暖かな雨











夜に突然、ルーファウスが誘拐されたとタークスから連絡が入り
捜索を頼まれたクラウドは、スラムの一角でその姿を発見した


銃声が聞こえた方角に向かい、すぐに発見したのだ


すでに白いスーツは赤く染まっている

クラウドは見つけてすぐに、20以上居た男たちを一掃した






「よくここがわかったな」


そう言うとルーファウスは咳き込み、髪をかき上げる




「偶然だ。…金目当てか?」

「いや、殺そうとしていた」



クラウドは電話でルーファウスを見つけたことを報告する



「怪我は?」

「たいしたことない」




足元に血がたまっている

右の大腿部がひどく赤い



「撃たれたのか」

「刺された」



脱げとも言えず、クラウドはそこに転がっていた男のネクタイを取り
ズホンの上から止血をした



「とりあえず帰るか。車椅子は」

「まさか、ない」



そう言いながらルーファウスは立ち上がる

足が震える


歩こうとした瞬間、クラウドはルーファウスを抱え上げる



「やめろ、歩ける」

「やめておけ」



ルーファウスをフェンリルに乗せ、自分もルーファウスの前にまたがると
クラウドの携帯が鳴る




「1日ルーファウス様を頼む」

「は?冗談じゃない」

「頼んだぞ。しっかり守れ」



クラウドが一方的に切られた電話を睨む



「ツォンか」

「アンタを1日預けると」

「それは困るな。家の鍵がないんだが」

「うちには入れないぞ」

「入らないよ。近くのホテルまで送ってくれ。そうしたら帰っていい」












車椅子を借りて部屋まで運ぶと

ルーファウスは血で汚れた上着を脱ぐ



「血を流してくる。きみはもういいよ」








ルーファウスがシャワーを終えて上がると、クラウドはまだそこにいた



「まだ用が?」

「タークスともう一回連絡取れたら帰る」

「そうか?」

「傷は?」

「見るか?」




バスローブを捲り、右の太腿をさらす

細く白い足に、クラウドは目を細めた



「薬、ほら、塗れ」



クラウドが手渡す薬を受け取らずに ルーファウスはクラウドを見上げる



「塗ってくれ」

「ば、自分でやれよ」

「いつも触ってるじゃないか」



クラウドは頭を掻いてからため息を吐いてルーファウスの前にしゃがみこんだ


白い肌に生々しく浮き上がる赤い傷に 優しく薬を塗り
部屋にあった救急箱から包帯を取り出して巻く


ルーファウスは小さく笑った



「随分優しいな」

「こじ開けられたいか、傷口」

「悪趣味な」



クラウドがそっと傷口に触れ、撫でると

ルーファウスは僅かに眉をひそめた



「痛いか」

「ふふ」



ルーファウスの顔を見ながら
クラウドは手を内側に滑らせる



「…クラウド」



ルーファウスの手がクラウドの肩を掴んだ
クラウドは歪むルーファウスの唇を指でなぞった



「なに、痛いか?」

「ん…ははっ」



手を滑らせ続けると、ルーファウスはクラウドの頬を撫でた



「もっとしたい?」

「私は怪我人なんだが」

「関係ないね」

「…したい?」



少し赤くなったクラウドを見て
ルーファウスは笑った



「クラウド、ベッドまで運んでくれないか?」










































うつ伏せななり、横で眠るルーファウスにクラウドは薄い毛布をかける

ルーファウスは薄い肩を縮めた



「寒いのか?」



肩に触れると、冷たい


暖めようと、クラウドが毛布をもう一枚重ねた時
ルーファウスがクラウドの手を掴んだ


クラウドが驚いて手を引っ込めようとした瞬間
ルーファウスは目を開き切らないまま、クラウドを見上げた



「なんだよ」

「夢を見て…」

「どんな?」

「わからない」



またルーファウスは目を閉じて、毛布に擦り寄るように丸まった


「寒いな、服を…」

「んな寒いか?」

「ん」



