をテーブルの端に寄せる ルーファウスが立ち上がり、自分の食器とまとめてそれを台所に運ぶ 「確かに、好きになる事には理由が無い場合もたくさんあるよな」 食器を軽く濯いで食器洗浄機に食器を入れる クラウドは呆っとルーファウスのその一連の動作を見ていた 「どうした?」 機嫌がよさそうなルーファウスがクラウドを見ている 「気付いてたら好きになってるって、よくあることだよな」 「ははは」 「え?笑うところ?」 「キミは花は好きか?」 「ああ、そうだな」 「それは、いつから?」 「…思い出す人がいて…」 「古代種…エアリスだろう?」 「ああ」 「理由があるじゃないか」 「あー、でもアンタのことは?」 「ん?」 「アンタのことは…うん。理由も原因もないのにこうなってた」 「ははは」 「笑う所かよ」 「ちょっとな」 「早くこっち来いよ。時間が無い」 「仕事?」 「ああ、もう行かなきゃ」 「早く行って来い」 そう言いながらルーファウスは手を拭きながら歩いてきた 「冷たい言葉だな」 クラウドがちょっと不機嫌そうな顔をする ルーファウスは笑って答えた 「だから、早く行って早く帰って来い」 クラウドは笑顔を見せて、ルーファウスにキスをする 「ああ、早く帰る。行って来る」 「行ってらっしゃい」 |
バニヤンという木には花言葉が無いそうです 花が見えないところに咲くからだとか聞いた気がしますが うそだったらごめんなさい 私こういうの詳しくないです この木の日本名は「ガジュマル」です やたら新婚っぽくなってしまってすみません 2009・6 |