クラウドはすぐ近くにあった自分の上着を渡すと、ルーファウスは手を伸ばす



「自分で着ろ」

「寒い」



そのままぱたりとルーファウスの手から力が抜ける


クラウドは仕方なく自分の上着を着せた


ベッドから起き上がり服を着る


窓を見ると雨が降っていた



「止みそうにないな…」



ルーファウスの服は大量の血で汚れている













ルーファウスが寝てる間にクラウドは近くに服を買いに来た

とてもルーファウスが着そうなものは見当たらず、クラウドは首をひねる


サイズは自分と同じ物ではでかいだろうか


身長はたいして変わらないが、ルーファウスは自分より細く、薄い

しかも普段は必要以上に重ね着をしている

自分も細身ではあるが、やはり肉弾戦で充分戦える程の力や筋肉はある

悩んだ末に、できるだけ柔らかい生地の自分と同じサイズの
フードが付いた白いトレーナーと白のスラックスを買った


それからパンを買って戻った








パンを食べながら部屋に戻ると、ルーファウスが裸にクラウドのジャケットを着たまま
ベッドの上で紅茶を飲んでいた



「すごい格好してるぞアンタ…」

「キミが着せてくれたんじゃないか」

「ほら、服」



紙袋を受け取るルーファウスは不思議そうな顔でクラウドを見る



「着替えろよ。あとパン買ってきたけど食べるか?」

「いや、いい。しかし随分と気が利くじゃないか」



生意気な言葉を嬉しそうに言うルーファウスから クラウドが紅茶を取り上げ、パンをかじる
ルーファウスは紙袋から服を出してズホンを履いた



「でかくないか?」



背中を向けたルーファウスのズホンに手を入れると
ルーファウスは肩をびくりと揺らして振り返った



「やっぱ少しでかいか」

「いや、あのな…」

「足痛くないか?」

「それより手を抜け」



クラウドは笑いながら手を抜いた



「薬塗りなおせよ」

「平気だ」

「別にいいけど。次、上な」



クラウドが上の服をルーファウスにかぶせると
ルーファウスは笑いながら手を伸ばして袖を通した



「なにしてるんだ君は」

「ほんとにな」

「随分とゆとりのある服だ」

「そういう服なんだよ。大体いつもかっちり重ね着しすぎなんだよアンタ」



ルーファウスがクラウドの上着を持ち主に差し出すと

クラウドは目を逸らして紅茶を飲んだ



「別に寒くないからいい」



服を着たからもういいよ

そう言おうとしてルーファウスはクラウドの目を見てやめた



そして上着を肩に羽織った



「よかった、寒かったんだ」



そのルーファウスの姿を見て、クラウドは薄く笑って腕を上へ伸ばした



「クラウド、タークスから連絡は?」

「レノからきた。俺と一緒なら安心だとさ」

「そうか」



車椅子に乗ろうと歩きだしたルーファウスの顔がかすかに歪む

クラウドはため息を吐いてルーファウスをベッドに座らせた



「脱げ。包帯を取り替える」

「…いい、寝る」



そのままベッドに転がるルーファウスを眺め、クラウドはため息を吐く



「調子悪いのか…」

「タークスに迎えにくるように連絡を」

「仕事終わったら来るって」



ルーファウスのズホンのボタンを外し、ファスナーを下ろして
ゆっくりとズホンを下げると、ルーファウスはくすぐったそうに笑った



「アンタ自分で脱げよ!」

「勝手に脱がすなよ」





ズボンを脱がしてから傷口に薬を塗りなおし、包帯を取り替える



「…ルーファウス、ちょっとそのまま立ってみろ」

「ん?」



言われるままに立つルーファウスを見て、クラウドは口を歪ませた



「なんなんだ?」

「それもすごい格好だな」

「は?」



少し長めの丈のトレーナーは、ズホンを履いていないと
下着が見えそうで見えない丈だ


ルーファウスはズホンを掴んでクラウドを軽く叩いた



「なに考えてるんだ」

「いて」



その時クラウドの携帯が鳴り
クラウドはルーファウスに携帯を渡した



「タークスから」



ルーファウスはそのままベッドに腰を下ろして通話ボタンを押した



「ルーファウス様、ご無事ですか」

「問題ない。迎えは」

「すみません、遅れそうです」



クラウドはルーファウスの足の間に片足を入れると、膝から上へと手を滑らせた



「何時頃だ」



ルーファウスはクラウドの手を軽く叩いて避けた



「7時までには必ず私が」

「他の連中は?」



クラウドはそのままもう片方の足も、ルーファウスの足の間に入れ
ルーファウスをベッドに寝かせるように覆い被さった

ルーファウスはクラウドの額を軽く叩く



「イリーナはルードと任務中です。帰りは明日に。レノはまだ遅くなりそうです」

「わかった。車椅子をもってきてくれ」



クラウドはルーファウスの首筋に舌を這わせながらルーファウスの内股を撫でる

ルーファウスはクラウドの腕を強く握って首を軽く横に振った



「ルーファウス様、クラウドといて下さいね」

「…ああ」



クラウドの指がルーファウスの腰を這うと、ルーファウスの身体がびくりと反応する



「帰らせないで下さいね」

「わかった。では」

「はい」



通話を切ったと同時にルーファウスが携帯でクラウドを殴る



「何をしてるんだ君は!」

「なんだもう切ったのかよ」



携帯を放り投げて、クラウドはルーファウスの両手を掴んでベッドに押し付ける



「で、タークスはなんだって?」

「7時までには必ず迎えに来るそうだ」

「時間持て余すな」

「どうかな?」






















「さすがに腹減った」

「ルームサービスを頼めばいいじゃないか。なにがいい?」

「アンタは?」

「いや、減ってない」

「どういう胃袋してんだよ。もう昼過ぎだぞ」

「君はよく食べるよな」

「普通だと思うけど」














目の前に来たルームサービスの豪華さにクラウドは額を押さえた


高いだろうな

そんなクラウドを見てルーファウスが軽く笑った



「安心しろ。護衛中の食事も神羅持ちだ」

「アンタなあ…ほら、サラダくらいは食え」



サラダの器をルーファウスに渡すと
ルーファウスはそこからミニトマトを取って器を返した



「ちゃんと野菜も食べるんだぞ」


そう笑いながらミニトマトを食べるルーファウスに
クラウドはなぜか少し心臓が早くなる












「雨止まないな」



窓を見ながらルーファウスが呟く

雨じゃなければ、フェンリルで送るのに
クラウドはそんな自分の考えに笑った



「どうした?」



突然笑ったクラウドに、ルーファウスは首を傾げる



「別に」



ルーファウスはまた窓に視線を移した



「雨じゃなければ、君のフェンリルに乗れたのに」



小さな声で呟くルーファウスを見て、クラウドは声をあげて笑った

ルーファウスは眉を寄せてクラウドを見た



「アンタバイク好きなんだっけ」

「君の背中につかまるのが好きなんだ」



顔を赤くして絶句したクラウドを見て、ルーファウスは声をあげて笑った



「冗談だ」

「気持ち悪いこと言うなよ、もう乗せないぞ!」

「ははっ」

















7時前に、ツォンが迎えに来た




「お迎えに上がりましたルーファウス様…その服はどうしました?」

「着ていたものが汚れてね、クラウドが買ってきてくれたんだ」

「そうでしたか。なかなかお似合いですよ。…クラウドご苦労だった」



クラウドは二人を無言で見つめる

ツォンの持ってきた車椅子に座り、ルーファウスがクラウドを見上げる



「君に車をあげようか。雨でも私を送り迎えできる」

「いらん!じゃあ帰るからな」















フェンリルにまたがり、エンジンをかける


「屋根でもつけるか…」



それを想像してクラウドは顔をしかめる



「ダサい…ダメだな…」






クラウドはそんなことばかり考える自分に笑いながら走りだした











クラルーっていいよね・・・

2009・6